さくらもち。
紅野 小桜
第1話
どの学校のどのクラスにも。一人はいると思うんです。とっても可愛くて、誰からも好かれるような、女の子。
一人はいると思うんです。可愛いわけでもなくて、愛想も悪くて、地味で。誰からも好かれない、誰からも相手にされない、女の子。
このクラスで前者に当てはまるのは桜ちゃんという女の子。そして後者に当てはまるのは、私でした。
よくある話かとは思いますが、そんな私には友人と呼べる人などおらず、いつも一人でした。決してそのことを悲しいとかいう風に思ったことはありませんが、それでもどこかで「怖い」と思っている節はあったかと思います。どうせ皆、私のことなど嫌っているのだろうと、そんな風に考えていました。…私は卑屈な人間でした。
だからこそ、でしょうか。私は他の誰よりも桜ちゃんに憧れ、桜ちゃんを尊敬していました。
均整な顔立ちに陶器のように白い肌。長い黒髪はつややかで、彼女の姿のどこを取っても「綺麗」だと思える。きっと彼女は、神様がお造りになった一つの美術作品。そう思う程に、桜ちゃんの容姿は私にとって「完璧」そのものでした。
入学して女子高という場の華やかさに疎外感や劣等感を感じていた私は、彼女の姿を見て初めて「この高校に入学してよかった」と心から思いました。それ以来私は、常に桜ちゃんを目で追い、その声を姿を仕草を、目に耳に焼き付けるように、刻み込むようにしていました。それは「一目惚れ」のようなものでした。
勿論住んでいる世界の違う私には、桜ちゃんに話しかけることなど、できるハズもありませんでした。
だからこそ、あの日々は私にとって奇跡のようなモノで。絶対に手放したくないと、そう願ってしまったのです。
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