護衛の力


 天馬武蔵。青年は確かにそう名乗った。

 その名、身に纏う衣服、腰の帯に差されたサーベルとは明らかに異なる造りと拵えの、片刃の剣。

 そのどれもが、彼がこの国、というよりこのフランシール大陸出身ではない異国の者であると物語っている。


「もしかして、大陸よりずっと東にあるっていう国から?」

「ああ」


 昔、教育係も勤めていたメイド長から座学で教わったことを思い出す。

 世界の国土の六割を占めるフランシール大陸。その大陸を分割する五大国家。

 北のパルミラン王国。中央のセミラス法国。東のライール共和国。西のガレイル帝国。そしてここ、南のアルティア王国。

 互いに隣接するこの五大国は、多少の差異はあれど多くの共通項を持つ文化を形成している。もっとも、ガレイル帝国に関してはその成り立ち故か、他の四カ国と比べその差異は大きいとも言っていたが。

 他方、大陸の四方に海を隔てて存在する、大小様々な国家群。これらはそれぞれが大陸とは違う独自の文化を発展させており、中でも最も遠く離れた極東の島国の文化は、かなり独特なものであるらしい。

 その島国の名は確か……『ヒノモトの国』だったか。


「そんな遠くから、どうしてアルティア王国に?」

「目的地はここじゃない。この国を突っ切るのが、目的地へ行く最短の道のりだったと言うだけだ」


 律儀に答えてくれた武蔵だが、そこで、もう話すことは無いと言わんばかりにこちらに背を向ける。


「! あ、あの!」

「……まだ何か?」


 態度こそそっけないが、無視せずきちんと付き合ってくれるあたり、おそらく根は善い人なのだろう。だがここで何とか繋ぎ止めないと、次こそは本当に立ち去ってしまう。

 出逢ってまだ間もない、本当に間もない相手との淡白な別れを、ラピュセルは自分でも理解できないほど痛烈に惜しんだ。それは何故か。


「その……あなたの目的地ってどこかしら?」


 わずかな沈黙。答えるべきか否か逡巡しているようだ。


「ガレイル帝国という。確か、この国より西にある国だったと思うが」


 知識はあるが、より詳しいだろう人間に確認する方が確実だと判断したか。ともあれ武蔵は、予想外の答えを口にした。

 これは、もしかしたら。

 それを聞き、ラピュセルの脳裏に一つの閃きが浮かぶ。


「あなたが今倒した連中、ガレイル帝国の兵士よ」


 やはりそれは知らなかったのか、武蔵が悪い目つきを僅か細める。

 食いついた。ラピュセルは釣りをしたことはないが、きっと魚がかかった瞬間の高揚というのはこういう心境なのだろう。


「なら、あの火の手は」

「そう。ついさっき、アルティア王国の首都と王城は陥落した……ほとんど一方的にね」


 言いながら、ラピュセルは無意識に拳を握り締める。

 その事実は既に受け入れた。しかし、受け止められてはいない。そのための時間が、ラピュセルにはまだ圧倒的に足りていない。なにせ、まだ脱出してから数刻も経っていないのだ。

 と、暗闇を稲光が刹那照らし、どこかに落雷するけたたましい音が響いた。


「ひとまず移動しましょ。詳しい話が聞きたかったらついてきて。助けてもらったお礼に、ガレイル帝国について私が知っていること、教えてあげる」

「わかった」


 断られたらどうしようと少々不安だったが、武蔵は二つ返事で頷いた。

 ひとまず、成功。漏れ聞こえないよう、そっと安堵の息を吐き出す。

 次は--交渉だ。



□□□□□□



「これで大丈夫ね」


 薪に火がともり、火の粉が細かに爆ぜる音が心を落ち着かせる。

 ますます強くなる風雨と雷鳴の中をしばらく走った後。

 マーチルから教えられた廃村の、残された廃屋の中の一室。おそらくはリビング。思いのほかしっかりとした造りを維持しており、雨漏りをしていたり、隙間風が入ってくることもない。暖炉も形を保っていて、脇に乾燥した薪が幾つか散乱したまま残っていた。少なくとも一晩は大丈夫だろう。全身が雨でびしょ濡れのため、暖を取れるのはありがたい。本当は服も脱いで乾かしたいのだが、出逢ったばかりの異性もいるため、さすがにそれは諦めた。

