第7話奴隷の少女とハプニング
月が美しく輝く夜、ミラ、リーズ、オレは奴隷販売組織のアジト近くの路地裏にいた。
「もうよい、次はないと思え」
ミラは泣きながら土下座するリーズにそう言い放つ。
リーズはそれを真摯に受けとめ、立ち上がり深々と頭を下げる。
オレはミラのやり方は好きにはなれない、むしろ嫌いだ、大嫌いだ、軽蔑すらする。
「ミラ………」
オレは名前を呼び振り返る少女 ミラの頬を軽く叩く、だがミラは叩かれた痛みより、なぜ叩かれたか分からないという顔をしていた。
ミラはこちらを数秒みるだけしかしなかった、なぜこんなことをしたか分かって無いようだ。
言ってやらんと分からんか! バカめ。しょうがねぇ~な
「ミラ……お前は力で脅し、恐怖を与え、自由を奪った。お前のやっている行為は最低だ」
「………。それは、、いや……なんでもない」
俺たちの話をリーズは口をあけたまま聞いていた
「リーズさん? でいいですよね、本当にすいませんでした」
ミラのかわりにオレがリーズさんへと深々へと頭を下げる、ミラが何も言えずに放心状態になってしまったためだ
オレは自分の意見を押し付けているだけかもしれない
だが、ミラのそんなところは見たくなかったしミラだからこそ、許せなかった。
パートナーとして、元人間として、友達として、そして何よりミラ自身のため。
ミラは放心状態はどんどんと解消されていき、次第に意識をはっきりさせていく。
「すまない、リーズ。本当に私が悪かった。
失った時間は取り戻せない………ならば新たな関係、主従関係を築こうではないか!
これからはどんどん意見を言ってくれ
それにリクト。気付かせてくれて、ありがとう」
ミラは正座のままのリーズに頭を下げながら言った。
リーズは何が起きたのか理解できずに慌てていた。
「そ、そんな。頭を上げてください。
それにミラ様の態度は悪いものではありませんでした。あれが普通なのです」
普通なのか! あれが普通なんて最低だな。
だがこっちで普通だとしても、あのやり方は好きにはなれない。
「よし、これで解決だな。ミラは今後あんな態度はするなよ!
リーズさんもそれで構いませんか?」
「え? あ、はい。でもどうして敬語なんですか?」
リーズさんはいつのまにか敬語になっていた、あんなことがあって動揺しているのだろう。
「そりゃー歳上ですし」
「それならミラ様も歳上ですよね?」
痛い所をつかれた、実際、そうだ………よな?
ミラは259歳とか言っていた。
最初は痛い子と思っていたがリーズさんを配下にしている時点で年齢は本当なんだろう。
「う~ん、まぁーそうなんだがミラは子供にしか思えないし」
そう言うと先程まで黙って聞いていたミラが怒ってオレに何か言ってきた。
「そうですか、今後はミラ様に忠義を尽くしたく思います。
また、パートナーであられるリクト様につきましては私の折り合いがつくまで普通に接するご許可をください」
リーズは立ち上がり頭を深々と下げながら言った、まぁ~それならばいいだろう、出来るならば敬語とかは使わないで欲しいが。
「え、そうなるのか? ミラ」
「いや、普通ならば即座に配下の一端に加わるのが当たり前、だがリーズは主は己が決めた者しか認めん」
ミラはこっちをチラチラと申し訳なさそうに言った。
そんなにビクビクしなくてもいいと思うが、あの出来事の後ならしょうがないだろう。
「リーズさん、無理にとは言いませんが敬語は出来るだけ止めてください」
オレは頭を下げ続けているリーズさんに言った、あんな強いリーズさんに畏まられるなんてゾワゾワしてくる。
むしろオレが頭を下げていてもおかしくはないはずだ。
「そんな、とんでもないです。主、とはまだ認められませんがミラ様にあんな態度で話せるのはリクト様くらいです。
“殺されても“おかしくない、ようなことまでして私を助けていただいて感動いたしました。
それに、そのうち、主と認めることになりそうですし」
リーズは頭を上げずにすらすらと言った、ただミラを叱っただけだがすごい評価だ。
