第37話取引
洞窟だというのにここの階層は明るく、植物まで自生していた
フルムッシュ・ウルフを倒しにいろいろとこの階層をうろちょろしていたら大きな空間にでる。
この階層にいると今までいた階層との違いに少し戸惑ってしまう、今までは薄暗くてカビ臭かっただがこの階層は自然に溢れ、一定の明るさを保ち、時折涼やかな風が頬を撫でる。
「ここは良いところだな」
「あぁ~そうだな」
大きな空間の遥か上空には自分から光る大きな結晶があった。
遠くてあまり大きさがあまり計りずらいがしたから見ても大きく見えるということは近くに行くとかなりデカイだろう。
まぁ~見に行けないけどな。
だが不思議と落ち着ける雰囲気に横になりたい欲求が出てくる。だがどこか違和感を感じる、最初に違和感に気付いたのはフローラだった。
「なんか、静かじゃない?」
「あぁ~そういえば………っ!」
聴覚鋭敏化の能力を使っても聞き取れる音は少なくかなり遠くに群れの魔物達が戦っている音はするがそれ以外はオレとフローラの心音しか聞こえてこなかった。
魔物達のあげる音の数はかなり多くそれは群れと形容するのもおかしい気がした。
「何か分かったか?」
「あぁ~まぁーな。かなり遠いが魔物達が群れ同士で戦っている音がする。行くか?」
「行く!!」
一応フローラに聞いてみたが即決で行くと言われてしまった、どんどんレベルが上がっていくのが嬉しいのだろう、見るからにテンションが上がっている。
「よし! 行くか!! でも大量にいるから後ろで見ててくれないか?危ないし」
「なっ! 私だって強くなってるから大丈夫だって、な! 頼むよ。強くなりたいんだよ」
フローラは両手を合わせ何度もお願いしてくる、う~ん…正直フローラがこれ以上に強くなりたい理由が分からないんだよな……今のままでも十分に強いし、大抵の魔物ならば一人で倒せてしまうくらいには強くなっている。
「う~ん……どうしてそんなに強くなりたい?」
「そ、それは……いや、ほら! いろいろと危ないだろ。強くなっておいて損はないだろ」
なぜかフローラは頭を抱えて悶絶しはじめた、いや、強くなりたいってのは分かるがなぜ言い終わった後に頭を抱えてるんだ? まぁ~いいや。
「よし! じやー行くか。オレは走って行くから着いてきてくれ」
「分かった…ってちょっと待って」
オレはフローラの返答を聞き終わる前には既に走り始めていた、オレは音のする方向へと一心不乱に走った。
ステイタスが上がったこともあり思いの外、速く着くことができた、だが上がったステイタスを使って走ってもついたのは一時間もの時間を要した。
一時間も走り続けだったのにも関わらず息も上がらず走ることができるのはステイタスが上がったからかまたは単純に基礎体力がついたためだろうか? 分からない。
「はぁはぁはぁ……ちょ………速いって」
俺より低いとはいえ一般的にいえば高いステイタスのフローラがこんなにも疲れているということはただ単純にオレの基礎体力がついたようだな。
「静かにしてくれ、もうすぐ近くにいる。ゆっくり行くから休め」
「あぁ…わかった」
オレは宣言通りにゆっくりと移動し大量の魔物達へと近付いていく、音をたてることなく動き、気づかれないようにする。
「ほら! あそこにいっぱいいるぞ」
オレは木の影に隠れながら魔物達のいる方向へと指差す、指差す方向にはざっと数えて数百の魔物が2陣営が乱戦していた、片方はオーガ、もう片方はトロールだった。
「おぉ~いっぱい、いるな。こんなにいるけど私達二人で倒せるか?」
「………大丈夫だろう」
「待て待て!!………はなんだよ!?」
正直あれだけいっぱい、いると不安だ。複数と戦えるには戦えるが数が多すぎる。
「ちょっと待っててくれ。両方の力を見てみるから」
オレは遠くで戦っているオーガとトロールに向けて魔眼とステイタス、能力閲覧の能力を使って2種族を見る。
《種族名:オーガ
魔物ランク A~S
注意点、太い腕から放たれる拳は並大抵の防御力では砕かれてしまう。耐性を持っている相手にすら打撃を通すほどの力を持っている
言葉を理解する知能を持ち合わせている、個体によっては魔将になれるほどの才能がある種族
また群れとして団結力が強く、群れに仇なす愚か者には徹底的に報復をする
また今はトロールと縄張り争い中である
獲得可能能力 豪腕 剛腕 自動HP回復 自動MP回復 打撃耐性無効 戦狂 団結 身体能力倍加 》
ステイタス平均値 2200~3000
《種族名:トロール
魔物ランク A~S
注意点、非常に強い力を有している、また高い再生能力もあり生半可な攻撃では一瞬で再生されてしまう程高い再生能力がある
知性が少ない種族でもある
また今はオーガと縄張り争い中
獲得可能能力 超再生 自然治癒 防御強化 奮戦 共食い 毒耐性 魔法耐性 打撃耐性》
ステイタス平均値 1500~2500
オーガからは自動HP回復、トロールからは超再生をコピーした
今回は一切の迷いなく決められた、他にも魅力的に思える能力があったが圧倒的に使えそうなものが自動HP回復と超再生だった
「う~ん………正直微妙だわ。オーガはステイタス的に圧倒してるけどトロールは能力的に圧倒してる。もしかしたらトロールが勝つ可能性が高いかも」
「なんで?」
「よく見てみろ。オーガはだんだんと疲弊していってるけどトロールは高い再生能力ですぐに再生している」
オレは見たままを報告する、オーガが圧倒的ステイタスでトロールを殲滅していっているが次々と再生するトロールに徐々に押され始めていた。
「本当だ、んでいつ戦うんだ?」
「両方と戦うのはキツいしなぁー………どうすっかなぁー」
「じゃー片方と戦えばいいじゃん」
フローラは真顔のまま、当たり前のように言うがそんな簡単なことじゃない。
もし仮に片方が勝つまで待つとしてそれがいつ終わるかも分からない、途中で気づかれて一斉攻撃をくらったら間違えなくしんでしまう。
いや待てよ………。片方の種族に味方すればいいんじゃないか。
「だな、そうするか。お前はどっちと戦いたい?」
「うーん、私はどっちでもいいや」
どっちでもいいって………おい! 答えになってねぇーよ!!
