ホホホ銀行SF

不死身バンシィ

ご一緒に終身保険はいかがですか?

 「おい重松、タバコくれや。今ので切らしちまってよ」


 黄土色と灰の都市迷彩に身を包み無骨なバックパックを背負った、如何にも軍人上りといった風の男が左前方に声を掛ける。


 「あぁん?バルガスおめぇまたかよ。出撃前に装備はちゃんと揃えろって口酸っぱくして言ってるだろうが。いっつも人にたかりやがってよぅ」


 声を掛けられた、先頭を歩く男が吐き捨てるように返す。


 「ケッ、うるせーや。毎回装備をご丁寧に整えられるようなら苦労しねーんだよ。四の五の言ってねえでさっさとよこしな」


 「ふん」と鼻を鳴らし、そのまま振り返りもせずに重松は煙草を投げる。何度も

繰り返したやり取りなのだろう、見も狙いもせずに後方に投げつけられた煙草は寸分の狂いもなく右後方に付く男に届いた。


 瓦礫と廃屋だらけの荒廃した市街地の中を、列を作って行進する者達がいる。

 奇妙な一団だった。

 一見すれば、特に何の変哲もない八人編成の一個小隊である。

 全員が同一の装備に身を包み、一定間隔を開けた散開隊形で全員がリラックスして、しかし油断なく警戒を怠らず行進している。各々の手には炸薬と金属弾頭を用いる旧式の軍用ライフルが握られている。その全てが色褪せ、摩耗し、その歴戦を物語るように使い込まれていた。

 そのような「統率された無個性」の一団でありながら、彼らはあまりにもちぐはぐだった。

 バルガスと呼ばれた男はウェーブのかかった金髪と厳めしい碧眼の持ち主であり、その顔つきは獅子に似ている。しかし体つきの方は猫科とはかけ離れた筋骨隆々の大男であり、ゴリラとライオンのハーフと言われたら一瞬信じてしまうような風貌である。

 それに対して重松は、年経た老木が人間に変化したような皺まみれの初老。しかし針金のような角刈りと太い眉だけはやたらと黒々しく、「老いてますます盛ん」を

そのまま形にしたような東洋人だ。

 ルワンガは全身総黒の瘦せ型、しなやかに伸びたその長身は隊員随一であり2mを超えるが、元は売れっ子のクラウンだったらしくその長い手足を器用に使いこなす。

 それと対照的に雪蘭は色白の小柄で、ルワンガと並ぶとまるで大人と子供であり、体つきも辛うじて軍人としての体裁を保てる程度の物でしかなかった。

 その他の隊員も似たようなもので、一体彼らがどのようにして集まったのか想像できる者はそういないと思われた。金で集められた傭兵でもここまでバラバラにはならないだろう。しかし、それこそが彼らの唯一の共通点であり、彼らが今こうしている理由でもある。


 「ハァ、それにしてもよお。俺達はいつまでこんな事続けるのかね。来る日も来る日も、こんなキチガイ世界でキチガイの作ったキチガイ共と戦争ごっこだ。いやこれなら戦争の方がまだマシだったね!土の上で、相手も人間だったからな!」


 バルガスが地面に散らばっている、くすんだイエローの球体を蹴りとばしながら一人愚痴る。一世紀前に導入された舗装用特殊合成ゴムである。開発されると同時に瞬く間に広がり世界からアスファルトを消し去ったこの素材は量産、加工、耐久性等、全ての要因において既存の素材を上回っており、特に交換する際に簡単に処理できる点が高く評価された。専用の薬品を吹き付けると一瞬にして発泡現象を起こしバラバラに分解されるのだ。導入当初はこの性質を利用したテロの可能性も指摘されたが、発泡化を起こした素材はその瞬間においてクッションとして機能し、また修復も極めて容易であるため、結局目立った事件は一度として起きなかった。そして薬品処理されず経年劣化した場合、この素材は何故かゴムボール状に結合しながら剥離していくのである。バルガスはこの素材が嫌いだった。全てにおいてふざけている気がしたからだ。基本色がビビッドイエローだということもふざけている。この点だけは甚だ不評だったが利便性が上回ったらしい。世界中の道路が狂ったイエローに染め上げられていくのを人々はやがて受け入れていった。バルガスはこの素材が嫌いだった。そして、他の隊員たちも同様にこのイエローを憎んでいた。


