第14話大蜘蛛

 ミノタウロスの素材をマジックバッグにしまい、新しく手に入れた武器を装備し不安も残るなか、新しい階層に下りていく。


「あの、リクトさん! 三階層の魔物って強いですかね?」


 アイリスはザナグールアックスを震える手で持ち周囲を警戒しながらチラチラと見てくる。


「二階層よりは強いだろうけど今のアイリスなら余裕だろう、装備も新しくなったし順調に強くなってる、心配するな」


「そ、そうですよね、リクトさんに迷惑かけられないですよね」


「ん? 迷惑なんて思ってないぞ。守るって言ったろ心配すんな」


 オレはアイリスの頭をポンポンしながら言う、恥ずかしかったのかアイリスは赤くなり下を向いてしまう。


「それにアイリスの気配察知の能力には助かってるしな。またで悪いが魔物の察知は任せたぞ」


「はい! 任せてください!」


 階段を下り、1番下につく、オレたちは少し広い部屋に出てしまった。

 部屋からは何本もの細い通路があり、その数は20から30を軽く超えていた。


「ま、マジかよ」


 オレはその光景を見て驚きを隠せないでいた、アイリスも同様、小さな口をパクパクし驚いている、少し時間が過ぎ何とか落ち着く二人。



 どうしよう、魔物を倒すのは正直いって楽だがこんなに通路があると次の階段を探すのに手間がかかる。


「どうしましょう? リクトさん、判断は任せます。」


 いやまぁー着いてきてくれないと困るけど判断を任せるってどうなのよ? こんな頼りないオレに任せて大丈夫なのか? ダンジョン入ったの初めてなんだぞ、こういう時は相談しないとダメだろう。


「なんか楽な方法とかないかな?」


「そ、そうですねぇ~~、、、ん~~、、、、やはり一つ一つ道を確認するのがいいかと思います」


「やっぱりそうなるよな」


 しょうがないな! 一つ一つ、しらみ潰しに行くか!


「よし! そうと決まるとアイリス、気配察知を頼む」


「分かりました! ........右から3番目の通路に魔物の気配がします」


 アイリスは鼻、耳、気配察知の能力を全て使い魔物の位置を把握する、鼻で臭いを感知し、耳で音を拾い、能力で気配を探る、その精度は3つも使うことにより、かなり高くなっていると思う。

 オレでは到底、真似できない。


「よし、最初はオレが戦って強さをみてみる、アイリスはサポートしてくれ」


「分かりました」


 オレとアイリスは慎重に右から3番目の通路に進む、通路は右にいったり、左にいったりしたが脇道もなく1本道だった。

 進むにつれてアイリスは近くなって来ましたと警告をしてくれる。

 通路の最後には部屋らしき空間があり奥には狼の魔物が2匹いた

 夫婦だろうか? 1匹の腹部は大きく膨れ上がっていた、恐らく中に子供がいるのだろう。


 殺すのはやめておこう、気が引けるというか………うーんなんか嫌だ。

 まぁ~でもそれを言うなら魔物を殺すなって話になるんだが………あの幸せそうな雰囲気を見ると気が引けてしまった。


 だが普通の狼の魔物ではなく色は茶色で目は黄色、二足歩行しており、棍棒を装備していた。



「この魔物は夫婦のようですね、どうしましょう?」


「さすがにあの魔物を殺すのは気が引けるな、やめておこう」


「そ、そうですね、かわいそうですよね」


 アイリスもオレと同様気が引けたのだろうお腹の中に子供いるのを殺すのは残酷過ぎる、オレには絶対にできない。

 オレは一応、狼夫婦に魔眼とステイタス、能力閲覧の能力を使っておく


 《個体名:ダームアウルフ

 魔物ランク E~D

 注意点、すばやい動きで敵を翻弄する、鋭い爪と牙は強力、また索敵能力も高く、小さな音にも瞬時に気付く。


 ステイタス平均値 150~200


 獲得可能能力 脚力強力 嗅覚鋭敏 聴覚鋭敏 打撃耐性 切断耐性》


 微妙な能力ばかりだった、ミノタウロスはいろいろな能力を持っていてコピーするか迷ったがダームアウルフは微妙な能力しかなかった、コピーするなら嗅覚鋭敏か聴覚鋭敏なんだけどアイリスがいるからあまり必要ではないが一応聴覚鋭敏をコピーしておいた。

