Story07 《本から学ぶこと》
――光が眩しい。
窓から射す太陽の光が、瞼の裏からでもよく分かる。眠気の余韻を払うように、俺は目を擦りながら開いた。
「夢じゃなかった、か……。」
ふと呟く。昨日のことが全て夢だったんじゃないかと期待したが、そんなことはないようだった。昨日見た通りの木造の宿が眼前に広がっていた。
一つあくびをして、俺は布団から出た。朝は弱いほうなのだが、かなり長く寝てしまったようなので割とスッキリしていた。部屋の外に出たところで、隣に朝食の乗ったお盆があることに気が付いた。
何の卵なのかは分からない目玉焼きを数十分で食べ尽くし、俺は足早に宿屋を出た。今は7時30分より少し前くらい。
ちなみにこの世界でも一日24時間らしい。しかし一年は12か月の全30日区切りで360日だ。
さっきカレンダーのような表を見たが、今日はミルハの月24日らしい。月の名前が分からなかったので順番から数えてみると、現実でいう6月に当たることが分かった。だから今は6月24日。
俺は一週間宿屋を借りたので、丁度7月1日までは借りられるということか。ミルハの月中に、やれるだけのことはやっておこう。
俺は今、宿屋前にあった案内板の前に立っている。まだ
目的地がそれほど遠くないことにほっとしながら、俺はそれのある方向に歩き出した。
おおよそ10分歩いて、目指していた場所に到着した。
図書館。この何も分からない世界で、最も重要と言っていいのは知識だ。ここで魔物と戦わずにレベルを上げる方法を探す。
俺は現実では図書室に籠ってラノベを読んでたような奴だったんだ。図書館なんて大好きさ。
大きな扉を押し開けた先には、巨大な空間が広がっていた。
しかし、そこに並べられた無数の本棚のせいで逆に窮屈な印象を受ける。
それが図書室を好きな理由の一つでもある。なんとなく本などに囲まれていると落ち着くのだ。現実とはあまり変わらない図書館を見渡していたら、入口付近で本を整理していた女性店員と目が合った。
「何かお探しですか?」
本の在処は質問するのが早いだろう。できるだけ違和感がないように気を付けつつ、俺は口を開いた。
「えっと、戦闘レベルの上げ方について書かれた本を探しているんですけど……」
最初は首を傾げていた店員だが、俺の左腕の腕輪を見た途端に納得したような表情に変わった。
「冒険者の方だったんですね。それなら、ここを右に曲がって突き当たりの本棚ですよ」
冒険者?この腕輪ってその証みたいなもんなの?
と聞けるわけもなく、それは後で調べればいいだろうとたかをくくって、お礼を言ってから指された方向に歩きだした。
指定された本棚には、やたら分厚い本がずらりと並べられていた。
そしてそれの端に、【冒険者強化指南書】なる本があった。
これだと思い、取り出してページをめくってみる。すると予想通り、戦闘レベルの上げ方という文字列が目次に書いてあった。27ページだ。
俺はそこを開き、概要を見た。
“戦闘レベルを上昇させるには、自身の身体、またはそれに接触しているもので生物を絶命させればよい。それ以外の方法は発見されていない”
まじか、やっぱり肉弾戦やんなきゃレベルは上がらんのか。
絶望していると、端に書いてあった文字に気がついた。
“ただし、戦闘レベルを上げずとも創作レベルを上昇させることで、自身の強化は可能である”
なんだとっ!?俺は素早く目次に戻り、創作レベルのページを探す。31ページ。俺はすぐにそこを開いた。
“創作レベルは、自身が調合、錬金等でアイテムを作成することで上昇する”
なるほど、戦えない人のための救済処置みたいなものかな。俺は次いでアイテム作成のページを開く。67ページ。
“作成物に適したスキルを所持する者が、下記の魔法を唱えると生成される球体に、特定のアイテムを加えることで別のアイテムが生成される現象である――”
数時間後。
「この葉とこの水、100個ずつください」
「100個!?友達と打ち上げでもするのかい、それとも調合師になりたいのかな?」
「まあ、後者ですね」
かなり大きめの袋に購入物を入れてもらい、俺はそれを持ってふらふらしながら宿に戻った。
図書館を出たあと、案内板で確認した道具屋で買い物した後は、もう外は暗くなりかけていた。1日のほとんどは本を読んでたね。
自室に到着し、袋を降ろす。ほんとに重かったけど、草100枚と水瓶100本入っていることを考えたら物凄く軽いし小さい。魔法でも掛かってるのかな。
俺は図書館で、どうすれば強くなれるのか、そのためには何が必要なのかを調べ尽くした。先程買ってきた道具は、強くなるための下準備。
明日はきっとレベル上げをしまくることになるだろう。今日はもう寝る。そして明日早く起きて作業しよう。
戦闘レベルは上げられないと聞いて絶望したが、別の方法を見つけた。とうとう強くなれる。明日が楽しみだ!
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