社長!走る!

@kawano-aki

第1話

4月1日。今日は記念すべき社会人デビューの日。やっぱりちょっとドキドキする。

案内の先輩たちが凄く格好いい。

ところで、私の配属ってどこになるのかな。ワクワク。

一応営業希望。人材紹介の営業。

まあ、何でも良いのだけどね。


この会社は今どき珍しい大量採用。

100人の新卒は大量なんですかね?

トランプさんが大統領だからって、私の会社はあまり影響がない。

実はあまり就活もせずにすんなり内定をもらった私はこの会社の仕事内容はあまり知らない。というか、そんなこと気にしてもしょうがないと思って、面接官が

素敵な人だったから決めただけ。

他に深い理由はないです。みんなはきっといろいろ真剣に考えて決めたんだろうけど。


「あの、そこ座ってもいいですか?」

ん、好青年登場。私の好青年は今風じゃない人。髪はボウズ頭で少し伸びた感じ。眉毛濃い。目はつぶら。痩せ型。身長170センチ。

「どうぞー、大丈夫ですよ」

少し声を高目に私は答えた。


なんか私に話かけて来るかな〜。

ちょっと期待してみる。

でも彼は黙々と今日の入社式の名簿に

目を通している。

内定者研修ではあったことないし。

シャイな感じもいいな。

私から声をかけてみるか。

「ちょっと緊張しますね」

少し間が空く。

3秒、5秒、10秒。返事なしって、聞こえないくらい緊張してるの?

「どこに配属されるのか気になりますよね」あれ、敬語になってるわ、私。

3秒、5秒、10秒。返事なし。ん、彼、変わった人なの?

ちょっと顔を横に向けて覗いてみた。

え!まじで!寝てる。こいつ。やるなあ。大物。

でも、入社式いきなり寝るってどういうこと?阿呆か大物どちらか。せっかくだから大物にかけよう。

君は大物だよ!


会社の社長の挨拶。

私は昔から挨拶が好きだ。

もちろん自分が話すんじゃなくて聞く方ね。

昔からみんな人の挨拶なんてつまんないと言うけれど、私は好きなんだよ。

昔からね。


チャレンジして欲しい!

変化を恐れず、若いエネルギーを

思う存分発揮して欲しい!


社長のキーワードを拾う。

私たちたくさん要望されてる。期待。

背中がシャキッとする。


私も君たちのエネルギーに負けない用、

頑張ります!


ん?この社長要望するだけじゃないんだ。自分も頑張るって、素敵な社長だな〜。ふむふむ。いい挨拶。

そういえば、面接では社長出て来なかったな。


それでは内定者を代表して

箱庭マラソンに出場した水谷竜二君、

前に出て気合の掛け声お願いします!


会場がザワザワ。


水谷君いますかー?


司会の人事担当者がマイクで大きく声を出しながら会場を探す。

昭治大学のみずたにー!呼び捨て。

「はい!!」

その時、隣の睡眠大物が飛び上がるように立ち上がる!

「はい!ここにいます!」


え、こいつ箱庭駅伝出たんだ。いい声出すじゃん。流石、超体育会野郎。

でも、なんでうちの会社なの?陸上部ないし。他のメーカーとか落ちたの?


司会者に呼ばれステージに登る彼。

ランナーってみんな同じような体型。

ほっそり、ぺったり。


「自分は馬鹿ですけど、一生懸命チャレンジファイトで頑張ってレギュラー、いえ、一人前の人になりたいです。みなさんよろしくお願いします!」


彼、寝てたくせに、社長の挨拶聞いてたかのような挨拶だよ。

なんか、隣あったのもご縁てことで。

陸上男子か。










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