女盛り25歳、冬眠中

Zukin

第1話 ただいま

2016年3月31日


この日をもって一年間の休職が決まった。


絶望でしかなかった。


絶望の果ての心は無であった。






実家での療養生活が始まる。

職場は関東、実家は東北である。


最寄りの駅から実家まで約20分。


「寒いから早く家の中に入りたい。」

最早、私の脳ミソは本能的な思考のみだけ機能していた。

冷たいドアに手をかける。しかし、開かない。

あ、そうだ。鍵がかかってるんだ。

実家の鍵は、今は津波に流されてなくなってしまった本籍地である家と同じ方法で隠してある。

懐かしいなあ…。そんなことを思いながら鍵を発見する。

ああ、やっと家に入れる。ひと安心した。夜行バスから電車に乗り継いで徒歩20分、体は言わずもがな疲弊している。しかし、鍵が合わない。どういうことだ。家に入れない。

力づくで鍵を回そうとしても、水に濡らして差し込んでみても、暖めても鍵は回らなかった。何故だ。分からない。


家に入れないまま、一時間が経過していた。

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