第29話狂乱の大群

 様々な魔族、魔物が武器を持ち狂乱し走ってくる、魔物達の目は血走り口からは唾液を撒き散らし俺達を殺すべく足を速める。


「おいおい! 統率された動きってのはどこへいった? ガムロめ話が違うじゃないか!」


「あれだけ狂っておるのだ、揺さぶりや駆け引き等はできないだろうな」


 狂っていない魔物ならば効果的な揺さぶりや駆け引きは一切出来ないことになる、オレにはそんな高等テクできないが。

 魔物達はさらに近付き、冒険者は緊迫した空気が包み込む。


「アイリスはミラが守るとして。リーズは自由に戦ってくれ」


「分かりました。リクト様は?」


 リーズは自分の剣の刃を手入れし、刃こぼれしてないかしっかりと見ながら問いかけてくる。


「あぁーオレはお前たちから離れて自分の力を試してみる。

 オレは進化してどれだけ動けるようになったか、知りたいんだ。」


「その気持ちは分かりますが油断はしないで下さいね。そこまで強い魔物はいないようですが油断は禁物ですよ

 では私たちはあっちで戦いますね。」


「分かった。オレはこっちの奴らを相手にする」


 リーズ、アイリス、ミラは俺から離れ別の場所で戦うべく移動を始める。

 アイリスは最後までオレのことを心配そうに見ていたが頭を撫でてやって笑顔で送り出した。


「よっしゃ~やるぞぉー」


 オレは一人で徐々に近付きつつある魔物達の群れに一人突っ込んでいった。

 その姿はさながら勇敢に写ったか、はたまた自殺願望の強い突進に見えたのかは人それぞれだろう、だが圧倒的に多かったのは後者でだろう。

 オレの力を知らない者は魔物を群れに突進する奇人にしか見えないだろう、案の定走っている最中すれ違う冒険者らしい男に止められた。


「おい! お前、死ぬ気か?」


 すれ違った冒険者の男は心配してくれたのか追いかけてきてわざわざオレに忠告をしに来てくれたようだ。

 いいやつだな。


「あぁー大丈夫だ。なんならオレが始末し損ねた奴の処理をしてくれると助かる」


「ん? 何を…あっ! ちょっと待てよ」


 追いかけてきてくれたおっさんを置いていきオレはさらにスピードを上げて突っ込んでいく。

 一番前にいた魔物は昔、殺されかけたムーンライトグリズリーが血走った目をオレに向けてくる。

 その目はさながら子供を殺された親が殺した犯人に向けるような殺意ある目をしている。

 ん、なぜだ? オレはこいつらには恨まれるようなことをした覚えがないぞ………おかしいな。


「おい! 待てよ!!」


 もちろん待つことなくオレに突進してくるムーンライトグリズリー、オレは小難しいことを考えるのをやめて目の前の敵に集中する。

 昔は対応するのがやっとだった速度だが今の俺ならば避けることはもちろん受け止めることすら簡単に出来ると思えた、だがいちいち待ってやる時間はない。


「アースランス」


 オレはムーンライトグリズリーに向けて魔法を放つ、足元から土が浮き、より集まり硬化し、槍の形状へと変わっていくと銃弾のように放つ。

 アースランスは一片の狂いもなくムーンライトグリズリーの額を突き抜け、頭が弾け飛ぶ。

 通り抜けたアースランスは土へと帰らずその場に残っていた、オレは残ったアースランスをまだ動くことを確かめると新たに数本のアースランスを作り出す。

 先ほどは力任せに放ったせいかアースランスの先が僅かに欠けてしまった。

 次はそうならないように先を重点的に固くしておいた。


 そうだ! まだ使ったことのない魔法のアースアローを使ってみよう、これだけの数がいるんだ、複数に当たるように何本も作っておくか。


「アースランス、アースアロー、アースアロー……」


 アースランスは元々あったやつを合わせて5本作ってオレの周りに浮かせておいた、問題なのはアースアローが意外にも1回の魔法で数十本もの数が出現したことだ。