リーズの知っているミラはどんな奴だったのだろう。
「リーズさん....いやリーズ、がそれでいいならそれでいいや」
リーズとずっと話していたからかミラが怒っていた。
何故かは分からないが不機嫌だった。
「私抜きで話を進めるな」
ミラは頬を膨らましそっぽをむいた、どこのアニメのキャラだよ。
まぁ可愛いが。
「こればっかりはしょーがない
それよりどっかで寝ないか? あいつら意外と強くて疲れた」
魔力を使い過ぎたせいか頭がクラクラする。
魔眼を連発し魔法を3発すると魔力切れのようだ、自分の魔力量が分かれば話が早いんだがな。
「そうじゃな。今日はあいつらのアジトで寝るとしよう」
「それがよろしいと思います」
アジトはすぐ近くにある、奴隷販売組織のものを利用した。
しょうがないから今日はアジトで寝ることにしよう。
アジトに入ると大きな檻があった、その檻の中にはまだ人がいたほとんどの奴隷は魔族、亜人ばかりだった。
小柄な女の子がいたり大柄な男がいたり、だがその全員がまともな服を着ていず汚い布を体に巻き付けているだけだった。
「ミラ? なぜ、まだ奴隷の奴らがいる?」
ミラはオレの後ろから歩いてきていた。
「こやつらは生まれた時から奴隷として生まれたのだ、だから奴隷以外の生き方などしらないのだろう。
ここで待っていたら他の奴隷商人が来ると思っているのだろう」
ミラが奴隷の人たちを見ながら言った、その目は哀れみや悲しみという感情がにじみ出ていた。
「そ、そうなのか。こいつらどうにかできないか、ミラ?」
ミラは深刻そうな顔になりどうするべきか考えこむ。
リーズは冷静にどうするべきか考え、冷酷に判断し言葉にした。
「見捨てるか、ここで殺すのが一番合理的です。
助ける価値も理由もございません」
奴隷たちは何も言わずこちらを見るだけだった、その目はどこか虚ろで感情が欠落していた。
「見捨てるのは辛いが放置しよう。その内に新たに主人が見つかるかもしれない」
ミラは顎に手を添え、迷いながらも辛い決断をした、表情は少し険しくなっていた。
だがそんな決断は認められない、あまりにも可哀想だ。
「ミラはいろいろなことを知って判断してるだろうが、そんな悲しい判断はオレが認めない。
ただの自己満足かもしれない………それでもオレはお前達を見捨てたくない。
オレに救わせてくれないか!?」
奴隷の1人が手を上げてくれた、小さな狐耳の女の子だった。
男と違い自分で自分を守れないからついてきてくれるのだろう。
獣人の少女は見た目の年齢には似合わない大きな胸をしていた、キツネの耳が頭部にあった、作り物では表すことのできないようなキレイな耳だった。
身長はミラよりもほんの少しだけ大きく感じた。
「それは無理ですリクト様、経済面の方は? 食料の方は? 守るって言ったって、あなたはまだ弱いではないですか! どうするのですか?」
リーズはオレの欠点をすらすらと言っていく、そんなことは分かっている。
オレは奴隷の獣耳少女の前に立ち背を向け両手を広げながら庇うように立つ。
「確かにそうだが………こいつらは幸せになる権利がある」
奴隷の獣耳少女は黙ってどうなるか見ていた。
「奴隷にそんな権利はありません
諦めてくださいリクト様」
リーズは冷静に冷酷な判断を言うだけだった、こっちでは確かにそうかもしれない………でもオレはそんなのしらない! 幸せは皆、平等なはずだと信じたい。
ミラはただ、どうなるか見ているだけだった。
「ないならオレがやる!!! お前はオレが幸せにしてやる。
いいか!?」
「何を言おうが無駄なのですね。
私のやり方で救おうと思ったのですが
ミラ様はどう思いますか?」
リーズはミラを見て質問した、もしミラが反対すればどうなるのだろう。
仮にミラが反対しようがオレは絶対に退く気はない。
「ん? 私は別にいいと思う。リクトは私が守るし
リクトはそこの小娘を守ればいい。だが1つだけ条件がある」
ミラは平然と言っていく、心配していたが一応賛成のようだ。
だが条件とはなんだろう?
