第4話『二人の天才科学者』

 全人類管理型人口知能ゼロは二人の天才科学者によって製作された。


その二人の科学者、名をツヴァイク・エジンソンとナダル・ジーニャスと言う。


二人の関係は、カリフォルニア州のある都市で二人が出会ったのが始まりだといわれている。その齢、実に六歳。二人は幼馴染でもあったのだ。


 しかし、その出会いは二人の異常ともいえる才能が引き起したもはや必然ともいえるものだと思う。


 なにせ二人は若干六歳にして、当時人工知能研究の最先端をいっていたマサチューセッツ工科大学に飛び級入学を果たしていたのだから。ありえないような出会い方である。俺が六歳の頃って、遊ぶことしか頭にないようなクソガキだった覚えしかないのに…。天才はやっぱり違いますね。


 偶然とも必然とも言える出会いを果たした二人は、一言二言ほど言葉を交わしあっただけで完全に打ち解けあったという。それもそのはず、二人は初めて自らと対等の会話をすることが出来る研究仲間にして友人を得たのだ。


 二人は出会ったその日に、授業は全てすっぽかして夜遅くまで語り合ったと言われている。彼らにとってはマサチューセッツ工科大学の講義すら受けるには値しない程度のものだったのだ。なかには天才少年二人に興味を持った教授たちもいて、その会話を盗み聞きしていた者もいたようだが、まるで理解不能だったという。


 その教授が二人の話していたことの意味を理解するとが出来たのはその十年後だったとか…。


 最高の同士を見つけた天才二人のそこからの業績はすざまじかった。


二人は連名で次々と今までの技術を根本から覆すような画期的な論文を次々に発表する。それは、二人のおかげで人間の技術は五年にして百年分の進歩をしたとも言われている程。今は一般的に用いられているフルダイブ型VR技術も二人の業績によるものが大きいのだ。


 とはいっても、学校に行っているような連中ならいさ知らずその論文にどれほどの価値があるのか最低限度の学問しか学んでいない俺には全く分からないのだが。


 二人の天才によって人類の技術は目覚ましい進歩を遂げた。


しかし、それによってもたらされたものは良いものだけではない。技術が進歩するということは、それだけ軍事面も進歩するということ。第三次世界大戦では、彼らによって完成された小型核融合炉を搭載した超機動無人戦闘機によって放たれた核融合兵器が世界中を焼け野原へと変えた。もし彼らが生まれていなければこれほどの惨事にはならなかっただろう。


 その結果を見た二人は、自分たちの生み出した技術は人間の手には有り余るものだと思い至る。そこで機を見計らったかのように持ち上がったのが人工知能による全人類管理計画だった。


 二人がそれにあらん限りの賛成意見を示したのは言うまでもないだろう。そして、二人の天才による全人類管理型人工知能の開発が決定した。しかし、その研究は人類史上類を見ない程の天才である二人をもってしても困難を極めるものだった。


 当初は一年以内と考えられていた開発期間は、二年、三年と伸びていき五年が経過した。そして七年が経過し、天才二人をもってしても無理な計画だったかと世界が諦めかけたころ、二人から全世界に向けて発表が行われる。


その内容は、全人類管理型人工知能ゼロの開発に成功したというものだった。


 

 

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