エピソード4【ドリームブログ】②
* * * *
――2017年。
私の名前は、山下ヒカル。
ムーンライト探偵事務所に勤めている。
仕事内容は、私の場合、主に浮気調査がメインかな。
時には、ニューハーフや幽霊になりきって対象者に近づき、調査をすることもある。
そういえば、この間は凄い強者がいて、ついにゾンビの恰好までしたっけ。
まさかあのターゲットの男性、ゾンビの私にまで恋をするとは思わなかったな。
まあ、さすがに懲りたようで、あれから依頼者の夫婦仲は一応順調らしいけど、はてさて今後はどうなることやら。
そして私には、世の中で最も愛している人がいる。
それは、ごくごく普通の中堅会社に勤めている、夫のカズヤ。
友達の紹介で知り合って、すぐに意気投合。
しばらく付き合ったのち、25歳で結婚して来月でもう3年になる。
幸せだ。
幸せでたまらない。
毎日、夕食のあとは、2人だけのまったりとした時間が流れる。
この日も、そうだった。
私は、レモンティー。
カズヤは、ミルクティーを片手に。
「ねえ、カズヤ。カーテン、新しいのに変えようか?」
「いいね。部屋の雰囲気もいっぺんするだろうしね」
私の問いかけに、カズヤはニコニコ笑う。
あの色がいい。
この柄がいい。
他愛もない会話が楽しくて楽しくてたまらない。
「ねえ、カズヤ。来週、新しくできたフランス料理の店に行ってみない?」
「あぁ、あの、アムール・エトランジュって名前の店? うん、いいよ」
私のお誘いに、カズヤはニコニコ笑う。
何を食べようか。
ワインも頼んでみようか。
想像は、膨らむばかり。
でも、その店の料理の値段を知って、行くのは取りやめ。
最近、車を買い替えたから、また今度、お金に余裕がある時に行くことに。
その時までのお楽しみ。
「ねえ、カズヤ。今年こそ、子供欲しいね」
「そうだね、できるといいね」
私のちょっと恥ずかしい要望にも、カズヤはニコニコ笑う。
そう。
結婚した当初から、子供は欲しかった。
男の子でも女の子でもどっちでもいい。
愛するカズヤとの愛の証、小さな天使が舞い降りてくれるのを、ずっとずっと願っていた。
だけど、中々、その願いは叶わない。
だけど、こればっかりは、どうしようもない。
でも、私は幸せだった――
私は、カズヤの笑顔が大好きだから。
それだけでも十分、幸せだから。
共働きで暮らしてきた私たち。
とびきり裕福という生活でもないけど、節約するのも、また楽しみの一つだった。
毎日が楽しくてたまらない。
私たちには、明るい未来しかなかった。
だけど、この3日後。
カズヤは、交通事故で亡くなった――――
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