 「まーたバルガスサンのいつものがはじまったネー。コレスナワチ、おナカのへってきたショウコデース!そろそろおヒルのジカンですカー?それとおネムですカー?ベビーシッターならオマカセアレー!」

 

 ルワンガが長い手足をオーバーリアクション気味に振りながら妙なイントネーションで茶化す。クラウンだった時の名残だと本人は言うが、それがフェイクであることは他の隊員たち全員が知っていた。


 「空腹、皆、同様。目標、到達、未定。行軍、迅速、緊急」


 一方で雪蘭のこれは共通言語の未熟さ故であり、隊員として最低限意思疎通が可能なレベルでしか話せない。彼女が他者とのコミュニケーションを避ける傾向にある事も言語習得が遅れている一因であった。しかし、そのことで彼女を責める者はおらず、また彼女も気にはしていなかった。


 「ぶつくさ言ってねぇで気ぃ張って警戒してろ、それこそ今日で終わりになっちまうぞ。……ふん、言ってる間に着いたみてぇだぜてめぇら。地図が間違ってなけりゃあの廃ビルだ」


 重松が顎でしゃくって示した先に、4階建ての小さな朽ちかけたオフィスビルがあった。外れかけてぶら下がっている看板に「株式会社 トライホープ・コーポレート」という文字列がかろうじて読める。


 「目当ての端末はここの最上階だ。バアトル、ロレンゾ、大翔は雪蘭の護衛だ。

ルワンガとアマーリオが二階、俺とバルガスが一階だ。雪蘭、前回は何分かかった?」

 「参十分」

 「今回は25分で終わらせろ。精進を怠るな。それだけお前が生きられる可能性が上がる。各自、持ち場に着け。始めろ」


 雪蘭と護衛達が迅速に階段を駆け上がり、目標ポイントである生きた端末を探す。その間、各階を割り当てられたタンク担当達は持ち場のクリアリングを開始した。

彼らの目的は、ここの端末からエリア一帯を支配するシステムにクラッキングを掛け、自分たちの勢力圏に塗り替えることである。すでに隣接する2エリアからの成功

報告が別動隊から上がってきていたので、ここを解放できれば彼らの陣営は一定のセーフティを確立することになる。

 最上階のマシンルームに到達した雪蘭はすぐに目当ての端末を見つけ出した。と言っても生き残っている端末は一台のみだったので一目瞭然ではあったが。

一名が雪蘭のそばにつき、二名がマシンルーム入り口を固める。すぐさまクラッキングを開始する雪蘭。しかし単純にクラックと言っても今回はただ破壊するという訳にはいかない。目標は敵支配権の消去ではなく解放であり、奪還であるからだ。システムを上書きするためのプログラムはあらかじめ組んで持ってきてあるが、いきなりそれを使うわけにはいかなかった。何故ならここのシステム内部がどれだけなのかが分からないからだ。恐らく敵にすら。お互いの陣営が己の都合だけで適当な仕様を実装しあっているのでそれらがどんな干渉を起こしているのかが分からない。それ故に雪蘭は目の前のモニタに広がった、スパゲティと言ったらイタリア人に失礼であろう醜悪なコード群と正面から格闘する必要があった。もはやどこまでがコードでどの部分がコメントなのか、そしてそれがどちらの陣営によるものなのかすら分からない。毎度の事ながらこの時だけは自身が非戦闘員であることを少々呪いたくなる。しかし、やらないという選択肢はない。この目の前の箱だけが、彼らの明日に繋がるゲートだった。


