『核兵器』

第三十四話【連鎖反応】

　日本ってのはユーラシア大陸の東の外れに浮かぶ島々だ。何しろ俺は大統領だからな、それくらいの地理は分かって当然だ。

　さぁてここから後はさっき帰った国防総省の奴から聞いた話しだ。日本ってのはユーラシア大陸の東端にある国々と仲が非常に悪い。いろいろ領土問題があるんだそうだ。まぁ世界中の国と仲良しの国なんてあるわけないから、仲の悪い国があったとて極々当たり前のことだな。合衆国大統領をやっているとなおさらこれが〝常識〟なのだと肌で理解できる。

　ところが日本ってのは変わった環境に置かれた国で、ユーラシア大陸の東端にある国の一つが日本を殴ると、次はそれと別の国が日本を殴り始める。そしてまた別の国まで日本を殴り始める。フクロってやつだな。いや集団リンチと言った方が的を射ているのか。世界広しと言えどもこういう変わった環境に置かれた国は日本以外に聞いたことがない。

　殴られ続ける奴に手をさしのべれば、恩に着る、感謝するという感情が生まれる。合衆国的には悪くない。ただやっかいなのは日本をフクロにする国々の中に合衆国の同盟国まで入っているってことだ。だが今回はその国が直接絡んだ問題じゃないってのはホッとするところだな。

　ともかく日本はこうした〝連鎖反応構造〟の中に身を置いている。

　『トーキョーを核攻撃してやる』。

　この北朝鮮の言い草に刺激を受けた奴らが興奮して連鎖反応が始まってしまったのが俺と合衆国のけちのつき始めだ。核分裂的でもある。