30、入り口
「ウィンディ!」
屋敷に乗り込んだミシェルは叫んだ。
しかし、ウィンディからの返事はなく、代わりに返ってきたのは銃弾の雨だった。
「ちっ!」
ミッシェルは一身を翻すと柱の陰に身を隠した。そっと様子を伺うと5、6人が、机や木箱を積み上げてバリケードを築き上げてあった。正面の階段の踊り場にも兵士が陣取り、ライフルを構えている。
敵は攻撃の仕方を明らかに変えてきていた。
それまでは、タフな身体をあてにして撃たれるのも顧みず突っ込んできたのが、今では遮蔽物に身を隠しながら銃撃してくる。
そのおかげでミッシェルはこれ以上、進めない。
「降伏しろ! 大人しく投降すれば命は助けてやる!」
南軍の兵士たちが叫んだ。
嘘だな。
ミッシェルは思った。
シリンダーに残る弾数を確認したあと、もう一度、様子をうかがう。
ほぼ同時に柱に弾が撃ち込まれた。細かな木片が周囲に飛び散る。
階段の踊り場にいる狙撃手がライフルの弾を再装填した。
容易い相手ではない。
弾もだいぶ減った。ミッシェルは焦り始めた。
「くそっ!」
そのときだ。
屋敷の壁が吹き飛んだ!
爆風と破片が周囲に飛び散る。
「コール!」
壁に開いた穴からコールとダイナマイトを持った教授が入ってきた。
「これは派手ですな」
煙にむせながら教授が言った。
「教授、あいつらにダイナマイトをくれてやれ」
「わかった!」
カッシング教授は、突然の爆発に驚く吸血鬼の兵士たちにダイナマイトを放り投げた。宙に飛んだダイナマイトが壁に隠れた吸血鬼の足元に転がる。コールはそれをライフルで撃ち抜いた。隠れていた吸血鬼たちは壁ごと吹き飛んだ。
爆発の粉塵に紛れて柱の陰から飛び出したミッシェルは、踊り場の兵士に狙いをつけた。相手もそれに気づき、狙いをつけなおしたが、先に引き金を引いたのはミッシェルの方だった。
聖弾で撃たれた狙撃手は、その場で灰になった。
ダイナマイトをもう一本爆発させた後は銃声はしなっていた。
周囲を警戒しながら様子をうかがうミッシェル。
どうやら敵は逃げたか全滅したようだ。
「片付いたようだな」
ライフルを構えながらコールがそばに来た。
「遅いよ!」
ミッシェルがコールに向かって言った。
「お前が先を急ぎすぎなんだよ。で、ウィンディは見つかったのか?」
「いや、まだ。けど、この先を進めばきっと……」
「地下を探しましたか?」
教授が言った。
「何?」
「地下です。やつらは、暗い場所を好みます。地下室があればきっとそこを寝床にするはずです」
「地下か……」
ミッシェルは、屋敷の中を見渡した。ダイナマイトの爆発で所々壊れてしまったがそれらしい出入り口は見えない。
「戦時中、黒人奴隷を隠したり、逃がすための地下道を作った農場主もいたそうだ。当然、目立たない場所に作っただろうが、日常的に使うなら、出入りしやすいところに作り直しているだろうな」
コールはそう言って、屋敷の奥へ進んだ。ミッシェルが後をついていく。
「ようするどうだってんだよ」
「だからさ……改築しているなら、そこだけ新しいってことさ」
そう言ってコールは、壁側を丹念に調べながら歩いた。
途中、ずれた継ぎ目を見つける。指を近づけてみると微かにひんやりとした冷たい空気を感じた。
コールはそこをライフルの台尻で思い切り突き叩いた。
壁を突き破ると空洞が見える。
「
コールとミッシェルは、壁の中を覗き込んだ。
中には深い闇が延々と続いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます