TO YOU

@sakuraabe

プロローグ

私はこの物語の中で、あなたを、「あなた」とだけ呼ぼう。

なぜならこの物語はあなたへ捧げるものだから。


あなたのふとした時の優しい表情。

あなたの香り。

あなたと歩いた時に見上げる、果てしない空の広さ。

あなたと足跡を残した夕暮れの海辺。

あなたといる時にだけ、全てが美しくなるこの世界。



もうあなたに会うことはない。

だから、この物語の中だけでも、私とあなたは何度も出会い、何度も恋をする。


もう、あなたに会うことはないのだから、せめて、物語の中だけでも

あなたと私はこうして、何度でも、出会うのだ。

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