第4話 境界番
ほの暗い闇の中を降下していく。浮遊感に胃袋を鷲掴まれる。食事を抜いてきてよかった。
異世界への渡航なんて初めてのことだから、無事に目的地につけるどうかも怪しい。
『呪われし血に連なるものよ』
「誰だ?」
結構な速度で落下しているので、自分の発した声さえ聞こえない。
『去れ』
頭に直接話かけてきているのか。てことは相手は人外の類だろう。
「アンタが境界番か? 俺はどうしてもそっちらにいかなければならない」
突然、目の前にローブを纏った人影が現れた。俺とは逆向きで頭から降下している。
俺の落下速度に合わせる形で寸分の狂いもなく宙に浮いている。
『ならば、大切なものをさしだせ』
「大切なもの?」
俺の一番大切なもの……。
『裁定はこちらで行う』
フードの向こ側で双眸が真紅に染まった。そして、反応する間もなく深々と手刀が俺の胸に突き入れられた。
不自然にも痛みを感じない。
「……俺の一番大切なもの」
手刀が引き抜かれた。意識が混濁する。
『通行料は徴収した。異世界へようこそーー』
聞き終わる前に意識を手放した。
喪失感を抱えて深い深い暗闇に堕ちて行く。
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