第06話 人間のお友達
どろどろと曇った空から夜のように黒い光が校庭に注いでいます。
朝の出席確認の時間です。
「柳
禿げた頭の先生が厭そうに名前を呼びました。
本当に、何て名前だ! 教室でどっと笑いが起こり、机の上で仰向けで反り返っている女生徒が「はい」と返事をしました。
手足や長い髪の毛が床についています。
柳の後ろの座席に座る佐倉ちゃんがその体勢を不思議に思い、口に手を添えて柳に尋ねました。
「誤解しないでね、意地悪を言っているのではなくて本当に興味があるのよ。
再び教室にどっと笑いが起こりました。
「わたし、将来、海老になるの。だからこうして体を曲げて、今から訓練をしているのよ」
「ひ、ひぃーッ、柳が、柳が喋っているぞ」
「あはははは」
醜女は喋るだけで笑われる宿命なのです。
真っ暗な教室の中に響き渡る嘲笑の中、佐倉ちゃんは“ばん”と机を叩いて立ち上がると「何故皆さんお笑いになるの? 人の容姿を笑うのは最低のことです」と言ってぷぅーっと頬っぺたを膨らませました。
「いくら何でも苛め過ぎですわよ! 皆さん」
「佐倉ちゃんは優しいなあ、笑ってしまえば良いのです。そんなに簡単に容姿が変えられるものなら皆やっているのですから」
鎮太郎くんが立ち上がりそう言って肩を竦め、柳を指差しました。佐倉ちゃんは「それは確かにそうですけども」と言っておずおずとした様子で席に着きました。
「へ、へへ、どうすれば私、海老になれるかなあ」
「そうですね、まあ。先ずは暫くそれを続けてご覧なさい。継続は力なり、ですよ。ひひひ」
鎮太郎くんがニヤニヤしながら言いました。
(継続は、力なり)
継続は力なり……!
「わ、分かった。頑張る。私、絶対に海老になってみせるから、その時は褒めてね」
継続は力なり、何て希望が湧いてくる言葉なんだろう、と柳は思いました。
(どんなに難しそうなことも継続すれば力となっていくのね。心が、きらきらする……!)
柳の頭の中にはテレビ番組【蟲ワアルド】で見た真っ白で巨大な翼の生えた女の人が浮かんでいました。
「い、い、一歩一歩、近付いていけるのね」
(今は未だ自分は青虫みたいな
「……海老のお腹がね、さ、裂けるのよ。へ、げへへ、鎮太郎くん。知ってる?」
「そうかい」
——眩しい位に綺麗なの、本当にすごいのよ。イメージできる?心が真っ白になってしまうような光を。
「そうかい、ところで何なのだい?」
真っ暗な食堂のテーブルの向かいから柳の声だけがします。
「何で僕の正面に座るの。海老臭いのでやめて頂きたいのですがね」
柳の姿は見えませんが、テーブルの上のトレイの上には山盛りの海老が載っているので、仮に喋っていなくてもニオイでその位置が分かります。
「な、なんでそんなに冷たいことを言うの?」
鎮太郎くんの反応がありません。不安になった柳はそのままぐっとお腹に力を入れて海老反りの状態からバキバキと上半身を起こしました。
テーブルの向かいから鎮太郎くんはいなくなっていました。
柳は少し悲しい気持ちになりました。
(私が、海老じゃないからだ……)
「鎮太郎くん、鎮太郎くん。やはり君、柳に好かれていますね。でもね、あれは流石に少し酷過ぎるのではないかい?」
「何がですか」
「柳のあの顔の造りですよ」
「あひゃひゃひゃ!!」
「ぶひゃ、ぶひゃひゃひゃひゃ!!」
「ひゃひゃ……、ふう。そんなことは分かりきったことでしょう。もう気味が悪くて仕方ないですよ。何とかして早く死んでくれたら良いのですけど」
そう言って頭を抱える鎮太郎くんへ、伸宏くんがにやりと笑って言いました。
「実は一つだけ良いアイデアがあるのですがね……」
