17.なぜか棒だよ、君のゴールド <2>
「それにしても、ゴールド自体を変えてどうするのかな? レンちゃん、別に金額は変わってないんだよね?」
「ええ、コインが棒になっただけで、金額そのものは変わってません」
次の目的地、ハクエン村に向かって歩き、丸2日。レンリッキによると、そろそろ着くころらしい。
道中もちろんモンスターが現れるので、倒しながら新ゴールドをである棒切れを貯めていく。魔王に大分近づいているからか、4人で戦わないといけないくらいの強敵も出てきた。
「レンリッキ、棒は今どのくらいあるんだ?」
「えっと、ちょっと待って下さい……コインと違って色が同じだから数えにくいな……」
袋から取り出した棒を長短分け、苦労して数えていく。さっき倒した敵、今までのよりかなり長いの落としてたな。あれが100G硬貨と一緒ってことか。
「ざっとですけど、1000G近くあると思います」
さすがにゴールドが上がってるときに比べたら相当低いけど、ある程度の金額は稼げてるな。武具はともかく、宿屋に何泊か泊まるくらいは大丈夫だろう。
「ね、ね、村に着いたらドラちゃんに連絡しようね」
「ああ、そうだったな」
すぐ知らせても良かったけど、別に金額が上がったり下がったりしてるわけじゃないから緊急性は低いし、落ち着いたと思ったら急に悪天候になったりして、連絡する機会を逸していた。
「アタシ、ドラちゃんとの連絡楽しみなのよね」
「なんだ、お前別に仲良いわけでもないだろ?」
「シーギスがメチャクチャに言われるのがなんか嬉しいのよね」
「何なのその嗜虐心!」
別にそのために連絡してるわけじゃないっての!
「ううん、魔王の目的、何なのかしらね」
「さあな……正直さっぱり見当つかないよ」
後ろから聞こえてきたイルグレットの声に、振り向かないまま腕を後ろに組んで返事する。
「あ、シー君、ひょっとして、その棒をいっぱい集めて組み立てると伝説の武器になったりするんじゃない?」
「画期的すぎるよ! あと何で魔王自ら伝説の武器配ってんだよ!」
弱点を細切れにプレゼントすることに何の意味が!
「あ、見えました! あれがハクエン村です!」
夕方からちょうど夜になったくらいの黒々とした草原で、少し先を歩いていたレンリッキが勢いよく右手を掲げる。
「いやっほおおう! 宿屋だ宿屋、ベッドだベッド!」
「アタシも! フカフカにボフンッてしたい!」
全員で走るように村へ入る。曇天だったが、雲の位置のせいか、月だけははっきり見えて、俺達を歓迎しているようだった。
「あ、アンナちゃん、あそこに宿屋の看板あるわ」
「ありがと、イルちゃん!」
先頭のアンナリーナが曲がり、暗闇でもよく見えるそのオレンジの髪を目印に、後続の俺達も曲がった。
「到着! すみませーん」
「おや、いらっしゃい。勇者さん一行なんて久しぶりに来るね」
受付のおばさんが、花瓶をどけて受付のテーブルを拭いていた。
「4人なんですけど、泊まれますか?」
「ああ、大丈夫さ。今日は空いてるからね、1人1部屋使っていいよ」
ニッコリ笑ってサービスしてくれるおばさんに、アンナリーナは「やったあ!」とバンザイした。
「4人で200Gだね」
「レンちゃん、お願いね」
「はい、えっと……これでお願いします」
バラバラと棒をカウンターに置き、計算し始めた。
「うん、これで200Gです」
おばさんは、キョトンとしている。
「何だい、これ?」
「……え? いや、新しいゴールドですけど……」
「何言ってんだい、ゴールドはコインだろ」
なるほど。これは、新たな波乱の幕開けかもしれない。
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