もう一隻の幽霊船
11-1 憂鬱な海にて
霧立ち込め暗い海
その先に、彼はいた。
また海が騒がしいな……
彼は思った。
彼は何年もの間、できるだけ他の船に出会わぬようにしていた。
だが、このところこの海域では船の往来が以前より多くなっている。それだけ船に会ってしまう確率も高くなっていた。
航路も選んでいたはずだが、それでもこんな日があるものだ。
四十m級の船と百m級の船が彼の船から極めて近い位置にいた。
聞こえてくる音からすると何らかの戦闘がおこなわれたようだ。
しばらくすると小さい方が方向を変え海域から離れていこうとしている。恐らく大きい方が勝利したのだろう。
それにしても彼らは随分と近い距離で戦闘をするものだな。
あんな近距離での戦闘をしなければならない兵器では相手を沈めるのも難儀だろう。
彼はそう思いながらその海域を離れようと舵を切った。
その時、彼は気がついた。
何かが……いや、誰かが海面に浮いているのを。
* * * *
身体がとても冷たい。
どうやら海に投げ出されたらしい。
私はどうなってしまったのだろう……
気がつくとラヴェリテは偶然流れていた木の板に無意識でしがみつき冷たい海を漂っていた。
身体を安定させようとラヴェリテは、板にしがみつき直した。
ふと、板に何か文字が描かれているのに気づく。どうやらラヴェリテの掴まっていたのはどこかの船の残骸らしい。もしかしたら幽霊船に襲われた他の船の破片かもしれないとラヴェリテは思った。
冷たい水に浸かりながらラヴェリテは、破片に描かれた文字を読んだ。
「ラングドッグ……」
そこにあったのは”ラングドッグ”の文字だった。
「ラングドッグ号の船体の……お父様の……」
薄れていく意識の中、何かが近づいてくるのが見えた。
疲れ切って虚ろな目で、それを見つめるラヴェリテ。
聞いたことのない妙な音がする。
すると何かが自分に触れた。それは人の手や網などでななく何か固いもののようだ。
自分の身体が持ち上げられていくのがわかった。どうやら誰かが海から引き上げてくれているらしい。濡れた身体に風が当たるのも感じる。
「助かったんだ……」
ラヴェリテの意識が再び、遠のいていった。
そして、次にラヴェリテが目を覚ますのは彼女が思いもよらない場所だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます