第34話 新技なし

夕食を食べてから部屋に戻り授業の復習をしながら新しいスキルについても考える。ジャンピング土下座はたしかに強力なスキルだ。しかし強力ゆえその発動には一定の条件がかかる。使える時と場所がかなり限定されてしまうのだ。


しかもこのスキルは受身、またはカウンター技というくくり。それ単体で主導権を握れるというものではない!主導権、そして先手を取るためのスキルが欲しい・・・何かないのか?


クソ!これではいつまで経っても防戦一方。とてもじゃないが攻めることなんてできないぞ!今日準備不足で殺されそうになったのをもう忘れたのか!


しかし簡単に新しいスキルを思いつけるはずもなし。まずはなんでも思い浮かぶものから順次採用不採用を決めていこう。


パッと思いつくのは時間稼ぎ用のスキル。単純だけど"聞こえないふり"をマスターすれば多少の時間稼ぎにはなるだろう。同じように泣いてるふり、急にお腹の具合が悪くなったふり等々もある。うん、悪くない。採用。


しかし・・だ。やはりこれらも防御型のスキル群。もっと真剣に考えるんだ!キーン!前世の知識、ファンタジー物の定番などから何か探せ!堂々とパクってしまえ!何も恥ずかしいことなんてないぞ!命が懸かってるんだからな!


一発逆転の大技。多大な消耗を強いられても、その分強力な手札!攻めるんだよキーン。イメージしろ!それを使って敵を圧倒するその光景を!


これ・・・もう・・・金を・・・金を積むしかないのか?


キャッシュを積む・・か。それをすれば主導権は握りやすいだろうし、黄金のパワーで敵を圧し潰すことができる。これほどの鬼札、是非とも手に入れたいところではあるが・・・今の俺の資金力ではこのスキルを運用するはむずかしい。


でもあれだぜ?使い続けてレベルが上がれば、倍プッシュなんてコンボ技も使えるんだぜ?今は夢のまた夢だが、いつかは手に入れてみせる。とりあえずこいつは期待のスキルとして忘れないようにしよう。


あーあ、なんか都合よく強敵とかピンチなんかがやってきて、これまた都合よくパワーアップしたりしないかなぁ。


あーあ、なんか急にドラゴン的なものが来て、前後の繋がりもクソもなくいきなり加護的なものでもくれたりしないかなぁ。


ハッ!だめだ、現実逃避しても何も解決しない。完全に行き詰ったな。これは今後の課題だ。時間があるときにまた考えよう。なんか最近こんなんばっかだ。答えの出ない問題がどんどん溜まっていってる気がする。


またそれ等とは別に武術なり剣術なりもおぼえたいっていうのがある。昼間のあの獣人の女レベルとは言わないが、少しでも心得があれば全然違ってくるはずだ。


いつか世界旅行とかもしてみたい俺としては、ある程度強くないと厳しそうだし。まあ、今は学校があるから厳しいな。かなり詰め込み式でスケジュールを組めばやってできないことはないだろうけど、疲労で俺が死んでしまうかもしれない。


死にたくない。嫌だ!まだ死にたくないよ!母さん!助けてよ!・・・もちろん俺に母さんなんていないんだけどね。


魔物狩りも当分出来そうにないから、体を鍛える機会は無いと言っていいだろう。気持ちだけが先走りしてしまう。あれも必要、これも必要。あとからあとからどんどん出てくる。


おっと勉強の時間だ。予習復習はコツコツと。最近ちょっとサボり気味なんです。これをおろそかにすると本末転倒。学校を追い出されでもしたら、町長様に殺されそうだ。手遅れにならないように、貧乏ゆすりをしながら机に噛り付く。



そして朝です。昨日の濃い体験から始まってお勉強を経てへとへとになった肉体、精神も寝て起きたら復活しました!11歳児の回復力っていいね!ぴっちぴちだよ!さぁ朝飯を食べにいこう!


朝食は珍しくロッキさんと一緒に食べた。


「ロッキさん。おはようございます。今日はひとりですか?珍しいですね」


「キーン。おはよう。いい朝だね」


「今日はいつもの友達と一緒じゃないんですね」


「うん。ちょっとキーンに話があってね。待ってたんだよ。ううん、大したことじゃないんだけど、よかったら今度うちの店に遊びにこない?ってお誘いなんだけど。どうかな?予定は合わせるよ?」


なんでもロッキさんが父親に俺の話をしたところ俺に興味を持ったらしい。だったら家に呼ぼうかと聞くと、そうしてくれと頼まれたんだって。


こちらとしても楽しそうな話だったので二つ返事で承諾した。お互いの都合を合わせて近いうちにまた連絡をくれるってさ。楽しみが一つ増えたわ。


朝食を食べ終えて教室に向かう。授業を半分聞き流しながら今日の予定を考える。最近は公園に行ってなかったから公園に行こうかな?ドラゴラ様とも最近会ってないし。


あのじいさん、だいぶ年なのにかなり元気だよなぁ。会えばギャプロばかりで、ちゃんと聞いたことなかったけど、公園にいるとき以外は何してるんだろう?


引退したとは言ってたけど、貴族は貴族なんだし案外どえらい人物だったりするのかな?やめてよねーそういうの。騙まし討ちはなしにしてくれよ?


しかし最近は何かとバタバタしてて忙しい。忙しいけど充実しているとも言える。面倒なのは御免だし、嫌なことも多いけど、最近はこんな生活も悪くないと思い始めている。


目標としているスローライフに向けて今やってることが最適解なのかは自信ないけど、今すぐスローライフなんて無理なんだから、せいぜい過程を楽しまなきゃね!

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