「なんだ、条件って?」
冷や汗が出てきた、オレは険しい顔となりミラの言葉を忠実に待つ。
生唾を飲み覚悟を決めた。
「簡単なことだ、性行為は絶対にダメだ」
ミラは腕を組み平然と言った、狼狽えたのはオレの方だった。
「なっ、するわけないだろうが!」
奴隷の獣耳少女が今まで開かなかった口を開いた。
「せいこうい、とは何ですか?」
こちらを見る目は分からないことを確認しようとする目だった、無垢なその目を汚すようなことを教えたくないが、どう逃げればいいかも分からない………。
奴隷の少女はキレイな顔立ちをしていた、だが食べ物も全然食べてなくて痩せ干そっていたが、どこか儚げで美しく感じる。
成長したらそれはそれは、注目の的になりそうだ。
「き、気にするな、名前はなんて言う?」
適当な話題を振り誤魔化した、こんなんで誤魔化せるものか? と思ったが意外と成功し、奴隷の獣耳少女は困った表情になりうつ向いてしまった。
「どうした?」
「なまえ? ないと思います。いつも
オイとかオマエとかでした」
獣人の少女は少しだけ首をかしげながら言った、その表情は不安に満ちていた。
「名前がないのか、名前は後で付けるとして。
他の奴らは来ないのか?」
全体へ聞こえるように言ったが反応を示したのは人間の大男だった大男はゆっくりとこちらを向き睨んできた。
「誰が魔物の奴隷になるか。死んでも御免だぜ」
低い声で威嚇してきた、衰弱していても魔族を嫌悪していた。
「そうか、ならばここで死ね」
リーズは剣に握って男の首を落とすべく素早く後ろに回り込んでいた。
つい、さっきまでオレの後ろにいたのに、いつの間にか移動している。
「ま、まてリーズ殺すな」
オレは焦って声を出した。
もしオレが声を出さなかったら即座に奴隷の大男は死んでいただろう。
「何故です? リクトさん。この下等生物はミラ様やリクト様を侮辱したのです。死んで当然です」
リーズの目は瞳孔が開いていた、その目にゾッとしたが殺すのはダメだ。
「殺したってなんの解決にもならん、やめよ」
「畏まりましたミラ様」
リーズは即座に剣を納めミラに膝まずいた。
俺だと反論したのにミラは即効かよ………さっすがぁー。
「今日はもう寝るぞ、リクト、リーズ
私はもう眠い」
さっきから喋る回数が少なかったのは眠たかったからか、ミラは目を眠たそうに擦りながらあくびをしていた。
「そうだな。寝るとするか」
「明日に備えて早めに休息を取りましょう」
ミラはその場に横になり眠りについた、子供は寝付くのか早いな。
奴隷の大男はゆっくりと立ち上がり、アジトから出て闇の中に消えていく。
「お前はどうする?」
奴隷の少女はキョロキョロと回りを見渡し迷ったあげく、その場に座る。
「私はここでいいです」
「わかった。オレも寝る何かあったら教えてくれ」
オレは奴隷の少女の頭を撫でた、柔らかく素晴らしい毛質だ、あまりの素晴らしさにずっと触っていたいと思えるほど、いいさわり心地だった。
「ん、、えへへ」
少女は頭を気持ち良さそうに撫でられていた、名残惜しが少女の頭から手を離し壁際に移動する。
その場で横になり目を閉じた、数分もしない内に眠りについた。
ミラのことを子供と言ったがすぐに寝てしまう。
................................................................
「リクト。起きろ、起きぬか」
ミラがオレの肩を揺さぶりながら言っていた。
あまりの鬼気迫る声にリクトは驚き跳ね起きる。
「な、なんだ、敵か?」
ジュラザの森で過ごして敵感知は鋭くなってる、何かあればすぐに起きられるようになっているはず。
「違う! これはなんだ、説明してみよ!」
ミラはオレを指差しながら言った、指が差す方向には奴隷の少女がオレに抱きつきながら眠いっていた。
大きな胸をリクトに押し当てるように眠る奴隷の少女は幸せそうに笑っていた。
その事に戸惑いつつも状況を理解しようとした。
「オレはしらない、この子が勝手に」
「ん?あ、おはようごさいます
昨日は初めてだったけど気持ち良かったです。」
奴隷の少女はにっこり笑って言った、ミラの表情は段々と険しくなり、怒りで小さな肩は震えていた。
「い、いや、何もしてないから。
いやマジで、誤解だってば、ホントに」
「信じられるわけあるかぁーーー」
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