怪しい道行き、時雨て行かば
夏みかん
お元気ですか?皆々様。
昼に、弁当屋にて焼肉弁当、から揚げ弁当を二つ買った。
車を降り、「ここで受け取ります」とにこりとすれば、途端量を増やしてくれた。女人とは斯くも優しいものだ。
その日食べたから揚げの味が忘れられない。
病院で「肝臓の数値がやや高くなりましたね、まあ気にするほどじゃないですよ」と言われ、「猫背だからかなあ」と言えば、くすっと笑える空間になった。
ほのぼのとして病室を立ち去る。
持病はまだまだ、先が長いようで。
さて、その日の夜に、しみじみ考えた。
丹波の自然など見て、山々の紅葉にいたく感激する心境にて、私の不届きものたる所以の病ならざる人柄の悪さなどについて、周囲から買う顰蹙などについて。
私はも少し、生き方を考えた方がいいんでないか。
そうして寝ていたら、誰かのアイスを食べる際のカッという幸福な音や、さかんにエンドオブカウントダウン、と歌うロッカーの優しい歌など、さんさんと聞こえてきて、私は「病は気から」という言葉を実感した。
それから力を得るべく、こうして起き出して書き出した次第で、さて天国に行ったら何をしようかと考え、それまでの人生だ、整理整頓していかなくては、と簿記の勉強をしていたのを思い出し、あるいは「自分のことくらい、自分でやれ」という誰かの言葉を思い出した。
整理整頓して生きる。これに限る。
私は私という一人の人間が出来得る事について思いを馳せた。
そうしてSNSに「嫌なら参加しなきゃいいのに」と思えなくもない呟きをしてから、無駄にその場を混乱させ、それから世を儚んで眠りについた。
夢の中で、昔住んでいた家がしきりに私達を呼ぶのだ。
また住んでおくれよう、と。
庭で犬が跳ねて遊ぶ。
そうして私たちはどこへ行ったかと、「?」と首を傾げて家の中をうろうろしてはキューンと鳴く。
そうだあの家を買うのだと、私は再び簿記ノートを開いた。
或いはあの子は、今も隣にいるのか、それとも空の上にて、もう生まれ変わっているのか。
そうだとしたら、これから生まれる命たちの何とも言えない愛くるしさよ。
私は新しく来た赤ちゃんたちを、再び可愛がる覚悟を決めた。
そうして次の世代に引き継ぐまでに、父の仕事をどうにかせねばと、来る越冬に向けて本格的に乗り出した。
私は生涯かけて家族を助けるだろう。
それから静かに終わりを始める。
如何に静かに終えるか、それが問題だ。
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