第18話冒険者ギルド
嘘のような騒がしくも危険な日常から解放され宿屋にて休息をとる、朝の日射しが窓の隙間からこぼれ、まぶしくも暖かい朝日によって目が覚める。
そんな心地の良い朝に隣の部屋から三人の声が薄い壁を通り抜け微かに聞こえてくる。
《ミラ様、今後のご予定とかはございませんか?》
《予定? 特にないの、リクトはちょっと強くなったし今は特にないのじゃ》
《それで大丈夫ですか?アイリスさんは何かやりたいこととかありませんか?》
《私はリクトさんと一緒に居られればそれ以外何も必要ありません》
《そ、そうですか。ではリクト様とご相談してから決めるという形で問題ありませんね?》
《はい》
《それで構わん》
と三人の会話が聞こえてきてしまった、盗み聞きしてるみたいで少し罪悪感が出てきた。
でも聞こうとして聞いた訳じゃないから大丈夫と自分に言い訳をする自分が情けないと思う。
三人はそれ以降も会話を続けていた、オレはできるだけ会話の内容を聞かないように気を付けながら今後の予定について考える。
今の状況で必要な物はなんだろうか? 人間として町民に歓迎された今やることがなくなったのかもしれない。
う~ん何をすればいいんだろう? 金か? いつまでもミラやリーズに奢られてばかりでは申し訳ないしな、自力で金を稼ぐか………でもどうやって金を稼ごうかな? 今まで仕事なんてしたことがないからどうやって稼げばいいのか、わからない。
ましてや異世界だし。
オレはベットの上で腕をくみながら一人で黙々と考えた、すると三人が隣の部屋から出てくる扉の音が聞こえた。
オレは常時発動型能力パッシブスキルの聴覚鋭敏化の能力で聞き取ってしまう、何処かへ行くのだろうか? オレはついていこうと立ち上がってドアに近付く。
だが三人が向かっている足音はこちらへ近付いて来ていた。
オレはその場で待ち三人の様子を見てみることにした、すると案の定、三人はオレの部屋のドアの前で立ち止まりドアをノックした。
《コンコンコン》
「起きていますか?リクトさん」
リーズの綺麗な声がドア越しに聞こえる、ハーフエルフだからか声が透き通るように綺麗な声をしている、それともハーフエルフは関係なく単に声が綺麗なだけかもしれない。
そんなことを考えているとリーズはため息と共にドアを開ける。
「起きていたのですか、リクトさん? それなら返事をしてくださいよ」
どうやらリーズはオレがまだ寝ていると思ったのだろう、オレがリーズの声に聞き惚れていたなんて言えない………適当に言い訳をするか。
「あぁーすまん。寝ぼけてた」
「そうですか。今後の予定について相談したいんですけど大丈夫でしょうか?」
リーズは残り二人の道を開けるようにドア近くの壁際に立つ、二人はゆっくりとオレの部屋に入ってくる。
ミラはじっくりと部屋の中を見ている、部屋の内装は変わらないはずぞ? あってもオレが脱いだ服くらいしかない。
なにを見ているのだろう?………まぁ~いいや。
アイリスは可愛らしい鼻をひくひくさせながら匂いを嗅いでいた
そんなに臭いかな? 昨日はしっかりと風呂に入れなかったし臭かったかな? そんな二人の様子を見てリーズはため息をはいていた、そのあとにオレを見てさらにため息をはいた。
「二人ともどうした?」
「な、なんでもないぞ」
ミラは慌てて部屋を見るのを止める、ミラの可愛らしい小さな両手を振る姿はともて200歳を越えているようには見えなかった、それにこう見えてかなり強い奴らしいし、見た目で判断出来ないな。
「け、けっして! 臭いというわけではありませんので」
アイリスはオレに詰め寄り言ってくる、オレはアイリスの必死さに驚き頷くしか出来なかった。
「わっ、わかったから落ち着け」
「お戯れもそこまでにしてくださいね。今後の予定について相談しましょうか」
リーズはアイリスとミラの肩に手を置き二人をオレから遠ざける。
「そ、そうだな! 予定を決めなきゃな。それでミラたちにやりたいこととかないのか?」
「ん? 私は特にやりたいことはないなぁ~」
「私は人間と話してみたいです」
アイリスのやりたいことならオレのやりたいことをやる過程で出来るな、ミラはまぁー予定がないらしい………リーズはどうだろう? オレはリーズに視線を向ける。
「私はこんな経験初めてですのでどうすればいいのか分かりません」
リーズは細い腕をくみながら考え込んでいる、ないならオレのやりたいことについて相談してみるか。
「う~とさ………オレたちって人間から嫌われてた訳じゃん。でもさバルムンクの指輪で環境が変わって人間として生活できるなら人間として生活するため稼ぐ必要があると思うんだよ」
オレが話している途中でミラが話しかけてくる。
「金ならあるだろ。たくさん」
「そうかもしれないがいつまでも使わせる訳にはいかないだろ。それにミラの金ばかり使うと怪しまれるかもしれないだろ。あいつら仕事もしてないのに何であんなに金もっているんだ?