 暖炉の手前に腰を下ろす。武蔵も座れるよう、正面より少し右にずれて。


「あなたも座ったら? 風邪引いちゃうし、立ったまま聞くのも疲れるでしょ」

「…………」


 返事は無かったが異論も無いようで、後ろで道具が濡れていないか点検していた武蔵も隣に腰を下ろした。

 右脚は胡坐の姿勢で、左脚は膝を立て、反りのある剣を軽く抱くように左肩に置く姿勢で。


「それで。ガレイル帝国の何が知りたいの?」

「二つある。まず、ガレイル帝国とはどういう国なのか」

「どういう国、か。一言で言えば、軍事国家ね」


 五大国家の中で、最も歴史の浅い国。

 興ったのは、およそ70年前のこと。当時大陸の西側はいくつもの小国が乱立し覇を競う乱世だった。それらの国々を破り、統一したのがガレイル帝国。そういった建国の経緯から、軍備の増強に特に力を入れている国である。

 しかし、それ以外の内政に関しては、お世辞にも善政とは言い難い。かつて破った国々に属していた人間は、その悉くを奴隷として扱い、過酷な重労働を課していると聞く。


「……奴隷、ね」


 自分で言ったその一言が、ラピュセルの心に影を落とす。

 今日、アルティア王国は事実上敗北した。まだ自分は健在で、残存兵力が南の砦で抵抗している以上、そちらへの合流が叶えば完全な敗北には至らないが、国王が崩御した以上、少なくとも国としての体裁は保てない。そうでなくとも、今ガレイル帝国に制圧された地域に残されている民は、間違いなく酷い扱いを受けているだろう。

 一刻も早く、反撃を開始しなければならない。そのためにも、まずは無事に南の砦まで逃げ切らなければ。


「とりあえず、私が知っているのはそんなところ。あと一つは?」


 気持ちを切り替える。今は、武蔵の問いに丁寧に答えることが重要だ。

 だが。


「ガレイル帝国と同盟を結んでいる国の名と、そこからここ数年の間に帝国に招かれている人物について具体的な情報はあるか?」

「え?」


 その問いは、さすがに予想の斜め上だった。ガレイル帝国の同盟国というだけなら、あるいは南の砦に残されている資料なり、立場上そのあたりの情勢に明るいランバード将軍から聞けるだろうとは思うが。


「さすがに難しいか」

「……ごめんなさい。前者はまだ調べようがあるけど、後者の方は今はちょっと」


 大雑把な情報ならば、同じくランバード将軍ならわかるかもしれない。しかし具体的にとなると、国が瓦解した今の状況では、態勢を立て直した上で改めて間者を送り込まなければ調べようがない。

