龍ゆきゆきて沼に立つ

八田亜利沙

1.武蔵野線を降りて

東浦和という駅がある。

埼玉県さいたま市、県庁所在地浦和区からは少し離れた、緑区というまちに存在する。


駅前というものはそれなりに店が集まり、意味の分からない石像がそびえたち、そこそこの活気を持つものであろう。

ましてや関東地方第3だか4だかといわれる、埼玉県の、県庁所在地近くたればなおさらだ。

しかし浦和の名を冠していながら、東浦和はそれに当てはまらない。パチンコ屋と、マクドナルドと、居酒屋とカラオケが1軒ずつある程度で、ベッドタウンも極みの静かな駅前だ。


あ、いや、石像はある。


恐ろしい顔をした竜の首の石像が、道行く者をじっとにらみつけている。

「見沼の竜」――この地に伝わる、竜神伝説がモチーフだ。

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