第8話ステイタス

 朝日が差し込み、眩しいと思える清々しい朝のことだった、ミラに起こされ視線を下にすると奴隷の少女が年齢に似合わない大きな胸をおし当ててきていた。

 その光景を見てミラは当然のように怒った。


「信じられるかぁーーー」


 ミラの小さな手が高速でオレの頬目掛けて飛んできた、あまりの早さで回避することが出来なかった。


「なにをした! リクト見損なったぞ」


 奴隷の少女はオレがビンタされた音で、意識をはっきりとしたものへ変える。

 ミラは腕を組みオレを蔑むような目で一瞥し、視線を反らす。

 やめて、ガチで傷つくから。


「ほ、ほんとになにもしてないって! なぁー」


 オレは抱きついて来ていた奴隷の少女を見て身の潔白を証明してくれ、と懇願したが奴隷の少女はなんのことかわからないという表情をしていた。


「嫌なことはされなかったか? そこの性獣が服を脱げとか言わなかったか?」


 性獣って酷すぎではありませんか、ミラさん。

 ミラは奴隷の少女に優しく語りかけるように問いただす。

 ミラの目はまるで、炎のように燃え上がっているように思えた、そこに含まれる感情は嫉妬か、怒り、または屈辱か。

 うん、間違いなく、怒りだろうな。


「いえ、そのようなことは言われてはおりません」


 奴隷の少女はやっと理解してくれたのか、オレの身の潔白を証明してくれる。


「では、初めてで気持ちよかったとはなんだ?」


 ミラの目は次第に鋭くなっていき、声はいつしか怒声へと変わり奴隷の少女を威嚇する。


「ひうぅ。あのその」


 奴隷の少女は次第に目の端に涙が溜まっていく、そんなにミラが怖いか? いや怖いな、俺でも怖いからな。


「やめろよミラ。怖がってるだろリーズもなんとか言ってくれよ」


「そうですよ。ミラ様。リクト様は性行為はしておりません

 エルフの聴力がいいことは知っていますよね?

 ハーフエルフですが。聴力はいいので私が気が付かないわけがありませんよ」


 ミラの後ろに控えていたリーズが淡々と言った。

 ありがとう、リーズさん! あんたマジでいい人だ。

 だけど欲を言えば………最初から、そう言ってくれよリーズさん!