 聴覚鋭敏にした理由はアイリスの負担を減らすのと見張りの時に便利だからだ。

 嗅覚鋭敏でも良かったが耳がいい方がかっこいいと思ったからだ。


「さぁー行きましょう」


 アイリスは小さな声で来た道を戻っていく、音をたてないよう細心の注意をはらいながら戻る。

 ダームアウルフに気付かれることもなく元の部屋に戻ることに成功した。


「また気配察知を頼む、あのダームアウルフじゃないやつを探せるか?」


「やってみます」


 アイリスは通路一つ一つに近付き鼻をひくひくさせている、全部まわり一つだけ何度も嗅ぎ直している通路があった。


「ここの通路からは魔物の臭いが一切しないです」


「そこが正解の道なんだな!ダームアウルフじゃない魔物のいる通路を教えてくれ」


「それでしたら、あそことあそことあそこが違います、この階層には二種類の魔物しかいないようです」


 アイリスは次々と通路を指差しながら言っていく、よくわかるな。

 ほんとに便利な能力だ。

 魔物からコピーできるなら絶対にしよう。


「じゃーそこに行ってみるか」


 オレはアイリスが指差した通路の一つに向かう、アイリスはすぐにオレの後ろまで走ってくる。


「分かりました、サポートします」


 オレとアイリスは通路をどんどん進んでいく、もちろん音はたてないように慎重に進んでいる、通路は先程とは違いすぐに終わり部屋につく。

 先程のダームアウルフの部屋に続く通路の半分の距離しかなかった、部屋にいた魔物はおぞましい造形だった。

 多少醜悪なものでも耐えられると思っていたのだがそこにいた魔物は醜悪を極めていた、長い脚は10本あり目は8個そして全身には毛が生えている、毒を吐き、体内の内臓を毒で溶かし、牙から獲物を啜る、その醜悪で恐ろしい生物の名前は蜘蛛だ。

 ただし大きさは人間の3倍くらいある大蜘蛛だ、はっきり言って悪夢の他の何者でもない。

 オレは昔から蜘蛛だけは苦手であった、アイリスも蜘蛛は苦手なのであろう後ろで半泣きしている。


「大丈夫か?」


「私、昔から虫とか苦手で。すいません、すいません」


 いや、謝らなくてもいいぞ! オレも苦手だから!!!

 だけどここで逃げてしまうのはカッコ悪い、しかもアイリスの前だ逃げるなんて格好の悪いことできない………。

 オレは見るのも嫌だが一応魔眼とステイタス、能力閲覧を使う。


 《個体名:デッドリーポイズンスパイダー

 魔物ランク E~D

 注意点、牙からは毒が出てくる、噛まれると死に至る可能性すらある、毒に耐性を持って戦った方がいい、また一度巣を作るとそこに一生住み着く習性がある。


 ステイタス平均値、130~200


 獲得可能能力 毒生成 糸生成 毒付与 糸強化 糸操作

 火炎脆弱 切断脆弱 打撃脆弱 毒耐性》


 蜘蛛の糸など触りたくもないが毒生成は使えそうだ、オレは迷わず毒生成をコピーする。

 毒生成があれば何かと便利だろう、罠に使ったり、相手の戦闘能力を下げたり。

 だがいろいろな能力を持っているな、毒を生成し糸に毒を付与し操作するってことか? それに糸強化が気になるな、強化すると硬くなるってことか? それとも糸で何かを切れるようになるとか? いくら考えてもわからなかった、実際に使ってみるしかないな。


「アイリス、ここから離れて新しいデッドリーポイズンスパイダーを探すぞ」


「え!? 嫌です!見たくありません」


「オレもそうだが倒さないと襲ってくるかも知れないぞ」


 アイリスは半泣きしながらもうなずいてくれる。


「そ、そうですね。頑張ります」


「よし、偉いぞ。」


 オレはアイリスの頭を撫でる、アイリスは半泣きしながらも嬉しそうに笑ってくれた、壁に隠れて蜘蛛を見ていたがあちらもこっちに気が付いたようだ。

 蜘蛛が醜悪な顔をこちらに向け威嚇してくる。


 《ギ、、、ギ、、シャーーーー》


 まだ距離があったが近づいてくる蜘蛛は毒を吐き出し飛ばしてくる。

 オレとアイリスは後ろに飛び、毒を避ける。

 行き場を失った毒は地面に落ち、地面を変色させ溶かしていく。


 まてまてまて! これじゃあ、毒じゃなく溶解液じゃないか!!


