A∩B-c/d ~碧キ魔獣~

@amane_killa

第1話 琥珀色の空


2014年5月13日


「――まだ着かないのか」

「もうすぐだ。少しは辛抱しろ。」


俺は彷徨い続けている。

いや彷徨って

――あの日大規模なリストラに遭った時から、俺は自分の居場所を探していた。

ゲリラ屋になろうかとも思ったし他国へ亡命も考えた。普通の理由でリストラされたのとは訳が違う。俺はの類。誰からの救いも期待してなかった。


「着いたぞ。――ここが第一拠点"タモバルタ強襲用拠点"だ。」


けど、あの時だけは違った。「救い」とは言い難いが、自分を受け入れてくれる世界を見つけられた気がしたのだ。――そこは安息の地とは言えない――"地獄"ではあったが。


そこは広い平地にトレーラーが4台、装甲車が3台。テントが6つある軍事拠点だった。前方は港があるだけ。こんな事を言うのもなんだが――しょぼい。


「おか――あ、それが新入り?」


ボーっと突っ立っていると金髪の少女が話しかけてきた。

手元ではPCとタブレット端末を操作していて、顔はこちらを向いてない。

無愛想な奴だ。


「悪かったわね・・・無愛想で。でも忙しいのよ」


いつの間にか声に出ていたらしい。だが忙しそうなのは見て取れる。彼女はPCとタブレットを交互に操作しながら時折叫んでいる。何かの調整中だろうか。


「俺はフィリル・グラーツ。アンタは?」

「忙しいって言ったでしょ・・・マリー・アンゼルカ。技術曹長よ。ここの兵器類の整備と戦闘オペレーターをやってるの。」

「なるほど。メカニック兼オペレーターか。頼もしい事だな・・・

「な!?」


――シャーペンが飛んできた。

実際には自然にではなく正確無比な投擲で。ほんと何しやがる。


「さっそく殺す気か!?この馬鹿!」

「うるさい!次その名前で呼んだら殺すかんね!」


いや、すでに殺されかけている件について。

――しかし、これから一緒にやっていく仲間だろう。俺は咄嗟に手を伸ばした。


「何?続け様にセクハラ?いい度胸ね。腕の一本でもへし折られたいのかしら?」


・・・拒否された。なんだこの女は

とりあえずここに居ても埒が明かないので

俺は紹介してくれた人のところへ向かった。少なくとも挨拶くらいはまともに済ませておかなくてはな・・・名前は―――――


「フォイル・マネビスだ。一回で覚えろ。」


そいつはそう言った。階級は少佐、ここの現隊長だそうだ。

彷徨ってる俺に声をかけてくれて、ここを紹介してくれたのはいいが

・・・この無愛想は誰かに似てる気がするが 気のせいだろう


「ぶっ殺されたいのかしら!?そこの馬鹿!!」


どうやらエスパーでもあるみたいだ。金輪際彼女の悪口はよしておこう。

本気で殺されかねない。

隊長から渡された紙通り、俺は宿泊車両とやらに向かい荷物を置くことから始めることにした。明日からは仕事であり、改めてメンバーと顔合わせをしなければならないからな。

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