星のクーたん

ジェニュイン黒田

第一章 遭遇

第1話 今はとても小さくて曖昧な世界



「お別れしなくちゃならないんだ。」




第一章 『遭遇』 




 いつなのかわからない時、どこなのかわからない場所。たぶん小さな星の小さな国なのだろう。たぶん小さな町の小さな家なのだろう。 


 懐かしいといえば懐かしく、新しいといえば新しい。このなんとも曖昧な世界は、今はとても小さくて、そしてどこか優しい。


 その小さな家の中に、白くてもこもこしている何かが住んでいる。マシュマロみたいにフワフワで、さわればときっと柔らかい。


 頭から二つ伸びている、みょーんと長いものはたぶん耳で、常にひくひくと敏感に動いている。


 小さな家に住んでいるその何かは、おそらく私たちの世界の言葉で表現すればウサギと呼ばれることになるだろう。


 テクテクと二足歩行をしていることに目をつむりさえすれば。


 その、とりあえずはウサギと呼ぶのがふさわしいであろう生き物は、イスに座って、ほおづえをついている。テーブルの上のマグカップの中には茶色くて良い匂いのする飲み物が入っている。どうやらココアのようだ。この不思議なウサギは甘いものが好きらしい。


 ウサギが窓から外を見ると、今日も雨が降っていた。ウサギは大きな雨粒が小さな家の屋根を打つ音に耳をピクピクさせている。


 庭に植えてある大きな木の葉っぱが雨に打たれている姿は、どこか泣いているようにも見え、ウサギは悲しい気持ちになってしまう。


ウサギ「雨は嫌。」


 ウサギはポツリとつぶやいて、ため息をつく。ここのところ、ずーっと雨。考えてみると、その前の日も、その前の前の日も雨だったような気がしてくる。ウサギは自分は一体いつからこの家から出ていないのだろう、と心配になった。


 時折ゴウッと強く吹く風の音があまりにもウサギを不安にさせるので、ウサギは今日も途中で考えることをやめて、おふとんを頭にかぶって寝てしまった。


 昨日はいつ終わり、今日はいつまで続いて、明日はいつから始まるのだろう。そんな当たり前のことすら今は必要としていない、とあるウサギの出会いと別れのお話。

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