スタイリッシュ日本昔話アクション

ばるじMark.6 ふるぱけ

第1話:ももたろう


 昔々、あるところに、おばあさんとおじいさんがいました。

 おじいさんは山へしばきに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

 おばあさんが洗濯をしていると、大きなハンヴィーがどんぶらこっこ、どんぶらこっこと流れてきました。おばあさんは浅瀬に引っかかるのを確認し、そのハンヴィーへと近づきました。中には裸のおにゃのこが乗っていました。一大事だと思ったおばあさんは、そのハンヴィーを運転し家へ帰りました。


 小金を手に入れたおじいさんも、ちょうど帰ってきました。おばあさんは川で起きたことを話し、幼女を保護しました。

 おじいさんとおばあさんは「ハンヴィーから出てきた幼女」ということで、名前を『ももたろう』と名付けました。突っ込みどころしかねぇ。

 最初はおびえていたももたろうでしたが、徐々に二人になつきました。そして、みるみるうちに元気になりました。しかし、ももたろうには記憶がありませんでした。あるのは抱えていた二挺の大口径ハンドガンだけでした。


 幼女から少女くらいになったももたろうは、育ててくれたおじいさんやおばあさんへの恩返しを兼ねて、記憶探しの旅に出ることにしました。

 旅立つ日。おばあさんはひとつ手土産(?)をももたろうに持たせました。


「これはKIBIDANGO。こまったときはこれを使いなさい」


 それを受け取り、ももたろうはハンヴィーに乗って、家を出て行きました。


 * * *


 まず最初の一番道路から西に向かう事にしました。

 そこで検問をやってました。番犬がうろつき、ポリスがサングラスの下からこちらを見てきます。


「HEYお嬢ちゃん。わるいが、免許証はあるかい?」

「免許証? ああ、これのことかい?」


 一瞬、乾いた音が響きました。あたりはなにごとかと静まり返しました。ポリスの頭はたちまち吹き飛びました。


「カカシ風情が余分なおしゃべりするからだ」


 事態を察した市民が大声をあげて逃げて行きます。そんな姿を横目に、ももたろうはハンヴィーを走らせました。


「こいつは通行料だ。とっときなボーイ」


 そういってKIBIDANGOを投げ込みました。すると何と言うことでしょう。殺風景だった道路に極彩色の美しい爆光が上がりました。

 あれほどやかましかった道路もすっかり静かになり、ももたろうは「もっとクールに行こうぜ」と言い残してその場から走り去りました。


 * * *


 さらに一番道路を西に走っていると、騒ぎを聞きつけた空挺部隊が空にヘリを飛ばしていました。ももたろうは、そのまま高速道路に乗って撒こうとしましたが、空を往く大軍を振り切るのは難しいものでした。

 そうこうしているうちに、ハンヴィーはトンネルに入りました。敵も追いかけるように超低空飛行で追尾してきます。


「ちっ。さっきの坊やとは一味違うって事か」


 ももたろうは、おもむろに取り出した大口径ハンドガンを発砲しました。打ち出された弾丸はトンネル内を跳ね、いい角度で機内へ突入した弾丸がパイロットを砕きます。ヘリコプターは壁に衝突し墜落しました。それにつられ、後ろを飛んでいたヘリも誘爆します。たちまちトンネル内は明るくなりました。


「鮮やかなバラじゃねぇか」


 そう言い残し、ももたろうがトンネルを抜けると、ふらふらと飛ぶハインドが一機飛んできました。先ほどの爆風をかいくぐりトンネルを抜けたのですが、体勢維持が出来なくなってしまったようです。ももたろうはヘリの横へギリギリまで近付き弾丸をくれてやると、後部席に乗ってた兵士の頭が、2タテで吹き飛びました。

