6月12日


 散歩の途中で手鏡と出会う。

 手鏡は暗い口調で「世界は薄汚れているんだ……」と言い、ため息をついた。

 手鏡の鏡面が砂埃で汚れているのに気が付き、持っていたウェットティッシュできれいに拭いてあげると、すっかりきれいになった鏡面で、少しの間きょろきょろとあたりを見回した手鏡は、絶望しきった様子でがっくりと膝をついてしまった。

「薄汚れた世界が好きだったのに……」


 どうやら余計なことをしてしまったようだ。

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