第77話 逆転
「おう。そうだったぜ。おいガキ、全部で何人だっけ?あー、五人か?そうだよな?その五人を返せ。それでお前をぶっ殺せば仕事は終わりだ」
なんだこいつは?あんな立派な図体してて実はまだ生まれたばかりの赤ちゃんとか?こんなのと話なんかできないぞ。
「バカネコ。そんな言い方でガキが言うこと聞くわけないだろ。おいガキ、今のは忘れてくれ。そしてそこのバカネコの話はもう聞かなくていい」
「なんだとこの緑。バカネコって誰のことだ?俺のわけねぇからあっちの女のことか?ハハハ、バカはお前だ!あの女どう見ても人族じゃねぇか!」
「ガキ、バカネコは放っておいて話を進めるぞ。まずお前が捕らえている五人を返してもらう。そうすれば我々はそのまま帰る。返さないというならお前らはここで殺す。ここまでで質問は?」
「ない」
「よし。でお前が五人を返した場合だが、我々が帰ったあとでお前には追手がかかる。また私達がくるかもしれないし、別のヤツかもしれない。とにかくお前らはその時死ぬことになるだろう。何か質問はあるか?」
「つまり今すぐ死ぬか、あとで死ぬか選べってことか?」
「そうだ」
「今すぐ俺が殺された場合、五人は戻ってこないがそれでもいいのか?」
「仕方がないからな。五人はすでに殺されていたと報告する」
「この場は引くという話をどうやって信じろと?」
「知らんな。勝手にしろ」
ヤル気満々ってことか。またまた「自宅」依存のお時間だ。ネコの方が戦闘要員っぽいからあちらからだな。
「自宅」発動!ってオイオイオイ!!
ネコはいきなりサイドステップで横に移動した。「自宅」がかわされた!もう一度発動!ダメだ!全部かわされる。移動先に発動し直してもネコの動きの方が速い。
「緑!三人とも殺していいんだよな?」
「ああ。仕方ないからな。早くしろ」
マジでやばいぞ!「自宅」の盾も通用しないだろう。やばい!やばい!やばい!空中に「自宅」発動!
「全員今すぐ出ろ!」
叫ぶとヤツラは我先にと出てきてくれた。ラッキーっす!出てきてくれないとマジで終わるところだった!「自宅」を足元に!ママさんとモリカも一緒だ!
腰まで沈んで・・・ネコが速い!突っ込んで来た!ネコが剣を振り・・・俺は短剣と左腕で頭をガード。グッ!熱ッ!そのまま「自宅」に滑り込んだ。
なんとか「自宅」に逃げ込めたが左腕は肘から先が斬りとばされた。吐きながら呻く。丸まって悶えている俺のところにママさんがきて治癒魔法を使ってくれ少しだけ楽になった。
「キーン君、私の治癒魔法では腕の再生まではできないわ。切られた腕があればどうにかなると思う。切られた腕はどこ?」
「ママさん・・・腕は・・・だめです」
「そう。ならこのままの状態で傷を塞ぐわよ?」
「お願いします」
ママさんの魔法によって腕の痛みはどんどん消えていく。あぁなんとか助かったか。ネコの剣を完全とは言えないまでも防げたのは偶然だ。腕くらいで済んでよかった。ママさんがいなかったらやばかったな。
「キーン大丈夫?まだ痛い?」
モリカが優しく声をかけてくれる。大丈夫じゃないよモリカ。腕がなくなったんだぜ?痛みはもうないけどね。八つ当たりしてる場合じゃないな。
「大丈夫だよ。もう痛くない。悪いけど少し寝るよ。ここはとりあえず安全だから二人も休んで・・・」
「キーン君。目が覚めた?顔色悪いけど大丈夫?お水飲む?」
ママさんから水筒を受け取って水を・・・って左腕がないから水筒のフタがうまく開けられない。ママさんが気づいて開けてくれた。
「僕が寝てからどれくらい経ちましたか?」
「二刻も経ってないわ。キーン君大丈夫なの?」
「キーン、顔が真っ白だよ。大丈夫?」
「はい。ちょっと疲れただけです。あれ?なんかすごくにおいますね」
「えぇ。あれが原因よ」
ママさんが示した先には汚物がこんもりとあった。
ここに転がりこんできた時には気づかなかったがあれはニセ親玉達のやつか。体調もあんまりよくないのにさらに頭が痛くなるよ。
「アレを捨てて空気を入れ替えたいところですが、外ににおいが漏れてしまうのですみませんが我慢してください」
「自宅」の空気は無くならないようなので、酸欠で死亡なんてことにはならないだろう。ただにおいで頭が痛くなるだけだ。
「ここは、この部屋はキーン君の魔法なの?」
「そうです。ここなら外からは誰も入ってこれません。ただ外にはまださっきのヤツラがいるかもしれないので出れもしません」
食料はともかく水の残りはそう多くない。俺達に見切りをつけてヤツラがをさっさと別の場所に行ってくれればいいのだが、あまり期待はできないな。
ナナシは執念深そうだ。精霊女の魔法もある。ちらっと聞こえた会話からすれば魔法でこちらの位置が分かるっぽいから逃げてもあまり意味がなさそうだ。
リアルガチでやばいっす。これはもう必至というやつではないだろうか?必ず至るんだよ。でもそれってどこへ?どこだろう?いきなりの死?監禁?洗脳?
ナナシは実は天使で俺を夢の国に連れて行ってくれるということはないだろうか?そこでは一年中きれいなお花が咲いていて、鳥達が歌い、飢える者も泣く者もいない。神様の掌で遊び、笑い、眠る。そんな場所に連れていかれる可能性はないだろうか?
うん。ない。そうだよね。あるわけない。我ながら気持ち悪いな。笑えない現実逃避ではみじめな気持ちになっちゃうだけ。
「モリカ。精霊族の女の人が来たよね?どうやらあの人が僕達の居場所を見つけたみたいなんだ。うんそう、多分魔法だね。モリカはそういう魔法に心当たりないかな?見たり聞いたり使ったりしたことはない?」
あれをどげんかせんと逃げようにも逃げられない。モリカの経験にすがり付いてみよう。「気配察知」ってことはなさそうだけど・・・知ってるかな?
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