ってな。だからオレたちは仕事を探すべきだと思う」
長々とオレが語ってしまったが理解理解できただろうか? オレでも途中からなに言っているのか分からなくなっていたし。
「お、お前………意外と考えてるな。」
「さすがです。リクトさん! 私では到底考え付かなかったです」
「凄いです! リクトさん」
意外と高評価だな、三人はオレを見る目が尊敬という表情がこもっていた。
「お、おう。でもさ金を稼ぐ方法が分からないんだよ。戦いながら金を稼げる仕事とかないか? リーズ」
オレは一番頼もしく物知りだと思うリーズに聞いてみた。
「そうですね。その条件ですと冒険者とかどうでしょうか」
まてまてまて! 超異世界っぽいのきたー………そうか! 異世界で仕事って言ったら冒険者だよな。
何でオレはそんな簡単なことに気付かなかったんだ。
「それだ、よし! 今から登録しに行くぞ!」
オレは興奮し大きな声を出してしまった、リーズ、ミラ、アイリスはオレの大きな声にびっくりしていた。
「な、なんだ!? 冒険者に行くならしっかり準備しないとだめだぞ」
「ミラ様! 装備を整えましょう」
二人は戦いに行くように装備を着けていく。
「オレたちは冒険者に登録するためにいくんだぞ?」
「あぁーそうだったな。昔の癖で戦いの準備をしてしまった」
「そうでした」
二人がなにやら物騒なことをいい始めたぞ、昔何をしたんだ? ミラの過去が気になって来たぞ。
「各自部屋で準備するか! 準備ができ次第宿屋前に集合!」
オレは二人のおかしな発言を無視し3人を準備をさせる、めちゃくちゃ楽しみだなー よし! 早く着替えて準備を済ませるか。
オレは素早く着替え、鎧やアイテムを装備していく、オレは急いでドアを開け隣の部屋のドアの前にいく。
「早く準備しろよー」
オレはそういい残して階段を降りる、他人から見たらおもちゃを目の前にした子供のようにはしゃいでいるのだろうけど楽しみで仕方なかった。
数分後に3人は宿屋の階段を駆け降りてきて宿屋の前にいるオレのところまでくる。
「遅いぞ!」
「うるさい!乙女には身だしなみを整える時間が必要なのだ!」
身だしなみって必要ないだろ、ミラやリーズ、アイリスは完全無欠の美人揃いなのだから多少髪が崩れていても美しさは損なわれないだろう、だがそれを言うのも恥ずかしい………。
「そ、そうか。じゃー行くか!」
「分かりました。冒険者ギルドの場所は私が知っているのでついてきてください」
リーズは3人の前に立ち道を進んでいく。
前までは裏路地しか通られなかったが今は町の大通りを進んでいく、すると奥の方に大きな建物が見え始めた。
「うわ! すっげーでけー」
「凄く大きいですね。リクトさん」
アイリスは小さな顔を上に向けている、周りの建物の3倍くら大きい建物からは武器や鎧を身に纏った大柄な男から綺麗な鎧を優雅に着こなす女がギルドの建物から出てきていた。
「おっ……おぉーすっげー」
オレは大きさに驚き、強そうな人間たちにも驚いた、あの人たちを見るとわくわくが止まらない。
「なぁー早く登録しに行こうぜ」
「そうだな」
「そうですね」
「私もワクワクしてきました!」
オレたちは冒険者ギルドの扉を開け中に入る、中には酒の乗ったテーブルがたくさんあり奥には紙がたくさん張り付けてある壁や受付、倒した魔物を買い取る窓口などもあった。
「しばらく見ないうちに設備が整ってなぁ~」
「そうですね」
3人は冒険者ギルドの中をじっくりと見回している、アイリスは酒の匂いに顔をしかめていたを
「お酒臭いです」
「じゃー奥に行くか」
奥へ行くとテーブルから離れ多少はマシになるだろう、オレたちはアイリスを連れ冒険者ギルドの奥へと向かう。
「ようこそ、冒険者ギルドへ! 今日はどういったご用件でしょうか?」
アイリスを連れて歩いていたらいつの間にか受付に来ていたらしい、受付の綺麗な女の人が話しかけてくる。
まぁー綺麗って言ってもミラやリーズ、アイリスには数段劣るがな………まぁーいいやついでに登録を済ませとくか。
「冒険者になりにきたんですけど、どうすればいいですか?」
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