その時のことです鎮太郎くんと伸宏くんの隣を柳と同じように背中を反り返らせ、手足を使ってぬたぬたと歩いていく女子のグループがありました。女子たちは「とっしぃ、とっしぃ、とっしぃ」と言いながら廊下の奥の闇の中へ消えて行ってしまいました。
「鎮太郎くん、見たかい? 何だね、今の女子たちは。今のはまるで地獄絵図みたいじゃない。あの子達、まさか柳の真似事をしているのかしら。何故そんなことを」
伸宏くんが表情を曇らせて言いました。
「地獄は今に始まったことじゃないよ。それより、良いアイデアと言うのはどんな内容なのだね」
「ああ、その話ですか。しかし、それは少しお金が掛かる方法になってしまうのです」
「良いから、勿体つけずに話し給えよ、殺すぞ。僕等は親友じゃないか」
「ふふ、ではお耳を拝借」
伸宏くんは鎮太郎くんに耳打ちをしました。すると鎮太郎くんの目はみるみる内に輝いてきました。
「そ、それは素晴らしい。皆が幸せになれる素晴らしいアイデアじゃあないか、流石伸宏くん! ホームズの使いパシリのワトスンのようだよ」
「……よく分かりませんな」
「では早速僕は準備を開始することにしますよ」
鎮太郎くんは慌てた様子で廊下の奥へ走って行きました。
「し、し、しし、鎮太郎くぅん」
昇降口で下駄に履き替えている鎮太郎くんを呼ぶ薄気味悪い声がしました。
見ると廊下の闇の向こうから柳が背中を海老反らせながら走って来ます。
べたんべたんべたん、べたたたたたた。
「見て見て、走れるようになったのぉ!! 褒めて、褒めてェ!!」
「ひぃッ! は、速い」
腕と脚をバラバラに動かしながら走りよって来る様子は、海老というより、蜘蛛のようでした。
鎮太郎くんは思わず柳の顔を思いっきり蹴ってしまいました。
——ギャッ!!
柳はゴロゴロと転がって倒れました。
(や、やった! 胸がすっとする)
柳の背中がビクビクと震えています。
「うう、う、うぇ、うぇ〜……」
柳は涙と鼻血でぐちゃぐちゃになった顔を上げました。
「なんでぇー! 私、頑張ってるのに、なんで、なんで蹴るのォ……、うう」
柳がずるずると這ってきて、鎮太郎くんの脚を両手で掴みました。
「褒めて欲しかったの、蹴らないでよぉ! 私頑張ってるのに、うう」
「さ、触らないで頂きたい!」
鎮太郎くんは触られたところから全身に鳥肌が広がるのを感じて、柳の頭を上からガツンと殴って脚から剥がしました。そして学制帽を被り直すと下駄をからんからんと鳴らして行ってしまいました。
柳は自分の鼻血と涙の池にびちゃんと頭を突っ込んで黙ってしまいました。
他の生徒達が柳を避けて通り過ぎて行きます。
「しにたい」
柳はのそのそと身体を起こして下駄箱にもたれかかるように座りました。
「しにたい」
「あら、柳さん。どうしたの、鼻血を垂らして」
見上げると佐倉ちゃんが驚いた表情で柳を見下ろしていました。
「ううん、何でもないの。ちょっと鼻血と涙が出てきただけ」
「そう、何でもないの安心したわ。じゃあそこを退いて頂けるかしら、靴が代えられないわ。あたい、帰るの」
「え、えへへ。ごめんねェ」
柳は袖で涙と鼻血を拭きながら立ち上がりその場を退きました。
佐倉ちゃんは「ありがとう」と微笑み、靴を履き替えました。
そして「あら」と虚ろな目をして
佐倉ちゃんは微笑んで柳の頭にそっと手を伸ばし頭を撫でました。
「人間が海老になるのは大変なことだと思うけど、諦めなければ夢は叶うから、負けちゃ駄目よ。神様はちゃんと見てるのだからね」
柳は拭いたばかりの涙が溢れ出しました。
「ふぇ、ふぇ、ふぇえええ!!」
頭を撫でられたのは人生で初めてのことで、柳の身体は芯から震えるようになって涙が溢れ出てきます。
