ボカロな恋~声なき歌姫が綴る恋歌~

明日空~あしたぞら~

ただの気まぐれ

第1話 出逢いー蓮司sideー

ざわざわ・・・


『まもなく電車が発車いたします。』


車内には、スーツを着ている人、カップル、制服を着た人でいっぱいだ。


俺も制服を着た人の一人だ。


ちなみに、今日から2年生になる。


「えぇ、マジうけるー!!」


俺は、この時間が大嫌いだ。


周りは、雑音だらけ。


「はぁ・・・あんな高校に行くんじゃなかった。」


俺は、ヘッドフォンを耳につけた。


流れてきたのは、【暗闇の光】マドレーヌ歌ってみた


中学のころから俺は、何かあるとマドレーヌの声を聴いた。


マドレーヌの声は、透明感があって、癒されるんだ。


でもそれだけじゃなくて、聴く人の背中を押してくれる。


でも、彼女の声は、2年前から止まっている。


彼女は、この曲を最後に歌ってみたを卒業した。


そして、ボカロPとしての活動に力を入れた。


この【 暗闇の光】は、彼女が作った曲だ。


『 次は、桜台。桜台。〇〇線へのお乗り換えの方はー……』


「降りねぇと。」


ここで降りる学生は、ちらほらいる。


そのほとんどが金羅高校の生徒だろう。


俺もその1人だ。


駅から歩いて5分の学校。


ガヤガヤ・・・


「おぉ!蓮司、元気にしてたか?」


こいつは、星野 大和。中学から一緒だ。


見ての通り、うるさいバカだ。


「普通。」


「相変わらずクールだねぇ、モテ男は。」


は?モテ男?


「やばい!蓮司君だ!!」


「ほんとだー!朝から見れるなんて幸せー!!」


・・・うるせぇ。


「今年は、何人お前に告るかなぁ?」


「・・・誰一人告ってくんな。」


「そういうこと、言ってみてぇ!!」


ガヤガヤ・・・


「あー、めいとクラス離れたー・・・。」


俺の数十メートル先では、彼女とクラスが離れて嘆く者や、抱き合う者がたくさんいる。


あんな人がギャーギャー言ってるところに行けるわけねぇだろ。


「・・・大和、俺のクラス見てきて。」


「あんた達、F組よ。」


「おお、さすが麗。仕事が早い!!」


槙島 麗華。高い姉御質を持つ。こいつも中学から一緒だ。


「ちなみに私もF組よ。・・・大和には、課題は見せないから。」


「やっ・・・たー・・・。お願いです、麗華様!見せて下さい!!」


この言い合いは、いつものことだ。


「・・・先行こ。」


「ちょっ、待てよ!!」


靴箱まで行き、靴を履き替える。


2年になったからって何かが変わるわけない。


ガラガラ・・・


「え!?蓮司君と同じクラス!?」


「うそ・・・マジで!」


嘘じゃねぇし。


ホント、女ってうるせぇ・・・


黒板で自分の席を確認して振り返ると、一人の女だけ輝いて見えた。


静かに読書する女。白い肌に大きな瞳。とても、綺麗だと思った・・・。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る