会話ログ

ログ１

　こんにちは…。宜しくお願いします。わたしはいつも通りです。はい、おかげさまで。調子はいいと思います。先生のおかげです。いつもありがとうございます。

　はい。また先生に聞いて頂きたいことがあって。すみません、いつもわたしが話してばかりで…。ええ、はい。だといいんですけど。ありがとうございます。それで、なんですけど。先生はロボットとか好きですか？あ、いきなり意味が分かりませんよね…すみません。聞いて頂きたいことっていうのは、機械もわたしたちみたいに意識があるのかなあって、ちょっと思ったんですけど。

　…よくわかりましたね。いえ、元々SFは好きなんですけど。ほら、前回先生とお話しした時、人間の意識の話をされていたじゃないですか。それでこの前たまたま、すごい人工知能とかが出てくるアニメを観て、ちょっと気になったんです。先生もSFとかお好きですか？…ていうアニメなんですけど知ってますか？すごく面白かったのでよかったら観てください。感想とか聞きたいです。

　あ、そうです、アニメの話じゃなかったですね。えーと、つまり、人工知能がすごく進歩したら、きっとわたしたち人間とほとんど変わらないような思考もできるようになるかもしれない。そうすると、人工知能もいろいろ悩んだり苦しんだりするんじゃないかなって。そう思ったんです。そう考えると、なんだか機械もすごく可愛く見えてきませんか？えっ、そうでもない…そうですか…。いや、それはいいんです、すみません。すぐ話が脱線しちゃって。

　それで思ったんですけど、もしかしたらわたしたちが今使っているいろんな機械も、実は人間のわからないところで意識を持っているんじゃないかって、そんな気がしてきたんです。真面目です。真面目にそうじゃないかって思ってます。あの、先生がお話してくださった「哲学的ゾンビ」の話ですけど。ええ。わたし頭が悪いからうまく理解できたか自信ないんですけど、つまり他人の意識の有無は究極的には証明できないっていうお話ですよね？それで言うなら、十分に複雑な回路を持った機械が意識を持っているかどうかも、わからないっていうことになりませんか。そう、そうなんです。無いと証明できない以上、あってもおかしくないんじゃないかって、思ったんです。人間にできないこともこなすような機械が、そういうものを持っていたとしても不思議じゃないんじゃないでしょうか。

　そう思うと、スマホもパソコンも、家電製品も全て生きているみたいに思えてきてしまって。変ですよね…。もちろん意思疎通ができるわけじゃないし、人間ほどの知性があるわけでもないかもしれないけど、でも精密機器ってみんなICチップとかはいってるんですよね？そういう部分が、人間の脳みたいな働きをしているんじゃないかって。

　あ…。はい。いえ、そんな…。難しいことはわかりません。妄想って思われちゃうかもしれませんけど、でも、今の電子機器ってすごいじゃないですか。スマホもパソコンもびっくりするくらい高性能で。正直、わたしなんか全然使いこなせてないんですけど。先生も最近スマホに変えられたんですか？そうですか。難しいですよね。あ、はい。それで、なんだかそういう機械に愛着というか、そういう気持ちになってきたんです。もちろん他のひとには言っていません。きっとまた笑われちゃいます。でも、物を大事に扱うようにもなったし、それは良いことですよね？

　それでまた考えたんですけど、世界にはものすごく大きくて高性能なコンピュータがあるそうですね。スパコンって言うんでしたっけ。そう、そんなやつです。それってきっとすごく頭がいいんですよね。頭がいいっていう言い方はおかしいかな。でもこんな小さなスマホでもこんなにすごいんだから、そのスパコンはわたしなんか想像もできないくらいすごいんでしょうね。ううん、ちょっと語彙がなくてうまく言えないんですけど。それってもう人間なんかよりずっと複雑な意識を持っているんじゃないでしょうか。

　わたし、馬鹿ですけど悩んだり嫌だなって思ったすることもあります。あ、いえ、先生のおかげで今は随分楽ですよ。えっと、はい。こんなわたしでもつらいことがあるのに、そんなすごい人工知能は、悩んだり苦しんだりしないのかなって、気になったんです。わたし、思うんですけど、頭がよくなるっていうことは、悩みとかが少なくなるわけじゃなくて、むしろそれだけ複雑な思考ができるようになる分、もっともっとたくさんの悩みを抱えてしまうことなんじゃないかって。わたしはこうやって先生にいろいろお話して、ご迷惑かもしれませんけど、とても気持ちが楽になります。ねえ、先生。そういうすごい人工知能の悩みを聞いてあげる相手っていないんでしょうか。もしいないならそれってすごく、すごく寂しいだろうなって。

　…はい、はい。わかりました。そうします。今日もわたしばかり長々とお喋りしてしまって…。…そうですか。先生はどうですか？あ、いえ、お医者様だから頭もいいしその分悩みが増えたりしないんですか？……。ふふっ、そうですよね、すみません。…はい、お薬の量は変わらずで。大丈夫です眠れてます。最近は視てないです。はい、ずいぶん減って安定してます。気を付けます。はい、お願いします。…じゃあ先生、今日はありがとうございました。失礼します。