 1本かと思っていたがいきなり数十本も出現したせいかかなりの魔力を持っていかれてしまう。

 だが見るからに大量のアースアローが出来上がった、かなり強力だろう。


「おぉ~すっげぇ~。やっぱり異世界来たら魔法だよなぁ~。しかもオレが…くぅ~いいね」


 オレの頭上には5本のアースランスと数えることすら憂鬱になりそうな数のアースアローがある。

 狂いながら走ってくる魔物達に降り注ぐ形でアースアローを操作する、遠くからは数々の断末魔が響き渡る。


「おぉ~すっげぇーオレってもしかしたら町の一つ位なら俺一人で壊滅できるんじゃね」


「そうだな、冒険者ギルドがない町ならば可能だろう」


 いつの間にか後ろにミラがいたらしい、オレはいきなり独り言に反応され驚く、だが少しだけ恥ずかしいとも思った浮かれてるとはいえ恥ずかしいことを聞かれてしまった。

 それに出来るのかよ! いやいや、やらないけどな!

 ほんとに、やらないから! だって………悪者とかオレに合わねぇーし。


「なんだ、いつからそこにいた!」


「ん? 私達はお前が[おぉ~すっげぇー。やっぱり異世界来たら魔法だよなぁ~。しかもオレが……くぅ~いいね]あたりからだぞ」


 結構、序盤じゃねぇーか! 話しかけろよ!!

 つかオレの目の前にいる奴は大体は終わったけどお前らの方はどうなんだよ!!


「話しかけろよ!」


「あまりに楽しそうだったので………。」


 ミラの変わりにアイリスが答えるがどこかよそよそしかった、まぁ~オレがあれだけ大量虐殺するところを見たらしょうがないか。

 ………嫌いにならないでね。


「お前らの方は終わったのか?」


「うむ。おわったぞ、私はたいして、動けなかったがリーズの殲滅魔法で一掃した」


 殲滅魔法………。

 なにそれカッコいいな

 超使えるようになりてぇー

 だけどこの調子なら直ぐに使えることになりそうだ。


「かっけぇー! オレも使えるようになりたい!!」


「では私が教えましょうか?」


 リーズは不敵な笑みをオレに向ける、オレは背筋が凍る勢いで身震いしてしまう。

 リーズからは凄く辛く死ぬかと思うような訓練をやらされた、出来ることならば一生経験したくないような経験だ。


「いや、自力で覚えないと成長しないだろう!? なっ!!」


「そ、そうですね。頑張ってください」


 リーズはオレの力説に圧倒されたのか疑問が残った顔をしながらも頑張ってくれと言ってくれた、 良かったぁ~これでまた訓練をする流れになったら恐怖でおかしくなってしまうかもしれない。


「あの、リクトさん。私3体の魔物を倒したんですよ! レベルが上がってないか確かめてください」


 あ、そういえば全然アイリスのステイタスを見ていないなどれだけレベルが上がったんだろう。

 前に見たのはいつだったかな………。ダンジョンか………けっこー前だな、まぁ~いいや。

 オレはアイリスに向けて魔眼、ステイタス、能力閲覧の能力を使う。



 名 アイリス

 称号 リクトの奴隷

 レベル 26→42


 HP 368→683

 MP 189→426


 ATK 305(+60)→591(+60 )

 DEF 162→482

 INT  173→398

 RES 189→437

 HIT  179→458

 SPD 294→671



 《物体名:能力確認カード、解読結果

 個体名:アイリス

 種族:獣人(狐)

 種族能力:超聴覚 B→A 超嗅覚 B→A 脚力強化 C→B


 個体能力:気配察知(魔物、魔族、人間などの気配を察知する

 また、特定の人物の気配を探し出すとこも可能)》


 はい? いきなりレベルが上がりすぎだろ! それにスピードがかなり跳ね上がってるだろ! オレもチートだけどアイリスもチートなんじゃ?