佐倉ちゃんは泣き
「だから、ほら。二本足で立っていては駄目よ。あなたは人間じゃないのですから」
「うん、そうだった。ありがとう、私負けない。海老になって鎮太郎くんに褒めて貰うの」
「そう、やっぱり鎮太郎くんのことを想ってらっしゃるのね」
「え、あ、あの」
「一体あの人のどこが好きなんですの?」
柳は顔を真っ赤にしました。
「その、わかんない、や、やさしいところ」
佐倉ちゃんは目を丸くしました。
「優しいですって? あの人のどこが優しいの? いつ? どんな状況?」
「そ、それは、内緒」
「そう」
小走りで昇降口の外へ向かう佐倉ちゃんの背中へ柳は海老反りながら「待って」と声を張り上げました。
そして振り向く佐倉ちゃんに鼻から赤い泡を出しながら言いました。
「わ、わ、私と、友達になってくれる?」
佐倉ちゃんは歪んだ顔を直すと目を細め、ちゃんと海老になれたらね、と言いました。
「うん、や、やった! 初めての人間の友達、げひゃひゃひゃ! 私、絶対に海老になるね!」
佐倉ちゃんは「約束よ」と微笑むとそのまま校門の方へ行ってしまいました。
「よ、よし! 頑張るぞ!!」
不意に顔がズキンと痛みました。
柳はまたその場で暫く泣いてしまいました。
涙がおでこに流れていくのは初めてだなぁ、と思いました。
我々趣味の集いの者たちがパブロフの猿、と呼んでいたものがありましてな。ええ、はい、そうそう、犬の方と同じようなもんですよ。人間の頭の頭蓋骨を外して、脳味噌に、こう、細い針を指すんです。そこに微弱な電流を流してやる。そうするとだな、刺す場所によって喚び起される感情が違う訳です。感情や思考、人間の活動の根源となる心っていうのは脳の神経細胞ネットワークに電気パルスが伝わっていくことですから、それをシミュレートしてやろうっていう趣旨なんですよ。そしてね、そうした一連の実験の中に、幾つかの特定の部分に針を刺し、ボタンを押すと電流が流れるようにして、被験者の前に置いておくというとどうなるかっていう、そういうことをしたのです。そうしてその挙動を観察したら、1時間に14625回そのボタンを押したんです。つまり彼はそのボタンに約1秒に2回恋をしていたわけですな。日本にはパチスロなんて文化がありますでしょう? あれはね、実は恋愛マシーンなのですよ。つまり愛っていうのは勝てば換金可能な訳で、機械とお猿さんを接続するコードを、つまり、「ヒモ」と呼ぶわけです。
——————2年1組 担任(担当:理科) 浜崎波平
「もし、そこの美しいお嬢さん」
校門を出て少ししたところでそんな声が聞こえ、佐倉ちゃんは「はい」と声の方に振り向きました。
そこには黒い大きな車のルーフに手を付く金髪の長い巻き毛を掻き上げる長身の男子学生が立っていました。
地獄中学校のナルキッソスの異名を持つ寺地敏雅です。
——あら、これはこれは寺地先輩、遂にこの私の魅力に気付いたのかしら。
佐倉ちゃんはそんなことを思いました。
「私の名は、佐倉……、秀美ッ!」
「さ……佐倉、秀美さん、良い名です。申し遅れました、僕の名は三年の寺地敏雅といいます」
佐倉ちゃんはニヤリと笑って頬を持ちました。
「あなたは誰? 私に何か御用かしら。これから私、お華の習いごとがあるので、手短にお願いしたいのですが」
「お手間は取らせません。幾つか質問があるのです」
「その程度であれば宜しくってよ」
佐倉ちゃんは寺地くんの側に寄り、黒塗りの車のルーフに同じように手を着きました。
(こうして近くで見るとずいぶん身長の高い殿方ね)
佐倉ちゃんは期待に胸を高鳴らせました。
「君は、あの女性のご友人ですか」
(あの女性?)