 彼らは追い詰められていた。何としてでもこの任務を達成する必要があった。

 そしてそれ故に、「そう上手く行く訳はない」ということも予想されていた。

 程なくして重松が何かを聞きつけた。もはや老齢と言っても差し支えない重松が

隊長を任されている理由が、年老いてなお衰えぬこの五感である。壁に背中を預けて身を隠しながら窓を覗く。しかし目視するまでもなく重松に見当はついていた。連中がこの状況を見逃すはずがないと。


 ……しゅっ、がごぉん、どぬむぅん。ざぷしゅっ、がごぉん、どぬむぅん。

 ざぷしゅっ、がごぉん、どぬむぅん。ざぷしゅっ、がごぉん、どぬむぅん。

 ざぷしゅっ、がごぉん、どぬむぅん。ざぷしゅっ、がごぉん、どぬむぅん。

 

 

 何かが近づいてきていた。

 なんとも形容しがたい、恐ろしく奇妙な音が少しずつ大きくなっていく。

 一体どんな形をしていればこんな音を立てることになるのか、知らぬ者にはおよそ推測すらできない異様な音だったが、それ故に重松以外の隊員たちも何が近づいてきているのかを瞬時に悟った。こんな不可解な存在は「あれ」以外にない。むしろ他にあってほしくはない。隊員たちは一定の緊張と、そして心底うんざりした気持ちと共にセーフティを外した。


 「来やがったなフリークスどもが。腹一杯食らわしてやるぜクソッタレ!本当は

まっぴらごめんだがな!」


 「ハイハイ、ハリキッておシゴトシマース!それにしても、いつキイてもヘンな

ウタですネー、ツクッたヒトのカオがミたいデース」


 更に大きさを増していく動作音に、「歌」が混じり始めた。

 それは間違いなく動物の鳴き声などではなく「人の声」によるものであり、この

奇怪な音に比べれば遥かに親しみやすいはずなのだが、しかしその歌の内容は、ある意味で動作音よりも常軌を逸していた。


『ホホホ~ホホホ~ホがみっつ~、あなたの街にホがみっつ~、ほほえみ、ほがらか、ホンシメジ~、ホホホぎん~こう~』


 一から叩き上げの中小企業社長が自ら張り切って作曲してしまったテーマソングのような、素人特有の間抜けさと垢ぬけなさを漂わせる奇妙な歌だった。当時の銀行員たちは一日中こんなものを聞きながら過酷な業務に従事していたのかと思うと流石に同情を禁じ得ないバルガスだったが、その尻拭いを自分たちがすることになっている今を考えれば、やはり最終的には「諸共ブッ殺す」以外の感情は沸かないのだった。


 立てる動作音が奇妙ならそこから流れてくる機械音声も奇妙で、それなら勿論その外観も狂っていて然るべしであり、それはまさしくその通りの代物だった。

 重松たちの籠るビルを取り囲む、10体前後の奇妙な人工物。遠めに見ると人の

ように見えるのだが、少し近づいてみると蛸のようであり、いざ目の前に現れると

それは箱であった。

 それはキャッシュディスペンサーだった。筐体上部にモニターと音声案内用スピーカーがあり、その下部にコンソールと紙幣挿入口と紙幣取り出し口があった。そして、筐体の横からマジックハンドのようなマニュピレーターが生えており、底面からは6本のコンパスのような「足」が生えていた。その先端にはコンパスに倣って太く長い金属針が誂えられており、この先端を地表に突き刺し着地、そして跳躍を繰り返して移動する。あの奇妙な音は、この針が合成ゴムに差し込まれ、引き抜かれることによって生じる特有のものだ。

 連中が持てる技術「全て」を注ぎ込んだ結果、連中以外の誰にとっても迷惑でしかない機能性を有することになった端末にして哀れな怪物。

 それがホホホ銀行第一セクターが開発した汎用多機能型戦術現金自動預け払い機、型番mz-h010、通称ハートくんである。


 『前方、建築物内に口座未開設者発見。ただちに営業活動を開始します』


 ハートくんも重松たちを認識したらしく、プログラムに従って業務を開始し始めた。この端末は「ただ預金されるのを待つだけのキャッシュディスペンサーは古い、より能動的な営業を行うべきだ」という重役の気の狂った一声によって開発されたもので、認識範囲内にいる対象者の顔認証、指紋認証を無断で行う。そしてデータベースに対象者の情報が存在しなかった場合、自動的に口座開設・定期預金・各種保険・金融商品の営業を開始するのだ。また、「世界中、あらゆる場所で入金・引き落としができるように」という要求にも応えるために危険地帯での活動も想定されており、有事対応のための兵装まで備えている。


