エピソード2【ロウソクに願いを込めて】⑤
* * * *
「さてと、これで来年からは、僕も一人前になれるかな」
クリスマスの夜、仕事を終えた僕は、夜空を見上げつぶやいた。
僕の名前は、アイザック。
サンタ様に使えるトナカイでございます。
まあ、トナカイにも色々、ランクがありまして、サンタ様と一緒にプレゼントを配りに回れるのは、ほんの一握りの選ばれしトナカイなのでございます。
そして、どうやったら、サンタ様のお供ができる最上級のトナカイになれるのかと言いますと、ちょっとした試験があるのでございます。
「今年で、ちょうど1万人だな……」
僕は、小さくガッツポーズ。
そうなのです。
人間界の生物を、クリスマスの日に1万人幸せにすると、上のランクへ上がれるのでございます。
幾度となく失敗も経験しましたが、それはそれは、何百年も長い年月をかけて、皆さんを幸せにしてきましたよ。
ミミズさんから始まり、バッタさん、ヤモリさん、犬さん猫さん、キリンさん、カピパラさん、クジラさん、そして、人間さん……地球上のありとあらゆる方々を様々な手段を使って幸せにしてきましたよ。
そして、今年のクリスマスは、僕は人間の姿に身を変え、ここで、ケーキを売っていたのです。
そうです。
特殊なロウソクも用意して、準備万端でございました。
どうやら、あの女性とそのご家族は、最高のクリスマスを手に入れられたようですね。
ちなみに、旦那さんの心から一番欲しい物は、
『家族がいつも笑顔で、仲良く幸せに暮らせること』
だったようです。
ただ、少し以外でしたね。
あの旦那さんは、好みの女性がいると5秒もかからず好きになってしまうような恋多きお方ですのに。
今までも出張と偽って、仲良くなった女性と……おっと、こういうことは深入りするべきではありませんね。
ですが、これは逆に言うと凄いことですね。
そんな恋多き旦那さんも、やっぱり家族の幸せを第一に考えているのですから。
良かったでございます。
願いが叶って、さぞかし喜んでいることでしょう。
「さてと……」
これで、僕も昇級試験を受けられるでございます。
とりあえず、それに向けてもっともっと勉強しなきゃですね。
安全にソリを引っ張る方法。
効率のいいプレゼントの配り方。
サンタ様のご機嫌をとる方法。
などなど、勉強しなきゃいけない項目は、山ほどあるでございます。
でも、まあ、明日からでいいですよね。
だって今日は、クリスマスなんですから。
クリスマスの夜は、勉強は忘れて楽しい気持ちで過ごすに限りますね。
「じゃあ、そろそろ……」
僕は、魔法で作っていたケーキ屋さんを一瞬で消し去り、元の空き地に戻した。
そして、これから、雲のそのまた雲の上にあるサンタクロースの世界に戻るでございます。
「では、みなさん」
僕は、クリスマスの夜空を天高く駆け上がり、下界を見ながら呟いた。
「来年、またお会いしましょう。きっと素敵なプレゼントがもらえることでしょう」
あなたが一番心から欲しいもの
きっと、プレゼントいたしますので
【To be continued】
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