「あの女性とはどの女性のことですか」
「先程昇降口で話をされていた。長い黒髪の青白い……」
(ああ、女性ね。化物と言ってくれれば直ぐに分かったのに)
「柳さんのことですね」
「柳さんというのか……」
寺地くんはルーフをトントンと叩き、「羽識さん、メモを」と言い、運転席の人影は「はい、坊ちゃん」と頷きました。
佐倉ちゃんは少しがっかりして表情が曇りました。
(あの化物のことを調べてどうするのかしら)
「ええ、柳醜女さんです。柳の木に
寺地くんの表情は少し驚いたようになったあと「あっはっは」と項垂れた額を指先で支えました。
「佐倉さん、君は楽しいお嬢さんだ」
寺地くんはそんなことを言いながら暫く朗々とした笑い声を響かせました。しかし予想に反して佐倉ちゃんから何の否定も反応も無いことに対して表情を強張らせました。
「それは、確かですか」
「はい。本当のことです」
腐ったような暗い昼下がりに生温い風が吹き、寺地くんの長い金髪を撫でました。
「自分の娘に
「彼女は教頭先生の娘です」
寺地くんは暫く佐倉ちゃんの目の奥を見た後、少し納得した様子で「そうか、あの男の娘か」と呟きました。
「何故柳さんのことを私に聞くのですか」
佐倉ちゃんは少し不快そうな顔になっています。
「いや、あのブ……、お嬢さんが少し変わった歩き方をするのを何度か見かけてね、反り返って蜘蛛のように。何故あのようなことををするのか気になってしまってね」
「そういうことですか。あの、そろそろ私、行っても宜しくって?」
「いや、待ってくれ。どうやら君は何かを知っているようだね」
佐倉ちゃんは般若のように歪んだ笑みを浮かべました。
「ええ、でも時間が無いので」
「分かりました。急いでいるということであれば君の家の周辺まで車で送らさせて頂こう、どうだい?」
ふと佐倉ちゃんは妙な気配を感じて周囲を見回しました。
見ると道路の脇にある木、電柱、畑の
(柳? いいえ。だとすれば何故いくつも似たような影があるというの)
それは柳のように身を海老反らせた少女たちでした。
彼女たちは寺地くんを常日頃観察して気を引こうとしているのです。体を柳のように海老反らせているのも、寺地くんがこうして柳に興味を持っているのを敏感に感じ取ったからでした。
彼女たちは二人の会話に聞き耳を立て、殺気立った視線を佐倉ちゃんに送っています。
ギョッ。
「どうしました佐倉さん」
「いいえ、何でもありません」
「で、どうでしょう。乗っていきませんか」
佐倉ちゃんは海老女たちを一瞥して「ふ、ふん」と鼻で笑いました。
そしてわざと大きな声で「そこまで私と下校を共にしたいというということでしたら、今日のところは付き合ってあげても宜しくってよ」と言いました。
寺地くんはほっとした様子で「良かった、さあ、どうぞ」とリアドアを開けました。
佐倉ちゃんは海老反ったままハンカチをビリビリと噛みちぎる少女たちへ唾を吐き、後部のシートに乗り込みました。
「さあ、佐倉さん、聞かせて頂けますね。何故柳さんはあのような異様な歩き方をしているのですか」
寺地くんは
「秀美と呼んでも宜しくってよ」
寺地くんは眉毛をピクリと歪ませ、「秀美、教えてくれるかい……?」と言い直しました。
佐倉ちゃんは溜息を吐いて話し始めました。
「柳さんは海老に憧れているのです」
「えび? えびというのは、あの海の海老ですか」
「そうです、彼女は海老のようになりたくてあのように身を捩じらせているのです」
運転席の羽識さんの鋭い目がバックミラーを眺めています。
「待ってくれ、海老のようになりたいだなんて、とても正気とは、嗚呼」
寺地くんは混乱した様子で今にもりりゐの頭を握り潰さん勢いでした。
——ぎゃああ、ふぎゃああ、フーッ!!
