可食メカニカル妄想

空想演算器

牛蒡コンロッド

 牛蒡です。読めませんか。ゴボウです。木の根っことか言わないでください。棒切れとか言うひとは回れ右してお引き取りください。立派な食品です。食材であることに誇りを持っています。

 …ごめんなさい、すこし嘘をつきました。正直なところ、食材である自分がそんなに好きではありません。ことあるごとに他の生き方をしている自分を妄想しています。


 例えば、そうですね、コンロッドなんていいなって思います。コンロッド。わかりませんか。インターネットで調べてください。コネクティングロッドです。レシプロエンジンのピストンとクランクシャフトを繋いでいる部品です。棒切れって言うな。

 マニアックだという批評は甘んじて受けましょう。自覚しています。

 でもよくよく考えてください。みんな大好きピストンなんて往復運動しているばっかりで芸がありません。混合気の爆発を直接受ける花形だ、なんて言ったところで、でかい図体してるんだから偉い顔されても困ります。ダイコンにでもやらせとけばいいんです。

 次によく聞くクランクシャフト、あれは論外です。只々回り続けてるだけ。おまけにガタガタといびつな形状。しなびたキュウリにでもやらせとけばいいんです。

 で、コンロッドです。シンプルな形状。ピストンの力を一身に受け止める細マッチョ。ピストン側は揺動、クランクシャフト側は回転というアクロバットな軌跡。堪りません。あゝ、私はコンロッドになりたい。


 そうは言っても牛蒡は牛蒡、そう簡単に運命は変わりません。ささがきにされて豚汁の具にでもなるのがオチでしょう。あ、豚汁とんじると読むか豚汁ぶたじると読むかで争わないでください。私には関係ありませんので。関係ないってば。

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