 それは武蔵も予想出来ていたようで、さほど落胆した様子を見せなかったことが救いだった。


「別に構わない。それが現状無茶な問いであることは承知している」

「なら良かったけど……私からも、聞いていいかしら?」

「何だ?」

「あなたがガレイル帝国を目指している理由。もしかして、その『ガレイル帝国に招かれている人間』を捜すため?」


 そのようなことを聞いてくるということは、必然、それが彼の目的であると推察できる。案の定、武蔵は首を縦に振ってそれを肯定した。


「そうだ」

「それは何故か、聞いても?」

「……」


 個人的な事情だろう。無理に聞き出すつもりは無い。だが教えてくれれば、それが後で情報収集する際、何らかの役に立つかもしれない。


「……そこに招かれた人物の中に、俺の父の仇がいる可能性がある」

「!」


 これまで同様淡々とした声音。だが、微かに混じっていた感情をラピュセルは感じ取っていた。

 瞬間的に、目の前で息絶えた父を思い出す。


「ガレイル帝国自体には何の用も興味も無い。ただ、その仇が今そこにいるという情報は得ている。問題は、それは確かなのか、そして具体的にどこにいるかだ」


 そして、それが一番難しい問題なのである。


「提案があるんだけど」


 いつ切り出そうか、ずっとタイミングを計っていた。しかし、親の仇を討ちたいという共通の想いを見出した今、もうタイミングとかそういうことはどうでも良くなった。

 真っ直ぐ武蔵の顔を見つめると、武蔵もラピュセルの瞳を真っ直ぐ見返す。


「あなた、私の護衛として雇われる気、ないかしら?」



□□□□□□



 夜が明けた。

 未明には嵐も明け、打って変わった晴天が朝の森を優しく包む。


「ぐあああああっ!」


 しかしその森の中、優しさとは程遠いガレイル兵の断末魔が、清浄な空気を激しく切り裂く。


「【地隆柱槍グランテ・スピア】!」


 マーチルが唱え、剣を地面に真っ直ぐ突き刺した。

 突き刺した剣から魔力の奔流が地面を伝わる。それは魔法の発動者が敵と認識した者を捉えた瞬間、地面をいくつもの鋭い槍の穂先として隆起させ、矢の如く鋭く射出していく。数多木霊する悲鳴と怒号。


「はぁ、はぁ、はぁ……!」

「お姉ちゃん!」


 肩で息をするマーチル庇うため、ルーミンが矢を番えて前に出た。

 ルーミンの援護を受けながら、多数の敵を相手にしつつ少しずつ後退。なんとかラピュセルとの合流地点まであと少しという所までやってきた。しかし、そこでかなりの規模の敵部隊に捕捉されてしまった。

 夜を徹しての戦いに次ぐ戦いで、マーチルの魔力は枯渇寸前。ルーミンの矢も残り数本を残すのみ。完全に進退窮まってしまった。


「ふん。小娘共が、ずいぶんと手こずらせてくれたものだ」


 敵の指揮官と思しき男が、後方から前に歩み出る。こちらの様子を見て、勝ちを確信したのだろう。その言葉には余裕と、幾ばくかの怒りが込められていた。多くの配下を殺られたのだから、当然といえば当然だろう。逆恨みもいいところではあるが。


「さあ、貴様らの主の居場所を言え。さすれば、命だけは取らずにおいてやる」

「……ふふ」


 お決まりの言葉。あまりに予想通りすぎて、マーチルは思わず鼻で笑ってしまった。

 敵指揮官の顔が、憤怒で真っ赤に染まる。


「何がおかしい!」

「わかりませんか?」


 額から流れる多量の汗を手の甲で拭いながら、マーチルは怯まず敵指揮官と対峙する。隣でルーミンがいつでも矢を放てるよう構えていてくれているからこそ、臆せずに立つことが出来た。


