憂き世と春

@Yukigoras

第1話

 時が風を巻くように過ぎていく。それは一瞬のきらめきで。


 僕が人を好きになった初めての経験はいつ頃か、地味な高校生を卒業し悪友のすすめで煙草を燻らせていた頃だと思う。僕たちは新生活の瑞々しさに馴染めず、大学の欅道を行く同年代を尻目に馬鹿ばかりやっていた。そんなくだらない真似事も半端な気持ちにしかなれず、僕達はいつも何かを探していた。悪友はそれはモラトリアムなのだと言う。人生最後の余暇を過ごしているのだと彼はさもくだらない冗談のことのように呟いていた。僕はその余暇から抜け出せない。


くだらない1日の余韻を感じながら、とぼとぼ歩いている。

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