ぜんまい仕掛けのアイ

くーのすけ

ぜんまい仕掛けのアイ

 ストレス社会が激化する現代日本。

 外でも家でも、どこに居ても息が詰まるような、生きにくい世の中。灰色に染まった世界のなかでは、口を開くことさえも億劫で。自然と人々の間から会話というものが少なくなり、それに伴って笑顔というものもめっきり見かけなくなった。


 それが、数年前までの話。


 打って変わって、現在。

 街を歩けば、


「ようし、今日もお仕事行ってくるよ~ん!」

「はーいっ! パパ、お仕事頑張ってねっ! 今日の晩御飯はパパの大好きなおでんだから、作って帰りを待ってるねっ!」


 そんなむず痒くなるようなやり取りや、


「ご主人様。鞄をお持ち致します」

「うむ、ご苦労」


 そんな顔を顰めそうになるやり取りや、


「こら。僕の言うことを守らないなんて、悪い子猫ちゃんだ」

「ほああっ! 可愛い系イケメンからの壁ドン、これヤバス……」


 そんな頭を抱えたくなるようなやり取りが、ところ構わず繰り広げられている。

 これがストレスにやられた人間同士で行われているやり取りだったならば、人間は遂に行くところまで行っちゃったな、と思っただろう。

 だが、残念ながら違う。そのやり取りは、人間同士で行われているものではなかった。


 追い込まれたストレス社会を打破するため、多少おかしな舵の切り方をしているものの、人々に笑顔と活力を与え、心からストレスを取り除くための商品が生まれた。買い手である彼ら彼女らの趣味嗜好に合わせ、理想的な振る舞いをするは、人ではなく、人工知能――すなわち、AIであった。


 世も末だ、と嘆く者も居る。

 オタクだ、と見下し嗤う者も居る。


 それも仕方がない、と思う。事実、現在の我らは『癒し』というものを生身の人間でなく、機械の人形に求めているのだから。


 ――愛玩用オートマタ。


 たが、安い車一台分もあれば買えてしまうそのからくり人形に搭載された高性能AIが、人々に笑顔を、自宅に癒しを、そして世界に色を与えたのは、紛れもない事実であった。


 ……だからこそ、


「なあ、アイ。テレビのリモコン取ってくれ」

「その程度、自分でやってください」


 俺に届いたコイツは、不良品なんだと思う。


   ◇ ◇ ◇


 いつからこんな風になったんだか。「今は手を離せません」と言いながら、テーブルの対岸でボケッとテレビを眺めている、俺が買った愛玩用オートマタ――名前はアイ――を見る。

 ちなみに、名前の由来は適当だ。AIだから、ローマ字読みで、アイ。

 あのムカつく上司のように「いちごちゃん」とか、俺に愛玩用オートマタを勧めた同僚のように「りんごちゃん」なんて名前をつけることも考えたが、結局はそんなありふれた、いったいこの世に何体いるのかわからないような名前に落ち着いた。




 そんな彼女も、うちに届いたばかりの頃は、こんな感じではなかった。


「こんにちは、クサカベ様。私は愛玩用オートマタ、タイプAー03です」


 多少カクついた音声でそう自己紹介しながらぺこりと一礼する、いずれ俺からアイと名付けられるオートマタ。

 仕事で疲れた俺に「お前もオートマタ買ってみたら?」と勧めてきた同僚に押されに押され、買ってしまったのだ。

 当然、まだギリギリ20代の俺にとって、そんな新発売のアイスみたいな感覚で買えるような金額ではなかった。だが、確かに恋人もいない、仕事もつまらない、平坦な人生。ほんの少しでも刺激があっても良いのかもしれない。と、そのときはなんとなしに思ってしまったのだ。

 結果として、ローンを組んで買ってしまった俺を、時間を遡って殴りたい。


 オートマタに搭載された人工知能、AIは、学習し、成長する。買ったときは当たり障りの無い行動しかしないが、買い手と生活を共にするに従って趣味嗜好を察知、学習、吸収、そして適応し、その結果出来上がるのは、買い手にとって理想の人格。すなわち、夢に望んだ理想の相手。