「あなた達にとって、忠誠ってその程度のものだったんだなって思いまして」

「なに?」

「騎士である以上、命を賭して主を支え、護るのは当然のこと。そのために戦場で散ることは、むしろ最上の誉れのはず」


 本音を言えば、もちろん死ぬのは怖い。だが、我が身可愛さに主を売るなど絶対にしたくない。


「それをわかっているのなら、そんなことは聞くはずがありません。敵であれ、その忠義に敬意を払い、ただ黙って斬ればいい。騎士道とはそういうものでしょう」


 ルーミンも同じ気持ちのはずだ。

 自分達の主とは、幼い頃から側付として長い時間を共に過ごしてきた。

 楽しかった思い出も、悲しかった思い出も、怖かった思い出も、嬉しかった思い出も。三人で、たくさんの思い出を積み重ねてきた。

 それこそ--不敬かもしれないが--ごく普通の友達のように。

 主を、この思い出を裏切ることなんて、絶対に出来ない。したくない。

 だがこの敵は、それをしろと命じてくる。

 なんという業腹だろうか。


「それをしないあなたは、騎士の風上にも置けない。そんな相手の言うことを、何故私達が聞かなければならないのでしょうか」


 敵指揮官が歯を食い縛る。反論するべく口を開いては、言葉が出てこず口を閉ざす。


「もういい!」


 そんなことを何度か繰り返したあと、もといた後方へ下がっていった。途端、成り行きを見ていた周りの兵達が一斉に剣を、槍を構える。


「お姉ちゃん……」


 これまで気丈に振舞っていたが、やはり内心怖くて堪らないのだろう。いよいよ見えてきた終わりを前に、ルーミンが怯えた顔をマーチルに向けた。そんな可愛い妹を、マーチルはそっと抱きしめる。