「性行為がなかったとしても添い寝はダメだ」


 ミラは性行為がなかったことは認めたくれたが添い寝もダメらしい。


「気持ちよかったってのは頭を撫でてやっただけだからな! それに添い寝だって。あんなことのあとだから近くに誰か居て欲しいんだろ」


 オレはミラを宥めた、これがどれだけ効果があるか分からないが言わないよりは言ったほうがいいだろう。


「そうかもしれんが.....うーん.......今回だけだ」


 ミラは考え込んだ末になんとか、譲歩して見逃してくれた。


「それにしても名前がないと不便だな」


 ミラは許してくれたようだ、いつもの口調に戻った。

 そう、奴隷の少女には名前がなかった。

 少女の身長は小さい、顔は童顔で可愛らしい顔立ち、髪の毛は淡い栗色長さは肩まで無造作に伸びていたが何処か儚げな雰囲気のある少女は可愛いい。

 そして頭の上からは狐の耳が出て、さらに腰からはキレイな尻尾が出ていた。

 そして1番目をひくのは年齢には似合わない大きな胸だ、身長と不釣り合いなほど大きな胸があった。

 まさしくロリ巨乳だ。


「わ、私はご主人様に名付けて頂きたいです」


 奴隷の少女はオレの顔と少女の顔がぶつかるギリギリの距離まで近ずき言った。

 少女の目はキラキラと輝いているように見え、腰の尻尾はブンブンという擬音が聞こえそうなほど振っていた。

 可愛いな、思わず抱き締めたくなったが、やらなかった、やってしまうとミラがまたに怒りそうだ。

 オレはわざわざ地雷は踏むようなバカではない。


「ご指名か……。リクト、名前はお前が付けてやれ。それが主の勤め!」


「名前か.....実は昨日の夜に少し考えていたやつがある、にはある」


 少女は期待の眼差しで見てきた。

 ヤバイ、ハードルが上がったぞ、どうしよう恥ずかしくなってきた。


「いや、そんなに期待されても。リーズはいい名前はあるか?」


 なんか恥ずかしくなりリーズに助け名付け案を求めてしまった。

 奴隷の少女は、さっきまで尻尾をブンブンと振っていたのに今は力なく垂れ下がっていた。


「リクトさんが決めたほうがよろしいかと」


 リーズは表情一つ変えずに言った、助けてくれよ!

 リーズの声を聞き垂れ下がっていた尻尾は元気を取り戻す。


「やっぱ、そうなるか。う~ん.....アイリスってのはどうだ」


「あ、ありがとうございます」


 奴隷の少女は両手で顔を隠しながらうつむいた手からは一滴の涙がこぼれる、尻尾はピクピク動き、耳はピーンと伸びていた。

 嫌だったかなと心配になってしまった。


「すっすまん。センスなくて、嫌なら言ってくれ」


 奴隷の少女は激しく首を横に振った、良かった嫌では無かったみたいだ。


「ひぐっ、初めて出来たマスターに初めて名前を付けてもらった。これほど嬉しいことはありません」


 嬉しくて泣いているようだ良かった、だが少し反応がオーバー過ぎるのではないか!?