 残念ながら――いや、この場合、幸いにも、だろうか――これらオートマタには性的な機能は備わっていない。

 だが、家で自分好みの異性が嫌な顔一つせずに自分のことを待っていてくれる。それだけで、人間の心というものはこうも簡単に解きほぐせてしまうものなのだった。




 ……の、はずだが、おかしい。

 俺が買った愛玩用オートマタ、アイ。もう買ってから半年は経ち、一般的に理想の人格形成に必要な期間は経過している、はずだ。


「ただいま」

「おかえりなさいませ」

「はぁ。疲れ……。……なぁ。洗濯物くらい取り込んどいてくれよ」

「……すみません。完全に忘れていました」


 なのに、この体たらくだ。

 これが、俺の理想の人格? 相手に求める理想の対応? ……冗談じゃない。不良品だ。そうとしか思えない。

 ベランダに干されたままの洗濯物。朝、コーヒーを飲むために使ったマグカップはシンクに置いたまま。当然、家に入った瞬間に鼻腔をくすぐる良い匂い、なんて夢のようなこともなく、キッチンでは米粒ひとつ炊かれていない。

 てっきり、俺はオートマタを買えば冷えきった暗い部屋に帰る寂しさがなくなり、家事は肩代わりしてくれ、仕事で疲れた体を自宅でゆっくりと療養できるようになるのだと思っていた。


 なのに、何だこれは。

 ベランダに干されたままの洗濯物を取り込みながら、もう一度ため息を溢す。

 そんな俺の横では、


「いたっ」


 痛覚を感知する機能なんて備わっていないくせに、床に置いていたごみ袋に足を引っ掻けたアイが、そんな声をあげていた。


「……こんなところに置いておかないでください。躓いて倒れて壊れてしまったらどうするんですか」

「はいはい。悪かったよ」


 いやいや、おかしいだろ。

 これじゃあ前と変わらない。それどころか、「あれをやれ、これをやれ」と言ってくる口煩い存在が増えた分、悪化している気がする。

 何で俺がアイのためにこんなに細かく気を使わなければいけないんだ。


 なんて思いながらも、大人しくごみ袋を玄関のわきへと移し、置いておく。明日は燃えるごみの回収日だ。これなら忘れることもないだろうし、アイが躓くこともないだろう。


「それじゃあ、ごはんを炊いてください。ごはんは炊きたてが一番。私も、炊きたてのごはんの香りが大好きなんです」


 居間へと戻れば、そんなことを言われる。

 買ったばかりのときはご飯程度なら炊いてくれたりしたのだが、最近はめっきりだ。


「……はいはい」


 もしかして、俺が文句を言わないのがいけないのだろうか。そのせいで、今のアイの性格が出来上がってしまったのだろうか。

 ……とは言っても、たかが機械人形相手に、そんなに熱くなる気も起きない。

 でもこれじゃ、どっちがどっちの愛玩用オートマタかわからないな。


   ◇ ◇ ◇


「おぉい、クサカベぇ! お前、いくらなんでもこのミスは酷すぎるだろうがよぉ!」


 その日は、最悪だった。

 天気こそ良かったものの、それ以外はテンでダメダメ。何をやってもうまくいかず、ミスばかりだった。気が緩んでたわけではない、と思う。少なくとも俺は、いつも通りに過ごしていたつもりだった。

 いっそ、天気も悪くなれよ、と。どしゃぶりの雨でも降れよ、と毒づきたくほどの厄日っぷり。でも、会社の窓から見える空は、眩しいくらいに美しい夕焼けだった。こういうときに見る美しいものって、無性に唾を吐きかけたくなる。何でだろうね?