「やれ!」


 号令。武器を振りかざし殺到する敵集団。今の二人では、到底対処できる数ではなかった。


「ラピュセル様……」


 志半ばで、ラピュセルの護衛という誉れある任務を終える。

 主の無事を見届けられないこと。それが、唯一の心残りだった。


「その首級、もらったー!」


 先頭を走る敵の一人が、得られる戦果を叫んで剣を振り下ろす。

 来るべきその時を迎え、マーチルは強くルーミンを抱きしめて目を瞑る--


「--諦めないで!」

「!!」


 今一番聞きたかった声が、強く耳朶を打つ。瞬間。


「ぬぉっ!?」


 甲高い金属音。敵の驚愕の声。


「えっ……?」


 何が起きたのか。思わず開いた視界に飛び込んできたのは。 

 すんでのところで敵の剣を弾き返した、知らない男性ひとの背中だった。




□□□□□□




「マーチル! ルーミン!」

「ラピュセル様……!」

「ラピュセルさまー!」


 急いで二人のもとまで駆けつけると、マーチルは気の抜けた、ルーミンは今にも泣きそうな顔をそれぞれ向けてきた。

 どうやら大きな怪我は無いらしい。まずは無事を確認して安堵する。


「良かった。二人とも無事ね」


 友とも呼べる姉妹が生きていてくれた。その事実が、今はなによりも嬉しい。


「あの、ラピュセル様。この方は一体……?」

「安心して。味方よ」


 マーチルの疑問はもっともだが、詳しい説明は後。

 ラピュセルは事実だけを伝えると、片刃の剣--刀というらしい--を抜き、前に立つ武蔵の背に呼びかける。


「やれる? テンマ」

「問題ない」


 言い切った。敵兵数は、ざっと見た限りおよそ四十人。その数の敵を前にして、この青年は事もなげに断言したのだ。「問題なく倒せる」と。

 振った自分も自分だが、迷いなく肯定してみせる彼も相当無茶である。


「な、なんだ貴様!?」


 無造作に歩を進める武蔵を警戒し、敵がじりじりと後退した。


「ええい、怯むな! 獲物が向こうの方からノコノコとやってきたのだぞ!」


 何やら機嫌のよろしくない様子の敵指揮官と思しき男が咆える。というよりも喚き散らす。


「行け! 王女を生け捕りにするか、無理ならば殺せ! そこの変な男諸共だ! 見事討ち果たした者には、更なる褒賞を上に掛け合ってやる!」

「お……おおー!!」


 敵指揮官の檄に、兵士達の意気が上がる。

 そして、まずは最前にいる武蔵に狙いを定めたようだ。武器を構え、ぞろぞろと武蔵を取り囲む。

 対して、武蔵は表情一つ変えず。ただ正面の敵を見据え、微動だにしていない。


「やれ!」


 敵指揮官の、開戦を告げる一言。

 その刹那。


「--かっあっ!?」


 肺の中の空気が漏れ出したかのような悲鳴は、不運にも武蔵の正面に立っていた兵士のもの。

 鎧の継ぎ目を正確に狙った刺突が、その兵士の腹を深々と貫いていた。


「なっ!?」

「なんだ!? いつの間に!!?」


 敵の動揺。それもそのはず。

 なにせこの場の誰一人、武蔵の初動を捉えられなかったのだ。その動きを注視していた、初見ではないラピュセルでさえ。


「う、うおおおおお!」


 動揺しつつも、数人の勇気ある兵士が武蔵に斬りかかる。

 だが武蔵は、そちらを見てすらいない。にも関わらず、上段から振り下ろされる剣を半歩右に動いて避け、首を狙った横薙ぎの一撃をしゃがんで回避し、突っ込んできた敵の脚を低い姿勢のまま両断する。


「ぎゃああああああ!!!」


 脚を斬られた敵が悲鳴を上げ転倒。

 武蔵の動きは止まらない。次々襲い来る敵の攻撃。そのすべてを悉く避け、受け流し、逆に必倒の一撃を叩き込む。


「すごい……」

「ほえ~……」


 マーチルとルーミンも、いつの間にか武蔵の戦いぶりに見入っていた。

 武蔵の戦いには、一切無駄な動きが無かった。回避も移動も攻撃も、全てを敵の動きと紙一重のタイミングで見極めて行っている。

 そして何より、特筆すべきはその速さ。

 重い鎧を着ていないことを差し引いても、尋常でない速度で駆け、刀を振るう。ともすれば残像が見えるのではと思えるほどだ。


「な、な……!?」


 敵指揮官の動揺が見て取れた。

 当然だろう。圧倒的な数的優位が、わずかな時間であっという間に覆されようとしているのだ。それも、突然現れたたった一人の相手にである。動揺するなという方が無理な話だ。


「ひいいい!」

「だ、ダメだ! こんな奴かなうわけねえ!」


 敵の動揺が恐怖に変わるまで、さほど時間はかからなかった。一人の恐怖は伝播し、生き残った敵は次々と我先に逃げ出していく。


「こ、こら! 逃げるな、戦え貴様ら!」


 敵指揮官が必死で叫ぶが、この流れはもう止まらない。幸運にも生き残っていた数人の兵は全員逃げ出し、残ったのは指揮官だけとなった。


「お前はどうする?」


 この戦いが始まってから、武蔵が初めて口を開いた。敵指揮官の喉元に刀を突きつけると、その口から「ひっ!」と短い悲鳴が漏れる。


「逃げるというのなら、わざわざ追いはしないが」

「ぐっ……!」


 屈辱に全身を戦慄かせる敵指揮官。だが勝負を挑んだところで、結果は明白。


「……この屈辱、忘れんぞ!」


 結局。捨て台詞を残して、敵指揮官も武蔵に背中を向けて逃げ出した。

 その姿が完全に見えなくなると、武蔵はため息一つすらなく刀の血を振り払い、鞘に納める。

 息切れはおろか、汗一つかいていなかった。


「やっぱり」


 間違いではなかった。あの時、武蔵を夢中で呼び止めたことは。そうラピュセルは確信した。

 彼が、天馬武蔵が味方でいてくれる。契約上の関係とはいえ、その事実がこんなにも心を軽くしてくれるとは思ってもみなかった。


「--あの」


 不意の呼びかけに我に返る。

 見ると、呼吸を整え終えたマーチルが物問いたげな顔でこちらを見ていた。ルーミンも、興味津々といった面持ちだ。


「そうね。一休みがてら、あの後のことを話しましょう」


 マーチルもルーミンも、疲労困憊のはずだ。出発するのは、その疲れを少しでも回復させてからである。


「でもその前に。マーチル、ルーミン」

「はい?」

「--ありがとう。生きていてくれて」


 いくら武蔵が強くとも、どれだけ頼りがいがあったとしても。

 やはり、この姉妹の存在はラピュセルにとって特別なのだ。

 だから言う。照れも見栄もなく。心からの謝意を。


「「……はい!」」


 姉妹の弾ける笑顔が重なり。

 三人は抱擁を交わした。

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