第10話 異世界求職者-6

「やっと着いたみたいだな」

 歩き続けて、5時間ちょっと。さすがに喉が渇いた。

 小規模なオアシス。集落に建物は十軒ほどしかない。

「今日はここに泊まる。ここから先は野宿が続くからゆっくり休んどけよ。俺は用事があるからーー」

 銀貨一枚を俺に手渡してソールは去った。残された俺とフェンリルは顔を見合わせた。

「フェン、俺はあのオアシスにダイブして浴びる程水を飲みたいんだけど」

「……サンセイ」

「えっ!? フェンって喋れたの」

 返答はない。舌を出してハアハア言っているだけだ。確かに拙い感じの声が聞こえた気がしたんだけどな。

「まあ、いいや。とりあえず向かおう」

 フェンはしっかりと付いてくるので反対ではないんだろう。

 宿屋、雑貨屋に果実が並んでいる屋台。民家はないようだ。旅人や隊商の補給拠点なのだろう。

 店主、木陰で休息を取っている旅人や商人がこちらに視線を向けてくる。

「フェンは人気ものだな」

 何故だかフェンがきょとんとした表情をした。

 


 オアシスの水質は透き通っていて水底まで見える。

 溢れただす欲求を抑えられず、水面に飛び込んだ。潜って、水を抱きしめた。

 息が苦しくなってきたので、名残おしいが浮上する。

「おい、フェンもこいよ」

 フェンは岸辺で水を飲んでいる。

 もしかして、泳げないのか。犬には犬掻きが標準装備されているって思っていたけど……。そもそも犬じゃないのか。

 一人だとやることも限られているしな。もう少しだけ堪能したら上がるか。

「うん? あれは……」

 オアシスの中心が淡く輝いている。どうしてだろう、あの光に無性に触れたい。

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