第25話 付き添い人たちへの心苦しさ

ガンセンターへの診察は家族同伴で行くように言われていたので

夫に仕事を休んでもらって一緒に行った。


けれど病院についてから夫は、電話をしに外に行っている姿を見て

私は病気の事なんかより、夫に仕事を休ませてしまったことが

申し訳なくて、申し訳なくて居たたまれないような気持ちになっていた。


というのも診察日の少し前、夫から

後どれぐらい会社を休まなければいけないか

休みが続いたら今のプロジェクトを外されてしまう等


私が夫が休んでくれるのを当たり前と思っているように感じたのだろう

私に本当はもう休めないぐらいの状態なんだ、というのを伝えたいのだろうと

感じられる話があった。


もちろん私は夫がいくら私が病気だと言ったって

休むのが当たり前なんて思っていない。

私のことはいいから、休まないで仕事に行ってほしいと言うべきだと思っていた。


けれど入院中に、優しい夫につい甘えてしまったのだ。


夫が普段から深夜帰りの忙しい職種であることは重々分かっている。

体調崩したって休んだ事すらない夫。

そんな夫に休んでもらうことが、どんなに大変なことか分かっているはずなのに

甘え続けてしまったことで、夫は私が何も分かっていないと思ったのも無理はないことなのだ。


夫だって、わざわざ私にもう休めないことを言いたくなかったと思う。

夫は決して非情な人ではない。

仕事柄、当たり前なことなのだ。


だからこそ無理を言って今回の診察に付き添ってもらったことに

とても罪悪感があった。


「付き添いはいいから、今からでも仕事に行って」


と言えたらどんなに楽だろう。


近くには身内がいないので夫しか付き添ってもらう人がいない。

それでも夫にこれ以上休ませるわけにはいかないので

実家の父親を呼ぶ事にしていた。


ところがそれも簡単では無かった。

というのは、父は今年定年で後一ヶ月で仕事が終わりになるのだ。


一ヵ月後に来てもらう際には、さほど気を使わなくてもいいが

この時点だと下手したら定年前に中途半端に会社をやめさせてしまうかもしれない。


夫も休めせられないが、父の退職日も不本意に早めさせる事は出来ない

この日の診察だけは夫にまたまた甘えてしまったのだった。



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