 それを追いかけるように大蜘蛛は急接近してくる。


「ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール」


 オレは蜘蛛が迫る恐怖に半狂乱になりつつ魔法を放つ

 三個の火の玉は3角形に大蜘蛛に迫っていくが大蜘蛛は素早い動きで全て避け、さらに迫ってくる、黒い巨体が牙を剥き出しで迫ってくる恐怖する。


「うわぁーーー。ファイヤーボーーーール」


 避けられた焦りと大蜘蛛が迫る恐怖に半狂乱は狂乱に変わり、特大とファイヤーボールを放つ。

 特大のファイヤーボールは通路を全て埋め尽くす程の大きさで発射する、いくら俊敏な大蜘蛛で避けるスペースがなければ避けられないようだ。

 特大のファイヤーボールは一瞬でデッドリーポイズンスパイダーを焼き尽くし、消し炭に変える。

 蜘蛛の焼けた匂いが辺り一面に充満し、吐きそうになる。


「はぁ、はぁ、はぁ、、、終わったのか」


 正直言って人生の中で一番怖かったのは確かだ。

 恐怖支配の能力があったのだが発動するのを忘れていた、早く気付けば良かった。


「リクトさんも虫とか苦手なんですね」


「いや、オレは蜘蛛だけが苦手だ」


 アイリスは大きな蜘蛛の死体をできるだけ見ないようにしながら言った。


「次の探すか」


「は、、はいぃ」


 あからさまにアイリスのテンションが下がってしまった、オレも嫌だが蜘蛛の能力を全てコピーするまではやめることができない。

 このあとのダンジョンで何があるか分からない以上、便利そうな能力はコピーしておきたい。

 それからアイリスの協力の元デッドリーポイズンスパイダーの巣を探しだし見つけ能力をコピーしていった、もちろん戦闘は避けた。

 戦いたくもないし見たくもない。

 全て終わる頃にはアイリスは顔面蒼白となっていた、口数は減りみるからに疲弊していた。


「ありがとう、アイリス終わったよ」


「ん、、んあ? 終わりましたか? やっとですか………。」


 アイリスは意識が朦朧としていたようだ、悪いことをしたな、あとでいっぱい謝ろう。


「終わったし、魔物がいない通路へ進むか」


「そ、そうですね、もう蜘蛛は見たくありません」


「オレもだ、あっちょっと待って」


 アイリスはオレより先に魔物がいない通路へ進んでいく

 そんなに蜘蛛が嫌か? まぁーオレもだが、アイリスは通路の前で待ってくれてた。


「よし! 行く前にステイタスを確認しておくか」


「はい! 分かりました」


 一応、整理のために見ておく

 魔眼、能力を使い自分のステイタスとアイリスのステイタスを見ていく


 名前 ミヤマ リクト


 称号 魔眼保持者、牛殺し


 レベル 35→36


 HP 741→746

 MP 1124→1131


 ATK 482(+40)→486(+80)

 DEF 426(+30)→432(+30)

 INT 435→438

 RES 462→468

 HIT 439→442

 SPD 538(+10)→542(+10)


 《物体名:能力確認カード、解読結果

 個体名:三山 利久人

 種族:ハーフヴァンパイア

 種族能力:恐怖支配 C 殺気凶悪化 C

 身体能力増加 B 憎悪倍加 C


 個体能力:斬撃耐性 E 打撃耐性 D

 短刀術 C 切断耐性 D


 魔物能力 ドレインタッチ 水流操作 剛力


 マジックアイテム能力 ステイタス閲覧 能力閲覧


 行使可能魔法

 初級 火炎魔法(ファイヤーボール、火種生成など)

 中級 回復魔法(傷の治療、毒の治療)


 所持魔眼:魔眼名リーディングアイ

 効果、視認した物質の名称、事柄を読み取る、魔法の本質を見抜き、解読、理解


 上位能力:理解者

 理解した物体、魔物の特徴やスキルをコピーすることができる(一つの物体からは一つだけ、魔物のスキルも同様で一つだけ) 


 獲得能力 聴覚鋭敏 (聴覚が鋭敏になる)

 毒生成(体内で毒を生成することができる)

 糸生成(糸を生成することができる)

 毒付与(ものに毒を付与することができる)

 糸強化(糸の強度を上げる)

 糸操作(糸を操作することができる)》



 レベルは1しか上がっていなかった、あんなに怖い思いをしてもステイタスに圧倒的差がありレベルは上がりにくかったようだ。

 一気に能力が増えてしまった、“努力した“かいがあった。

 何度も恐怖で逃げ出そうとしたか、そのたびに恐怖支配の能力でのりきった。


 アイリスのステイタスと能力を見てみよう。



 名 アイリス

 称号 リクトの奴隷

 レベル 14


 HP 211

 MP 53


 ATK 157(+60)

 DEF 82

 INT 96

 RES 123

 HIT 116

 SPD 138



 《物体名:能力確認カード、解読結果

 個体名:アイリス

 種族:獣人(狐)

 種族能力:超聴覚 C 超嗅覚 C 脚力強化 D


 個体能力:気配察知(魔物、魔族、人間などの気配を察知する

 また、特定の人物の気配を探し出すとこも可能)》


 アイリスは特に変化はなかった、まぁー戦ってないし仕方ないな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る