8.まるで全てが戻ったように <2>

「はあ、お兄さんもあんな道具買わなくてもいいのにな……」

「やっぱり、売上落ちてるから、色々参ってるんでしょうね……」

 モンスターの出る草原に出て、レンリッキと2人でガックリ肩を落とす。


「レン君、今日もゴールドゴーレム倒しに行く?」

「そうですね。でも、昨日よりゴーレムを狙ってるパーティーが増えるようだと、僕達が倒せるチャンスが減っちゃってイヤですね」


 そう、あんまり倍率が高いと、結局は他の場所で別のモンスターを倒し続けてたほうが獲得できるゴールドが多くなるかもしれない。

 特にさんざんゴーレムにダメージを与えたのに他のパーティーにとどめを刺されたりしたら、それまでの努力が水泡に帰してしまう。


「あーあ、楽に8000Gくらい稼げる仕事があればいいのにね。草やキノコを口に入れて毒性の強さをチェックする、みたいなヤツならアタシでも寝ながら出来るのに」

「寝ながら出来るけど絶対楽じゃないと思う」

 何かあったときの代償が大きすぎます。



「あ、スライムよ」

 イルグレットが指差した先から、黄色でぷるるんとしたいつものスライムが2体、ぴょんぴょん飛び跳ねてきた。


「スライムかよ……ゴールド落とさないんだよなあ」


 3G落とすはずが1Gになり、遂にはゴールドなし。今の俺達からしたら、存在価値が無くなりかかってるといっても過言ではない。


 可愛いけどね、見た目は! すぐ倒せる感じは逆に愛おしいですけどね!


「たまには僕がいきますよ!」

 レンリッキが走ってとびかかり、1体に肘鉄、もう1体にかかと落としを喰らわせる。流れるような鮮やかな体術に見蕩れていると、2体ともあっという間に倒れ、パンッと弾けて消えた。


「よし、じゃあゴールドゴーレムのいるあの場所に早く――」



 トンッ



「…………え?」

 聞き覚えのある音。モンスターを倒すたびに、いつも聞いてた音。


「シーギス、何の音? スライムの死体の残骸が消えずに残って落ちたのかな?」

「もっと馴染みのものから想像しろよ!」

 発想が怖いんだよ!


「ねえ、レン君。今のって、ゴールドよね……?」

 黙ったまま、その場にしゃがむレンリッキ。何かを拾い上げて、俺達のもとに戻ってくる。


「シーギスさん、これ」

「なんだ、また落とすようになったのか。まあ1Gでも、無いよりはいいよな」

「いえ、そうじゃないんです。見てください……」


 開いた手の上には、

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