第27話 水の大神と神代家長女 その五
子供? 玉座に銀髪の少年が胡坐をかいて座っている。歳は十歳前後。銀色の髪に、深い青色の瞳。
海軍水兵が着るようなセーラーカラーが印象的な紺色のトップスに同色のハーフパンツという出で立ちだ。おまけにベースボールキャップのツバを後ろにしてかぶっている。
幼さをわざと演出しているように見える。
「幼いね。外見に囚われて油断し過ぎだ。今の間に百回はお前を殺せた。でも、俺っちはそうはしなかった。どうしてだと思う?」
凄まじい威圧感だ。身体が強張って上手く動かせない。
「俺っちは美人薄命って言葉に異議を申し立てたいわけさ。どうして美しいものが早々に退場しなければならない。そんな世界を俺っちは望まない」
ここは一端、退くべきか。ただ、簡単には逃がしてもらえないだろう。ならば、戦うか。
「面白いことを考えるな。俺っちと戦う? そんなことを考えられるんてさすがは転移者だ。ただ、お前では俺にはかすり傷すら負わせることはできない。発展途上の妹でも無理だ」
こちらの情報は筒抜けか。
「お前たち姉妹からは嫌な臭いがする。ただ、お前はまだ我慢できるレベルだ。全身の血を抜いて、俺っち寵愛を流し込んでやろう。そうすればお前も晴れて俺っちのハーレム要員だ。これまでの不遇な人生が報われる時がやっときたんだ、喜び慄け」
「メルクリウス様の寵愛を頂戴できるとは恐悦至極でございます」
神に玩具にされても別にかまわない。情報さえ手に入るのなら。それが栄太と凛の幸せにつながるなら私はどんな苦行でもやり遂げてみせる。
「ただ、条件が一つある」
「条件ですか?」
「弟の命を差し出せ」
もしかして、栄太はもう異界にきているの。
「あれから感じる嫌悪感は許容範囲を大きく超えている。俺っちが直接手を下さなくてもプルートーあたりが早々に手を下すだろうけどな」
一つ重要なことがわかった。こいつは私の敵だ。
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