はぁ~言い方を変えるか
「言い方を変えるぞ。どっちと戦いたくない?」
「オーガだな。だって仲間思いじゃん。ほら! あそこ仲間を庇ってる」
フローラが指差す方向には仲間を庇いトロールの攻撃を受けているオーガがいた、庇って貰っているオーガの腹部は盛り上がっており中には赤子がいると推測できた。
オレも出来ればオーガとは戦いたくない種族だ、ステイタス的にも能力的にもそして種族的に。
「じゃーそうするか。オレはちょっと行ってオーガのボスらしき奴と話してくる」
「私も行く! 1人じゃ危ないって」
オレはいろいろと考えたが1人で行くのは危ないのは確かだがここでフローラが1人でいて見付かって襲われたなんていったら目も当てられない。
「そうだな。行くか」
オレとフローラはオーガとトロールが戦っている場所を回り込む形で進んでいく。
戦場は思いの外広く回り込むのに時間がかかってしまった、数分するとオーガ達の群れの後ろに回り込むのに成功した。
「よし! 行くか。オレが《今だ! 行け》って言ったら戦闘開始だからな。絶対に言うまで動くなよ」
「わ、わかった」
オレは少し怒り気味になってしまったフローラを無視してオーガ達に話しかける。
「あの~良かったら手助けしましょうか?」
「誰だ貴様! トロール族の密偵か!!」
気配もなく後ろから話しかけられたことにより驚いてしまったオーガのボスと回りにいたオーガ達、他のオーガより一回り大きく、胸には大きな傷痕が残っていた、思いの外警戒させてしまった。
「いやいや、ただ単に大変そうだなぁって」
「なんだ! 貴様!! 怪しいやつ、叩き斬ってやる」
「やめんか! で、なんだお前は? 何が目的だ」
目的? どう説明したらいいだろう。
最初は皆殺しにしようとしてましたけど数が多いいので片方の種族を殺そうとしましたって説明したらいいのか? いやいやそんなこと言ったら速効襲われる! うーん、困ったな。
オレは助けを求めるようにフローラの方を見るとフローラはやれやれといったように首を振っていた。
「任せなリクト
どうも誇り高きオーガの長よ
私達はトロールによってさんざん苦しめられた者です。
この度、オーガとトロールが戦っているのを見て馳せ参じた次第です。
私達はトロールに復讐するため力をつけて参りました足手まといにはならないと誓います
どうか一緒に戦うのを許してくれませんか?」
フローラはさながら舞台女優のようにスラスラと言っていく。
おぉ~思ってもいないところをペラペラと言うなんてすげぇーな。やっぱ種族が幻魔だからか? それは関係ないか!
「おぉ~そうであったか! そこの男はよく分からんがお主の話しならば納得できるわい。うん、許可しよう」
「ありがとうございます」
オレが話しをつけるはずがすっかりフローラに任せっきりになってしまった。情けない
でもなれていないオレにしてはよく頑張ったほうだ。
「お主達はどれくらい強い?」
「私の種族は幻魔です。レベルは72です。名をフローラと申します。主に魔法を使って戦います」
「オレの種族は半吸血鬼ハーフヴァンパイアレベルは87、名前はリクトです。魔法も近接戦闘もできます」
最初はフローラのレベルを聞いてどよめくオーガ達であったがオレの種族とレベルを聞いてさらに驚きの声は大きくなってしまった。
まぁ~珍しい種族だしな、ハーフヴァンパイアは。
「そこまで強いのならば心強いの。頼りにしておるぞ」
オーガの長らしき男は盛大に笑うと俺たちを最前線へと送り出そうとした。
おいおい! いきなりかよ!! まぁー最初からそのつもりだったけど。
そうして俺たちは最前線へと向かうのであった。
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