ポンポン牧場

星ぶどう

第1話牧場生活の危機

 わいは牧場主や、毎日畑の作物に水をあげ、牛に餌をやる、いい乳が出るようにブラシもかけてあげる。

 そしてニワトリの卵を収穫するのだ。

 はぁー、やはり牧場生活はつかれるのぅ。

 しかし、この生活にはもう5年もたっておる、慣れてきたとはいえまだ腰がめりめりするわ、そう思い、畑のたくさんの野菜に囲まれた真ん中にわいは立っていた。

 汗もびっしょりかいた、今は夏、ミーンミーンと蝉がかしましいほど鳴いておる。

 暑さを倍増させるうるさいやつらじゃ。

 昔はよく捕まえたものじゃ。

 うるさいし、バルタン星人に似ておるのに何故じゃろう。 

 木々の葉っぱの色がこくなって何故か胸がきゅんとする。夏のおもひで。

 自然は美しい、その自然の恵みをたくさん吸収した野菜は、なお美味しい。

 野菜や卵を入れたバスケットを持って、丸太で作られた小さな家、-----というより小屋じゃの一部屋じゃし-----にわいは戻ると食卓に一旦そのかごを置くと北向の台所にフライパン、おたま、ヘラを持って準備完了、さっそくかごを台所に持ってくると、料理を始めた。

 オムレツを取れたての卵で作り、トマトのサラダを作ると食卓にどんと並べた。

 パクパク、モグモグ、くちゃくちゃ、汚い音を出してランチタイムを楽しんでいると夕暮れ時になり、わいは「食べた、食べた」っと満足げに膨らんだお腹をさすった。

 家の木戸がトントンと聞こえた。

 なにぶんなんども言うが一部屋のひとりぐらし食卓のすぐそこに木戸はあるのでよく響いた。

 なので聞き間違える事はめったにない。

 しかし、戸をあけてみたが誰もいなかった、空はすでに満天の星が輝いてる。

 食卓に置いていたランプをもってザクザクと足音をたてながらあたりを見まわしたが、誰もいなかった。

 (なんじゃろう? イタズラかのぅ? それとも聞き間違いかのぅ?)

 羽虫がランプに集まって火の中に飛び込んでいる。

 わいは少し虫達がかわいそうになったのでトイレに行ったら家に戻ろうとした。

 (トイレは外の馬小屋の隣にある)

 すると背後から声がしたので振り替えってみるとツインテールに銀色の髪の小さな女の子が二人の鎧を着た騎士に守られ立っていた。

 わいの姉上のリアーネじゃ。彼女は幼い顔で背も低いがかなりの権力をものにした女。

 「ここ破壊するぞ」

 二人の騎士がランプを照らしておりリアーネは白い顔をきわだたせて幼い表情でニヤリと笑った。

 「なんじゃと!」

 ワイは耳を疑った。

 ここを破壊する!?

 「お主の耳は腐っておるのか? ここを破壊すると言っておるのじゃ」

 茶色い軍服に身をつつんだ小さな悪魔。

 リアーネは「あぁ」っと思い出したように続けて言った。

 「ここの家畜、野菜、すべて軍の食料とする」

 ワイはあっけにとられて口をあんぐりあけた。

 「何故じゃ!?」

 「相変わらず世の中の事を知らぬようじゃのぅ、戦争が起こるのだよ、ここを破壊すれば進軍しやすくなる、それにお主が裏切って敵に食料を与えてはいけないからのぅ」

 リアーネはクスッと笑いワイに顔を近づけた。

 「ここは村長さんからいただいた、大切な牧場じゃ、ボロボロだった所を綺麗に直したんじゃ!」

 ワイが反発するとリアーネは言った。

 「お主がそんな事言える立場かのぅ? 町を一つ破壊した女悪魔デュルンダルちゃん」

 そう、ワイは牧場主である前に悪魔なのじゃ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る