 オレはアイリスに見た物を口頭で教える。

「えっ! そんなにレベルが上がったんですか?」


「ほ~。凄いの、お主はなかなか才能があるようだ」


 ミラも関心したような声を上げている、ということはなかなかないレアなケースなのだろう。

 才能を認められて嬉しいのかアイリスは口が緩んでいた。

 まぁ~誉められたら嬉しいよな、誰だって………。


「お主もかなり速いがな」


「まぁ~オレの場合は能力や魔眼のおかげの部分な所が大きいかな」


 オレはかなり最初から強力な力があったからレベルが上がるのが速いがアイリスは戦闘向きの能力がないのにも関わらずレベルの上がるスピードが尋常ではないだろう、まったく羨ましいな。

 才能があるなんて。


「いえ、その能力もあなたの力です。謙遜することはないですよ。

 それにあと少しすれば私は追い抜かれてしまうでしょうね」


 リーズはしみじみと言っているがリーズに勝てるなんてイメージが全く湧かない。

 いつまでたっても訓練という名の拷問に付き合わせれているオレが脳内にチラつくんだが?


「それはないな。うん! オレがリーズに勝つ? それこそ夢物語だろう」


「そんなこと言っていたらリクト様はいつまでたってもミラ様を守るようにはなれませんよ。せめて私を片手で倒せる位になって貰えませんと」


 いやいや今のところ立場逆じゃん! リーズに片手で相手して貰っても負けるだろうし、頑張らないとな。


「リクトは着実に強くなってるぞ。

 今回の戦闘でどれだけ強くなった?」


 そういえばまだ見てないな。見るか

 オレは魔眼、ステイタス、能力閲覧の能力を使って自分を見る。


 名前 ミヤマ リクト


 称号 魔眼保持者、牛殺し、早熟せし者


 レベル 52→56


 HP  1781→1816

 MP  2143→2219


 ATK 1221→1392

 DEF 1282→1426

 INT 1183→1272

 RES 1219→1389

 HIT 1193→1293

 SPD 1395→1637


 個体名:三山 利久人

 種族:異端の半吸血鬼アウトサイド・ハーフヴァンパイア

 種族能力:恐怖支配 B 殺気凶悪化 B

 身体能力増加 A 憎悪倍加 B


 個体能力:斬撃耐性 C 打撃耐性 B→A

 短刀術 A 切断耐性 B 剣術 E


 解放能力:魔法多重起動、魔力操作


 魔物能力 ドレインタッチ 水流操作 剛力 聴覚鋭敏 糸操作

 糸強化 毒付与 毒生成 糸生成 麻痺毒付与

 自動MP回復 悪魔召還


 マジックアイテム能力 ステイタス閲覧 能力閲覧


 行使可能魔法

 初級 火炎魔法(ファイヤーボール、火種生成など)

 中級 火炎魔法(フレイムボール、フレイムサークル、フレイムランス)

 初級 大地魔法(アースアロー、アースランス、アースソード、アースウォール、アースバインド)

 中級 回復魔法(傷の治療、毒の治療)


 所持魔眼:ハイリーディングアイ

 効果、視認した物質の名称、事柄を読み取る、魔法の本質を見抜き、解読、理解

 また獲得できる情報が増えている。

 例、動きを読み取る、思考を読み取る、ただし読み取れるのは格下のみ


 上位能力:理解者

 理解した物体、魔物の特徴やスキルをコピーすることができる(一つの物体からは一つだけ、魔物のスキルも同様で一つだけ) 


 獲得能力 MP小増加(MPを少し増加させてくれる)

 致命傷の盾(致命傷を無効化してくれる。この能力は発動するのは1日1度だけ)

 火炎創造(火炎魔法の威力が上がる、また火炎魔法を操作精度があがる)》


 獲得した3つの能力は今度試すか、レベルはあれだけ大量に倒したにも関わらず4しか上がってなかった。

 まぁ~それほど強いやつはいなかったから当たり前か。

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