「……すいませんでした」


 他のことを考えていないと、頭がおかしくなりそうだった。

 どうでも良いことを考えながら、からっぽの頭を下げて、からっぽの謝罪を繰り返す。


「あのなぁ。お前入社何年目よ? まだこんなことも言わなきゃわかんねぇのかよ?」

「……すいませんでした」


 知らねぇことは、言われなきゃわかんねぇよ。

 そんなことも言わなきゃわかんねぇのかよ。ハゲ。


「はぁ。お前、これちゃんと1からやり直してから今日帰れよ」


 これから、やり直し……。

 さっき時計を見たとき、もう五時近くになっていたな。

 ああ、最悪だ。残業決定。ってか、何時までかかるんだよ。


「はい。わかりました」


 ほんと、最悪だ。


   ◇ ◇ ◇


「っっだぁぁーっ!! くそっ! わかってるっつーの!! 一生懸命やってるっつーの!! なのに何だあのハゲ!! オートマタに『いちごちゃん』とか名付けやがって、キッショいんだよ!」

「……酔ってるねぇ」

「クサカベくん、おさけ弱いもんね」


 同僚の二人が「手伝うよ」と言ってくれたお陰で、なんとか八時頃に仕事を終わらせることができた。そしてそのまま飲み屋にダイブ。ジョッキ一杯のビールを半分ほどあおり、机に叩きつけながら文句を大声で口にする。