 アイリスの耳はピクピクと動いていた、思わず抱き締めたくなったが、やってしまったらミラが怒るだろうから、頭を撫でることにする。


「良い、名前ですね。大事にしないとダメですよ」


 リーズは微笑ましいといった顔で見ながら言った。


「あ、ありがとうございます。ご主人様、私の忠義をお受け取りくださいますか?」


 アイリスは涙声のままだったがしっかりとオレの目を見ながら言った、そんなに重いとは思ってもみなかった、だがここで断るとどうなるか、なんてことは容易に考えが付く。


「お前が嫌になるまでは俺が主人な! だけどご主人様と呼ぶのは勘弁してくれ、マジで」


 と言いオレはアイリスの頭を撫でた。


「嫌になる可能性なんて皆無ですが分かりました。

 では、なんとお呼びいたしたらいいのでしょうか?」


 アイリスは可愛らしく首を傾げている、あまりの可愛いさに頭が真っ白になってしまう。

 可愛さならばミラとタメを張るくらい、まぁ~圧倒的に勝っている部分胸もあるが………。


「う~ん.....リクト? いや違うな....」


 オレは腕を組みながら考え込んだ、呼ばれかたによって人からの見られ方が全然ちがう。

 ここで対等に呼び会うと周りから不信に思われる可能性がある。


「リクト様とかご主人様ではダメなんですか?」


 リーズは困惑していた、この世界では周りの視線なんて気にしないからだ。


「周りからアイリスが奴隷と思われるとめんどうだからな。

 それに小さな子供に敬語使われるの苦手なんだわ」


「そうなのかリクト変わった奴じゃの

 奴隷は奴隷であろうに。だがその考え事態は好きじゃよ」


 ミラはオレの話しを聞きながら頷いてくれた


「そうです奴隷は奴隷です。物です」


 アイリスは必死に抗議してきた、いやいや自分の待遇下げようとしてどうする。

 あれか? 貰いすぎると遠慮しちゃうやつか? まぁーわかるけどな。


「アイリスは敬語禁止! あと謙虚なのはいいが自分で自分を卑下するな」


「そうじゃ自分を卑下すると主までも見下されるから気を付けろ」


 ミラにお前が発端じゃねぇーかとツッコミたかったが、やめておいた、ミラもオレの考え方を認めてくれた。

 リーズをチラッと見たら頷いてくれた、アイリスを除き全員が同じ考えのようだ。


「ではリクトさんでいいですか?」


 アイリスは戸惑いながら言った。


「そうだな。少しぎこちないけどいいか」


「そうだな。徐々に直せばいいだろう」


 アイリスの今後も決まったし、今日はなにをするんだろう。


「今日の予定とかないのか、ミラ?」


「う~ん.....あっそうだ。そろそろ金がなくなるから調達しようと思ってたの忘れてた!」


 ミラは笑顔で思い出した用に左手の手のひらに右手を握り降り下ろした。

 やべぇ~聞かなきゃよかったミラ超笑顔だよ、また死にそうなことになりそうだ………逃げよ。

 立ち上がり走ろうとするとリーズが立ちふさがる。


「どこへゆかれるのですか? フフフ」


 怖い、怖い、怖い、笑ってるよリーズさん、逆に走ろうと振り返るとミラが両手を広げて立っていた、あっダメだ………詰んだ。


「どこへ行くんじゃリクト? 強くなるんじゃないのか? アイリスはお主が守るんじゃなかったか?」


「うぐっっ!! そ、そうだな」


 オレは覚悟を決めた、アイリスを守らなきゃいけない。


「よし覚悟は決まったか? では行くぞ集まるのじゃ」


 ミラがそう言うとリーズ、リクト、アイリスはミラに近寄る、アイリスは戸惑いつつオレの袖を摘まみながら不安そうにこっちを見ていた。

 オレはアイリスの不安を払拭するため頭を撫でてやった、ミラはそれを羨ましそうに見ていた………やらないよ?


「行くぞ」


 ミラは少しだけ呪文を唱えると一瞬にして視界が切り替わる、目の前には洞窟があった、人の気配はなく、辺りは静寂に包まれてきた。


「よし、ダンジョンに着いたぞ。

 あっダンジョンに入る前にこれを使え、買っておいた」


 ミラはそう言うとスキルカードに似たカードをアイリスとオレに渡してくる。


「それはステイタスカードだ、ダンジョンに入る前に確認しておけ」


「使い方はスキルカードと変わらんよな?」


 ミラは小さく頷き、早く使えとばかりに顎をしゃくる。

 オレはステイタスカードを額に当てた、数秒後にポンッという音共に光る、オレはカードに向けてリーディングアイを使い読めない文字を読んだ。


 名 ミヤマ リクト

 称号 魔眼保持者

 レベル 16


 HP 460

 MP 752


 ATK 216(+20)

 DEF 187(+30)

 INT 193

 RES 211

 HIT 198

 SPD 283(10)



 名 = 個体名

 称号 = 称号によりステイタス変動がある可能性あり

 レベル = レベルが上昇するとステイタスが上昇する


 HP = ダメージを受けられる限界値

 MP = 使える魔力の総量


 ATK = 物理攻撃の値 

 DEF = 物理防御力の値 

 INT = 魔法攻撃力の値 

 RES = 魔法防御力の値、回復魔法の回復量はここに比例する

 HIT = 命中精度の値 

 SPD = 敏捷の値 


( )は装備のプラスと補足説明があった



 これは高いのか?低いのか?


『スキル、ステイタス閲覧を獲得しました』

 ステイタスカードに魔眼を使って物質の特性を獲得できたらしい


「ミラー平均ってどれくらい?」


 人間の平均は50~100らしい、修行や戦闘経験でステイタスは上昇する。

 魔族は平均100~500らしい、魔族も修行や戦闘経験でステイタスは上昇する。

 どちらも戦闘経験がない場合の平均値らしい。


 隣りのアイリスのステイタスカードを除いてみた


 名 アイリス

 称号 リクトの奴隷

 レベル 8


 HP 116

 MP 23


 ATK 97

 DEF 64

 INT 72

 RES 86

 HIT 81

 SPD 123


 ほぼ人間の平均値と同じだった、アイリスは獣人だからもっと高いステイタスかと思ってた。

 まぁ~でも子供だし、しょうがないか。


「こんな感じだ」


「う~んこのステイタスなら5階層全て行けるが、無理はするなよ」


 そう言うとミラはオレとアイリスをいきなり、ダンジョンの一階層に転移させられる。

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