 『こんにちは!貴方のココロにほほえみを、ホホホ銀行のハートくんです!ただいま当銀行はご新規様歓迎キャンペーン中で、今口座をお作り頂けますとこちらのハートくん人形をプレゼント!』


 「うるせぇ化け物が!ブッ壊してやる!」

 「バルガス、無駄に打つなよ!確実に当てろ!」


 戦闘が始まった。

 重松が三点バーストでハートくんのモニター上部にある小さなレンズを狙う。

 ハートくんの外部認識の要になっている高精度高倍率レンズである。これが所謂「メインカメラ」であるため、ハートくんを攻略する際において重要度の高い弱点になっている。しかしレンズの小ささに対して重松たちの持つライフルの命中性能は高いとは言えず、ベテランの重松をもってしても跳躍で移動する目標に対しピンポイントに命中させることは難しかった。近接戦主体のバルガスはなおのことであり、他の隊員たちも似たようなものであった。なので彼らはピンポイント射撃ではなく胴体部分へのストッピング重視の射撃を行った。

 この怪物たちのボディは非常に高い剛性と耐久性を誇り、その分重量も相当なものなのだが、一体何をどうしたのかそれを跳躍で移動させる馬力まで兼ね備えている。そのせいでライフル弾程度では表面装甲を貫通することはおろかノックバックさせることすら不可能である。それ故に重松以外の隊員は軽機関銃を装備していたが、それでもこの怪物を破壊するには至らず、足止めが限界だった。


 『お客様の抵抗を確認。アグレッシブモードへ移行。応援を要請します』


 一、二階の迎撃班による一斉射撃をものともせず、ハートくんが音声メッセージを流す。ここでいうアグレッシブとは「積極的に手段を問わない」の意味であり、ハートくんたちが戦闘形態に入ったことを意味する。


 「くそぅ、余裕ぶっこきゃがって。バルガス、来るぞ!近接戦用意!捕まるなよ!上はそのまま続けろ!出来る限り近づく数を減らせ!」


 この怪物たちが厄介な理由は三つあった。一つはタフである事。もう一つはその

攻撃手段がいやらしいこと。そして三つめは、仲間を呼ぶことである。あまり手こずると手が付けられなくなる。


 「来やがれクソどもめ!スクラップにしてやるぜ!」


 バルガスが腰から千枚通しのような形状の武器を抜く。対機械兵用のエレキロッドである。ハートくんは前述のスペックに加え更に絶縁性能まで持っているのでボディに当てても効かないが、モニターやカメラ内部まではそうはいかない。そこにこの

ロッドを差し込めば機能停止させることが出来るのだが、これもまたそう簡単なことではなかった。

 

 近接態勢に入ったバルガスに反応し、ハートくんのマニュピレーターが変化した。マジックハンドからノズルホースの形状を取る。次の瞬間、大量の黄ばみがかった

白濁液が噴射された。


 「チィッ!毎度のことながらきったねえんだよテメエはよぉ!」


 とっさに横っ飛びで回避するバルガス。ハートくんに内蔵された特殊兵装の一つ、超粘化トリモチである。これの厄介なところはまず線状でなくクモの巣状に広範囲に噴射される事、そして少しでも触れればその部分に粘りつき、効果範囲内に固定されてしまう事だった。何より絵的に最悪である。しかしあまりに大量に噴射するために連射が効かないという弱点があり、一度回避すれば近寄って制圧することは容易だった。しかし——