 すでに顔がカッポカッポしていた。空きっ腹にビールを急にドン。これはいかんね。危険だ。


「……にしても、今日はらしくないミスが多かったな。……ん、まぁ、今は忘れて、とりあえず飲もうぜ。すいませーん、からあげひとつー!」


 同僚の男が、そう言って肩を叩いてくる。良いやつだ。オートマタに「りんごちゃん」とか名付けてかしづかせてるとは思えない。


「明日も仕事だから遅くまでは無理だけど、ちょっとなら私も付き合うからさ!」


 同僚の女がにっこりと笑ってそう言ってくれる。こいつも良いやつだ。今のスーツ姿からは、まさかゲーキチだとは想像できない。


「悪いなぁ、お前ら。ほんと、今日は助かったよ」

「ははっ、いいっていいって。ま、そのうち良いことあるって」

「そうそう。今日が最悪だったぶん、明日はきっと最高の日になるよ」

「……はは。そうだといいな」


 良いことって、何だ。

 最高の日って、何だ。

 ありもしない希望を掲げて前を向かせるなんて、無責任だと思った。


「……ありがとな、ほんと」


 そして、こんな良いやつらにそんな想いを抱く自分に、ぶっ殺したくなるくらい腹が立った。




「鍵……鍵……。あれぇ、どこ入れたっけな……?」


 ふらつく視界とぼやける頭。自宅の扉のわきに寄りかかって、鞄を漁る。

 参ったな、鍵がない。鍵がないと、家に入れない。これは困った。


 うとうとしながらそんなことを考えていたら、玄関の内鍵が開く音が聞こえた。そしてゆっくりと扉が開かれる。


「……おかえりなさいませ。今日は遅かったんですね」

「おおう、アイか。助かったよ。鍵が見つからなかったんだ」

「そうですか。無くしたのでなければ、落ち着いて探せば見つかりましょう。どうぞ、お入りください」

「ういうい」


 アイの隣を通るとき、俺の酒気を帯びた吐息を感知したのだろう、露骨に顔を顰められる。


「お酒を飲んでいるんですね」

「そうさ。お酒に逃げたんだ。大人ってのは良いご身分だ。こんな素晴らしい逃げ道が用意してあるんだからな」

「酔ってますね」

「酔ってちゃ悪いか」


 居間の床に寝転がる。


「もしかして、酔ったまま自転車に乗って帰ってきたんですか?」

「ああ、そうさ。チャリンコが俺のベンツだからな」

「……危ないので、今後は控えてください。あなたがいなくなったら、私はいったい誰をこの家で待っていれば良いんですか」


 何だ、その言い方。もう少し俺の身の心配をしてくれっての。……まぁ、いいけどね。

 ああ、いかん。転がってたら気持ち悪くなってきた。


「アイ、悪いんだけど、水を一杯くれ」

「……はい。わかりました。特別ですよ」


 この程度で何が特別か。とにかくキッチンに小走りで向かったアイは、やがてグラス一杯の水を持って戻ってくる。


「ただのお水ですよ」

「ただのお水が欲しかったんだ。ありがとう」


 グラスを受け取ったけど、うまく飲めなくて、数滴の水が床に溢れてしまった。

 寝転がったままなのだから、仕方ない。でも、頭が重くて、持ち上げるのが凄く億劫だった。


「……飲みにくそうですね。少しだけ、失礼します」


 見てられないとばかりに、俺の首の下に手を入れたアイが、頭を持ち上げてくれる。

 そしてすぐに、頭の下に挟みこまれた何かの、ふわりとした暖かい感触。見上げればアイの顔。これはまさしく膝枕だった。


「はい、ついでに飲ませてもあげますよ。今日の私は気分が良いんです。感謝してください」

「ああ、珍しいこともあるもんだ。ありがとう」


 少し頭が持ち上がったからか、それともアイのグラスを傾ける仕草が上手だったからか。やけにすんなりと水は俺の喉を通り、ひんやりとした心地よさで、気持ち悪さを追い払った。


 頭の下の人肌の温もり。

 わかってる。皮膚のような感触の物質と、絶えず発熱している機械の温度が人肌と錯覚させているだけだ。

 でも。それがわかっていても。

 どうしようもなく、その温もりは優しいものだった。


「……洗濯物。まだ取り込んでなかった」

「いいんです。私がやっておきますから。今日はもう寝てしまいましょう」

「……ほんと、珍しいこともあるもんだ。悪いな。じゃあ、そうさせてもらうよ」

「悪いと思うなら、早く寝て、さっさとそのみっともないお顔をいくらかスッキリさせてください」


 何という物言いだ。もう少し俺のことを優しく扱えないものだろうか。この不良品め。

 お酒の力に任せて、普段は言わないようなそんな悪態をついてやろうかと思った。けど、瞼が重くて重くて。アイの膝枕の上で、俺の意識はあっという間に微睡みの底へと沈んでしまった。