 戦意喪失のハインドが路上に着陸します。ももたろうはパイロットを引きずり降ろします。そして、筆舌に尽くしがたいありとあらゆる拷問を加え、最後にひと言

「その機体を開け渡せば、命だけは助けてやる」と慈悲を与えることで、パイロットの精神を破壊しました。


「これで邪魔者は消えた」


 そう言ってハンヴィーに乗り込みました。後ろからは仲間になったハインドがついてきました。


 * * *


 さて。仲間を手に入れたももたろうは、そのまま高速道路を走っていました。

 目の前には大きな大きな橋がかかっています。これがいわゆる『明○海峡大橋』です。

 はなうたを唄いながらその橋を渡っていると、突然目の前になにかが降ってきました。緑色のだ円形のそれは、頭上で爆発します。


「南下してくると、空からパイナップルが出迎えてくれるのか。なかなかオツじゃねぇか」


 一個、二個、三個……やがて数えきれなくなるほどのパイナップルが落ちてきました。それらはすべて爆発し、ももたろうの行く手を阻もうとします。

 すんでのところで爆風を避けながら、ももたろうは耳に着けていたインカムにいいました。


「やれ。ホントの地獄カーニバルへご招待だ」


 そのひとことで、上空から追従していたハインドのミニガンが炸裂しました。橋を支えていた柱はへし折れ、ワイヤーは弾け飛び、バランスを崩した大橋は海へと沈んでいきました。えげつねぇ……。

 その様子をバックミラーで確認しつつ走行していると、やがてももたろうは料金所で停車しました。


「ニンゲン、キライ。カエレ。オマエラノクルバショデハナイ」

「モノ、ダイジ。シゼン、ダイジ」

「それより通行料だ。欲しいだろ? 受け取りな」


 そういって、ももたろうはすっと3万渡しました。


「釣りはとっときな。では、お勤めご苦労」


 そして、そのまま走り去って行きました。

 ちなみに実際の通行料金は3万2千円でした。


 * * *


 こうして淡◯島に到着したももたろうとハインド。

 海のドライブを堪能し、宿で休んでいると、突然ふすまが開きました。現れたのは色とりどりの鬼たちです。

 ももたろうが夜を過ごす予定だった旅館は、実は鬼のアジトだったのです。

 棍棒を手にした鬼たちは、一斉にももたろうへ襲いかかります。しかしももたろうは華麗な銃捌きで返り討ちにしていきました。

 このままでは劣勢だと判断した鬼の長が増援を要請します。外から駆けつけた鬼の増援が旅館前のロータリーに駆けつけますが、だれひとりとして旅館に入れる鬼はいませんでした。上空で待機していたハインドの機銃掃射によって、一瞬で地面のシミにされてしまうのです。


 飛び跳ねる薬莢。

 跳躍する鬼の躯。

 空を下る弾倉。

 ――すべては予定調和。彼らは死して華を咲かせる運命なのです。


 様々な色だった鬼たちは、赤一色の肉塊と成り果てました。

 その場に息づいているのは、ももたろうただひとりだけとなりました。


「せいぜい来世ではうまくやれよ」


 こうして、鬼たちとの壮絶な戦いを終えたももたろうは、客室を後にします。

 旅館のロビーで、カウンターにしゃがみこんでいた女将が、ももたろうの姿をみるや質問します。


「……あの、お客様? お帰りで……?」

「そうだが……ああ、帰り道か? 橋が折れちまったらしいが心配はない。フリーパスを持ってる」


 そう言って旅館を出ていきます。ロータリーに控えていたお供のハインドに乗り込み、血の池と化したアジトを見下ろしながらももたろうは村へ帰りました。


 * * *


 こうしてももたろうは、みごと鬼を滅ぼし、◯路島をハインドで抜け、おばあさんとおじいさんのもとへ帰りました。

 たちまち村では有名人になり、ついでに旅の経験を活かした軍事力の向上に貢献し、強い県を作り上げましたとさ。


「スタイリッシュだぜ……」



   めでたしめでたし。

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