第16話 異世界求職者-12
「私と仇敵様の因縁を鑑みれば、その要求を飲み下すことなど到底承諾しかねますが……」
「因縁って何だよ!」
逆恨みも甚だしい。
「私の根源を抜きにしても、私と仇敵様は相容れない理由があります」
そんな真剣な顔で言われたら、俺はどう反応すれば良いんだよ。そうこうしている内に第二射がきてしまうかもしれない。
「これ以上、私を謀っても得になるとは思いませんが」
「わかった。俺はここから離れる」
「見す見す逃がすとお思いですか?」
やっぱりそうくるか。ウンディーネが不穏な空気を醸し出し始めた。あとは助けがくるのを待つしかないか。あのモフモフもさすがに起きたんじゃないか。
「ああっ、神獣の末を待っているなら無駄ですよ」
ウンディーネの手のひらに水球が生まれた。それは宙に浮いて俺に向かってくる。攻撃か。
「そんな身構えないで下さいませ。ただの投影にございます」
俺の目前で水球が静止した。透明な球体の中に色が浮かび上がる。色は鮮明に輪郭を成し映像を浮かび上がらせる。
「フェン?」
フェンリルが牙を剥いて人影に飛び掛かる。相手側は弓矢や半月刀で武装している。
一頭対多数。さながらモンスターハントの一場面を見ているようだ。
フェンが狩られる所なんて見たくはない。
「心配しなくて大丈夫でございます。あれは白神が太陽神に下賜した神獣が末。ただの常人種ごときが害せる存在ではございません」
「助けもこないが、邪魔が入る心配もないわけか」
「では、そろそろ始めましょう」
「一体、何を始めようとしているんだ?」
「単純なことにございます。存在をかけた果たし合い。俗な言い方をすれば殺し合にございます」
「一方的な虐殺の間違いだろう」
「ご謙遜を。私ごときが仇敵様の命を摘み取れるとは夢にも思いはしません。腕の一本でももぎ取れれば上出来にございます」
「まだ、名を聞いていなかったな」
「私は、#女神の涙__デアダクリ__#。転生者に恨みを持つ水妖にございます」
「俺は神代栄太。現在求職中の無職だ。ちなみに、異世界転生者ではなく異世界求職者だからな」
「異世界求職者。初めて聞く称号にございます。しかしながら、我らが辿る結末に何らの変化もございません」
「……」
水妖とのガチバトル。敗北は死を意味する。やっぱりさ、異世界ファンタジーとかって安全圏から眺めているから楽しいんだよな。
いざ自分がその場に立たされればこんなにも逃げ出したくなる。せめて、勝算が二割くらいあれば話は変わってくるんだけど……。
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