りりゐは発狂したように叫び寺地くんの手から助手席まで逃げ、その後運転をする羽識さんの顔に飛びかかり引っ搔き、羽識さんの肌の表面に珠のような血がプツプツと浮かびました。
「だ、大丈夫ですの? 血が出ていますわよ」
「佐倉様、私のことは結構ですので、坊ちゃんのお話の相手をして差し上げて下さい」
バックミラーに反射している目には感情のようなものが感じられないように思いました。
寺地くんは頭を抱えています。
「すまない、若干動揺してしまった」
(あんな姿をしている女の今更何を驚くことがあるの。人間じゃないと言われてもあたい、驚かないわ)
「しかし、幾ら体を捩らせたところで海老になるなんてことは出来る筈もない、そうだろう」
「ええ、しかし彼女はそうすることで自分は本当に海老になることが出来るかもしれないと信じているのでしょう」
寺地くんは、馬鹿な、と呟きました。
「しかし、それにしたって何故彼女は海老になろうとしているのだい?」
「それは……」
りりゐが助手席で前足を舐めている。
「それは多分彼女が恋をしているからじゃないかしら」
「恋? それが海老となんの関係があるのだい? 僕にはその二つの間に全く関連を見出せない」
それは金髪巻き毛のナルシストにしては極めて真っ当な意見でした。
「彼女は山田鎮太郎くんという男の子に恋をしているのですが、数日前、学校の食堂で鎮太郎くんが“海老を見ると柳を思い出す”というようなことを言うのを聞いていたのでしょう」
寺地くんは黙って話の続きを促します。
「それで、これは多分ですけど。その時に鎮太郎くんのお皿の上に山のように海老が盛られていたので、鎮太郎くんが海老が大好きなのだろうと、それで海老になりたいと思ったのではないかしら」
「何なんだそれは、滅茶苦茶だ。羽識さん、羽識、おい、羽識ィッ!」
羽識さんは、次の赤信号でメモしますので少々お待ちを、と言いました。
「本当のところは私にも分かりません、直接聞いた訳では無いので。——どうでも良いし」
寺地くんは話を聞いたことを後悔し始めていました。
(自分も海老になって喰われてしまいたい、という倒錯した願望なのか。とにかく僕の手に負える女では無い気がしてきたぞ)
「いや」
(ここで諦めてしまっては僕は二度と立ち直ることはできないだろう。一生あの
羽識の頬からは赤い血がダラダラと垂れている。
(山田、鎮太郎)
「山田鎮太郎とはどんな男なのだ、それほどまでに一人の少女を狂わせる魅力を持った男なのかい」
「え?」
佐倉ちゃんは吹き出して「あっはっは」と笑いました。
「いいえ、これ以上無い位下らない男ですわ。その腐った根性が顔に滲み出ているような、ゴミ屑のような男です」
「ゴミ屑……」
(自分のことを棚に上げてよく人のことをそこまで言えるものだ。しかし、余計に分からぬ、この女の言うように山田という男がゴミ屑のような男であったとして、では柳を落とさなければ僕はそのゴミ屑以下ということになってしまうでは無いか)
「……その男は柳のことをどう思っているのかね」
「先輩、何故そこまで柳のことが気になるのですか? その、先輩は、
「馬鹿な、あんな化……、いや、柳さんは私の好みでは無い、決して」
そう言いながら寺地くんは血が出そうな程拳を握り込んでいる。
「そうですか。あら、この辺りで結構ですわ。下ろして頂けますか? ありがとう御座いました」
寺地くんは呆然として「……羽識」と呟き、羽識は「はい坊ちゃん」と返事をしました。
車は佐倉ちゃんを巨大な団地の前で降ろすと真っ暗な道の向こうへ走り去って行った。
「一体何だと言うの、この美しいあたいを歯牙にも掛けようとしないなんて、正気かしら」
そんなことをブツブツと呟く佐倉ちゃんの隣を「マッチ、マッチ」と掛け声を発しながら走り去る男がありました。
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