第三十六話【きっかけは北朝鮮】
それは唐突に何の前触れも無く始まった。北朝鮮のテレビ放送局が突如『トーキョーを核攻撃してやる』とほざいたと言うのだ。いったい何がきっかけなのか相変わらずよく分からないのだが、ともかく爆発したってことだ。ま、口で言っただけだが。
北朝鮮のテレビ放送局は政府批判できる民間企業などではない。北朝鮮のテレビがそう言ったのなら北朝鮮という国家の意志なのだろう。とは言え、私は初めて聞いた時も大して驚かなかった。あまりにも既視感に満ち満ちているというか。
以前から『超強硬な〜無慈悲な〜』なんてったっけ? 報復だの措置だのをとるとか言ってたしな。その昔には、ソウルとトーキョーとワシントン、いやニューヨークだったかな火の海にしてやるとか言いやがったって話しもあったな。
だが以前とは違って言ったのがいくつかの核ミサイルを配備したと確実に言える状態での発言だったというのが大問題だった。
◆
俺はずっと遡って考え続けてきた。つまりここが過去の行き止まりだ。全てはここから始まった。だからこれ以上遡る意味もない。
まず、ならず者国家が核恫喝を行い、悪ノリした国連常任理事国の一部までが続けて核恫喝を始めた。恫喝対象は非核保有国だったため当該非核保有国は当然アメリカ合衆国の核抑止力を期待する。
だが核恫喝国は非核保有国との領土問題を核兵器に絡めるという情報戦術を発明し、我が国のマスコミがその罠に引っ掛かった。
我が国のマスコミは『外国の領土問題如きで核戦争に巻き込まれるぞ』と恐怖を煽り逆に非核保有国を攻撃し始めた。それが伝播し明確な抑止のメッセージを出せなかった。それがさらに非核保有国の不安を増大させていくという悪い流れだ。
こんな奴らがキッカケとは腹立たしい。見え透いた謀略にまんまと掛かる人間にも腹立たしい。
だからまた俺は日本国首相サトーと電話会談をしている——このところ日本とは安全保障の問題しか話し合ってない。
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