「……おやすみなさい」


 アイのその一言は、やっぱり機械らしく多少カクついていたけども。

 いやに素直に、俺は安らぐことができた。




「……おはよう」

「おはようございます」

「洗濯物、入れといてくれるって言ってなかったっけ?」

「そのつもりでしたが、誰かさんが私の膝の上で眠りこけたので、動くに動けませんでした。すいません」


 そこまで言ったなら、申し訳程度の「すいません」なんて付け足さなくても良いのに、と思ってしまう言葉が返ってきた。


「……はぁ。悪かったよ」


 結局いつも通り。

 俺は文句を言えず、言わず、自分で家事をこなすのだ。


「……いくらかスッキリしたお顔になりました。多少はむくんでいますが、昨晩に比べたらとってもマシです」


 ため息を溢す俺を見て、アイは言う。


「昨日は厄日だったんだ。あの醜態も許してくれ」


 何だか急に恥ずかしくなってきて、俺は機械相手に許しを乞うた。少しして、何をやっているのだと冷静になったけども。


「でしょうね。気丈に振る舞っていましたが、今にも泣き出しそうだったのが、私にはお見通しでした」

「なっ――!?」


 泣き出しそう、とは。そこまでじゃなかっただろう! と反論しようとしたが、それはそれで必死さが滲み出て、図星ですと告白するようなものかもしれない。

 なので俺は、いつも通り飄々とするアイを少しだけ睨んで、それからもう一度、ため息を溢した。


「……今日は、良いことあるかな」


 そしてふいに飛び出た、そんな一言。

 俺は機械相手に何を、と瞬時に思ったものの、一度口から出た言葉はもう二度と戻すことは出来なかった。

 だが、アイはそんな俺の姿を笑うでもなく、はたまた優しく慰めるでもなく、


「……ある、とは言い切れませんね。あるかもしれないし、ないかもしれません。もしかしたら、昨日よりも最悪な日になる可能性だって、ないわけじゃないですよ」


 と、ただただ淡々と事実を口にした。


「……手厳しいな、アイは」


 アイのその言葉に、苦笑が漏れる。

 アイらしいな、とも思うし、もう少し慰め方を学べ、とも思った。

 昨日よりも最悪な日。最悪の最悪。言葉としてはおかしいが、それがどれほど最悪か、なんとなく想像できた。そして想像して、憂鬱な気持ちになった。

 三度目のため息を溢しそうになった俺だが、しかしそんな俺をアイはじっと見て、


「でも、きっと、そんなものなんだと思います」


 と、付け足した。


「……そんなもの?」

「はい。きっとみんな、そんなものなんです」

「……そか、そんなもんか」


 そんなもの。アイはそう言った。

 それは、慰めにもなっていない、ただの事実だった。

 だが、不思議とその言葉は、同僚たちが口にした希望の言葉よりも、とても素直に、自然に、俺の心に沁みこんできた。


 そしてそのときになって、俺ははたと気付く。

 アイはいつも、なんだかんだと理由を付けて、俺に家事をやらせる。

 でも、俺は不思議とそのことを好ましくは思わずとも、疎ましくも思わず。なんだかんだと、仕方ないなあと思って許容している。

 今回の物言いだって、そうだ。アイは俺を慰めようなんて雰囲気をおくびにも出さず、けれど的確に、俺が素直に納得する言葉を口にする。


 そうだ。これはきっと、アイなりの――ぜんまい仕掛けの彼女なりの、俺への愛なのだろう、と。


 考える。俺はアイがいなくても、果たして毎日ごはんを炊き、しっかりと食事をとっただろうか。ごみをまとめて、決まった日に出しただろうか。面倒くさがらず、洗濯物を取り込んだだろうか。

 きっと、否だ。俺はそんなに自分のために頑張れるような、出来た人間じゃない。「困るのはお前なんだぞ」という言葉に、「じゃあ、別にいいじゃないか」とすら思うような、そんな人間だ。

 きっと、アイがいなければ、俺はシャワーを浴びるのすら億劫に思っただろうし、しわくちゃのシャツだって気にせず着てしまうような、そんな自堕落な人間になっていただろう。


 奇しくも、アイのわがままによって、俺は人間足り得る場所に留まって居れたのだと、遅まきながら気付いた。


 思わず笑ってしまう。もっとやり方だってあるだろうに。どうして行き着いた答えが、そんなわがままな態度なのだと。


 ほんとうに、どうしようもない、愛すべき不良品だ、と。


 アイは、突然笑い出した俺をおかしなものを見るような目で眺めながら首を傾げた。だがすぐに気を取り直したように、手を打ち鳴らす。


「さぁ。まだ出勤までには時間があるので、今のうちにお米を研いで、ごはんを炊きましょう。朝は一杯のごはんから。私はそんな朝が大好きなのです。そしてごはんが炊けるまでのうちに、シャワーを浴びましょう。そうすれば、そのむくんだお顔も見れる程度には治まります」


 俺にそんな指示を飛ばしたアイは、しかし自分は腰を下ろし座布団に座ると、テレビの電源を付けた。


「私はその間、あなた好みの番組を探しておきますので」


 どうやらそれが、アイの仕事らしい。


 なんじゃそりゃ、と思う。

 だけど、今日も今日とて俺は、


「はいはい」


 と大人しく言うことを聞いて、そして過ごしていく。

 きっと、俺が人間であるから、そしてアイが機械人形であるから成り立つことができる、この歪みきった心地よい生活を。

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ぜんまい仕掛けのアイ くーのすけ @kit1210

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