第10話 歌が生まれる~まどかside~

ガチャ


『ただいま。』


やっぱり声は出ない。いつもは、帰ってくるとテーブルにホワイトボードでコンコン、と音を鳴らす。


まぁ、今日はホワイトボード壊しちゃったから、できないけど。


その代わりに私は、スマホで軽く机をノックした。


「あら、おかえり。今日の晩御飯は、シチューよ。」


『うん、ありがとう。』


私は、そう言うと自室へ言った。


私の部屋には音楽機材がたくさんある。声を失ってからは、この部屋が辛くなったりもした。でも最近になってようやくこの部屋に入ると、休まる気持ちになってきた。


・・・だけど、肝心の曲作りは、うまくいってない。


声を失う前は、伝えたい言葉がすらすらと出てきた。だけど、声を失ってから、言葉を絞り出し、選ばないと曲が書けなくなった。


・・・本当は、言葉は出てくる。だけど、その言葉すべて辛い言葉で、神様が嫌いだとかいう言葉だった。


それは、マドレーヌの歌じゃない。


そうする内に、曲を書きたいと思わなくなった。


今だって、着替えて、机の前で勉強しているだけ。


『あー、あー。』


・・・やっぱり今日も出ないや。


私は、何気なくスマホを手に取り、ギャラリーを開いた。


黒板の言葉たちをぼんやりと眺めていた、その時


その言葉たちが、メロディーに乗って頭の中で流れた。


・・・書かなきゃ!今すぐ!!


久しぶりだった、音楽が降りてきたのは。


それは、声を失う前、最後の曲【暗闇の光】以来だった。


あの曲は、マドレーヌの代表曲でもあり、私をいちばん苦しめた歌でもあった。


・・・ただ私は、あの時のように一心不乱に曲を書いていたーーー。





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