 「ああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 「アマーリオ!?クソっやられたのか!」


 二階の窓から火線を張っていたアマーリオのところに、一体が直接飛び込んだ。

ハートくんは高い跳躍力をベースにした機動性能を持ち、これに対して位置的優位性を確保することは困難を極める。そして一旦捕まれば最後だった。


 『定期預金口座はもうお持ちですかただいま生命保険だけでなく災害保険医療保険がん保険などにも大変お得なプランを用意しておりましてさらに金融商品の方にも外貨預金FX投資信託純金積み立てなどもお勧めになっておりますその上ご家族で揃って加入されますとお得な割引プランの適用が』

 

 「やめろおおおおおおおおおおおお!!」


 身動きの取れなくなったアマーリオに、マニュピレーターを針状に変化させたハートくんが迫る。営業案内用ナノマシーン注入器である。これにやられると全ての資産を自動的にホホホ銀行内で運用するだけの生きたロボットと化してしまうのだ。

 同じ二階にいたルワンガが助けに入ろうとしたが、そこにもう一台ハートくんが

飛び込んできた。体術だけならバルガスより上のルワンガにとってハートくん一台は問題になる相手ではなかったが、流石にアマーリオを助ける余裕まではなかった。


 「アマーリオさん、今行くからあと少しだけ粘れ!そんな粘りに負けるな!」


 焦燥のあまりフェイクも忘れてルワンガが叫ぶ。しかしアマーリオは両手までトリモチに取り込まれており最早なすすべがない。


 「畜生まだかよ!こっちもそう保たねえぞ!」

 「諦めるな!最後まで集中しろ!」


 一台を制したバルガスにもう二台が迫る。素早く的確な動きで三台目を仕留めた重松にはさらに集中して4台が襲い掛かろうとしていた。状況は絶体絶命に思われたが……


 『ホ、ホホ、ホホホホホホ、ポーポポーポポポポー、ボッ、ボゥッ、ボゥン……』


 笑い声のような、また断末魔のような壊れた自動音声を鳴らしながら、突然すべてのハートくんが停止した。


 「ハッ、ハッ、ハア……」


 雪蘭が全身全霊をもって、一帯のシステムを掌握した。

 短時間で精神と肉体を極限まで圧縮して臨んだ結果である。

 当分の間は起き上がれそうになかった。

 すぐそばにいる護衛が直立不動のまま泣いている。

 マシンルームの扉を固めている二名も同様である。

 階下の戦況は伝わってきていた。しかし彼らは動くわけにはいかなかったのだ。

 もはや彼らの陣営に雪蘭ほどのエンジニアは片手で足りる程度しかいない。

 何を犠牲にしても守らなければいけなかった。


 「クッソ、ギリギリだったぜ。しかし前よりも早かったな。流石嬢ちゃんだ」

 「ルワンガ!アマーリオは無事か!?」

 

 二階に駆けつけてきたバルガスと重松。

 しかしそこにいたのは、ただ無言で涙を流し立ち尽くすルワンガと


 「ハイ……こちら印鑑になりますぅ……ここにサインすればいいんですねぇ…?

えっ今年は例年より寒いからアズキが上がる…?じゃあそっちも買っちゃおうかなぁ……」


 黄ばんだ白濁液の中、完全にキマって駄目になってしまったアラーリオであった。

 

 「アラーリオ……」

 「あっ重松さんじゃないですかぁ……一緒にどうですかぁ……?今FXがすごく熱くて絶対もうかるってぇ……」

 「ああ……そうだな、今、楽にしてやるからな……」


 彼らの陣営は、このナノマシーンの除去方法を未だ開発できていなかった。

 重松が脇のホルスターから拳銃を抜く。


 「クソッ……クソっ、クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 銃声をかき消すかのようにバルガスが叫ぶ。

 脆くなったビルの壁に拳を叩きつける。

 叩きつけた部分がゴムボール状に崩壊する。

 バルガスはこの素材が嫌いだった。こんなもので構成されているこの世界も。

 故に彼らは戦い続ける。世界を元の形に戻すその日まで。

 


 


 


 

 


 

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