昔話:大きなカブの物語

MrR

第1話


 昔話「大きなカブの物語」

 

 むかし、むかし、ある村に大きなカブがありました。


 最初は一人で、次は数人で、更には村人総出でカブを引き抜こうとしました。


 しかしカブは抜けませんでした。


 そして軍隊に頼んでカブを抜こうとしました。

 

 戦車や戦闘ヘリなどを動員し、大きなカブを引き抜こうとします。


 しかしそれでもカブは抜けませんでした。


 事態を重く見た政府は世界各国にカブを引き抜くために救援要請を出しました。

 


「皆さん、私は国連事務総長です。


 国連事務総長の権限を持って私は村の大きなカブを世界中の英知を結集して引き抜く事を宣言します」



 こうして世界はカブを引き抜くために一つになりました。



「此方アメリカの太平洋艦隊、カブを引き抜くために来た」


「此方ロシアの空挺旅団、俺達にも手伝わせてくれ」


「此方空中管制機。カブの引き抜きに支援する」


 

 次々と結集する世界中の戦力。


 全ては村の大きなカブを引き抜くために。


 だがそれでもカブは引き抜けませんでした。



「これでもダメだと言うのか!!」


「クソ! このままでは人類は!!」


「諦めるな!! まだ方法がある筈だ!!」



 しかし人々は諦めません。


 最後の最後まで人類は諦めずにカブを引き抜こうとします。



「ご覧下さい!! 地球上の生きとし生ける生命達が全てカブの元に集まっています!!」



 全ての動植物達がカブに向かって動き出す。

 カブを引き抜くために。


「今真の意味で人類はカブを引き抜くために一つになっています。そうしてカブを引き抜くことで人類は大きな第一歩を踏み出せると信じています」


「頑張れ! 私達はカブを引き抜くことに! 人類の未来をかけているんだ!」


「例え共に戦う事は出来なくてもここから力を与える事は出来る!」



 中には人の可能性を信じ、必死に応援メッセージを送る者達もいた。



「なんだ、この力は?」


「力が湧いてくる?」


「そうか・・・・・・これがカブを引き抜くために必要な力か!」



 そして人類は答えを手にした。


 とある研究所にて


「今、人類は文字通り一つになっている。世界中に配置したこのマシンになんて名称付ければいいのかは分からない。だが、このマシンを通して、文字通りこの地球に生きる全ての人々の想いが一つになってカブを引き抜くための力となる」


「その通りです博士」



 何があっても揺るがなかったカブが遂に動き出す。


「ここからが最終ラウンドだ!」


「この瞬間に全てを賭ける!!」


「俺達が、俺達が!! 生命だ!!」


「全ての人類から託された想い、無駄にはしない!!」


 徐々に、徐々にだが引き抜かれていくカブ。

 


 そして――



 カブは引き抜かれた。   


 全人類が新たなステージへと昇った瞬間だった。



「国連事務総長です。あのカブを通して私達は心に一つに出来ました。しかしこれから先、あのカブのように人類には大きな困難が待ち受けているでしょう。ですが我々はその困難に立ち向かう答えを知りました。それをどうか忘れないでほしい」



 こうして大きなカブを巡る熱き戦いは幕を閉じたのであった。


 END 

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