3話「犬さん、狐娘を助ける②」
ぶろぐvar
http://suliruku.blogspot.jp/2016/10/3.html
「あ、そうだ!大切な事を伝えなきゃ!」
モーニャンは、巫女服をゆっくり着ている最中に、何かを思い出したようだ。
慌てて半分脱げた状態で、彼女は僕の目を見つめて話しかけてくる。
「大変なんだよ!
ワァン様のお父様とお母様が!
旅先で山賊に襲われて死んだって!
ワァン様の叔父を名乗る人間が言ってたの!」
なんて嫌な予感がするセリフなのだろうか。
両親が死んで親戚が来るなんて――完全に遺産相続争いじゃないか。
獣人同士で殺し合いはしたくないだけに、憂鬱すぎるイベントだ。
『ただのお家騒動だぁー!?』
『うむ……この地域は確か……長子相続制だったな。
この機会に、領地丸ごと奪う気満々だぞ……その叔父』
両親の顔を、僕は全く覚えていない。
記憶にないから、死んだと言われても悲しめない。
あれ?
なんだろうか、この激しすぎる違和感?
モーニャンの言葉を思い出してみよう。
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旅先で山賊に襲われて死んだって!
ワァン様の叔父を名乗る人間が言ってたの!
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なんで親戚が、人間なのだろう?
獣人は突然変異で産まれた生物であり、優性遺伝だ。
人間の指が五本なのは優性遺伝の結果であり、先祖が代々、青い目の人間と、黒い目の人間を交配させると、黒い目の人間が必ず産まれてくる。
獣人は子供を作るのが大変だが、人間(ホモ・サピエンス)から受け継ぐ遺伝子を無視して、獣人が産まれてくるはずなのだ。
ごく一部の例外を除き、親戚に人間が居るはずがない。
おい、邪神達。これはどういう事なんだ?
『犬さんの母親が銀髪犬耳美少女で』
『父親が帝国の子爵階級ですぞ、つまり人間さん』
なるほど、身分差と種族の壁を超えた恋愛の果てに、僕は産まれたのか。
良いな。凄くロマンチックだ。
僕は、すぐに老化する人間のお嫁さんを伴侶にするのは嫌だけど、きっと父親は尊敬できる人だったのだろう。
ちなみに……僕の両親はどんな奴だった?
『父親が、メイド服を着た10歳の犬耳美少女を見てムラムラ』
『我慢できずに押し倒して、毎日、3年ほど子種を注ぎ込んだ結果、産まれたのが犬さん』
……前言撤回。
僕のお母さんが享年約17歳な時点で、可哀想にも程がある。
三歳児な僕を放置している時点で、きっと心もボロボロで余裕がなかったのだろう。
今度こそ獣人が覇権を握る良い時代を作らなきゃいけない。
人間だって、寿命が長くて、無駄に健康な獣人の体に転生した方が、良い人生を送れるはずだ。
それにしても――まだ違和感があるな。
僕の頭の中に、取れないシミのようなモヤモヤな疑問があるような気がする。
そもそも、こんな山だらけの場所に山賊が出るはずがない。
ああいう仕事は交易ルートでやらないと、儲けが出ないはずだ。
あ、そういえば、僕がチン●を切断した山賊Bと山賊Cが――意味深な断末魔を上げていた。
ーーーー
「だ、誰……アッー!」
「あ、あの姿はっ……アッー!」
ーーーー
しかも、あいつらは口封じとか言っていた上に、僕の姿を事前に知っていたようだ。
つまり、山賊達は――僕に会うために行動しているモーニャンの大きな尻尾を見ながら、彼女を後ろから追跡していたのではないだろうか?
うっかり狐娘の愛らしさに負けて、下半身の性欲が抑えきれなくて、途中で彼女を襲ってしまったから仕事に失敗しただけ。
本当は僕の居る場所までモーニャンに案内させた後に、不意打ちをかけて殺すつもりだったのでは?
そうなると、この状況で、僕を殺害して最大の利益を得るのは――
「……そうか!謎は全部解けた!」
「え?ワァン様?どうしたの?」 驚いた拍子に、巫女服が少し脱げて色っぽい。
「こんなところに山賊がいる訳がない!
つまり、あいつらは叔父が差し向けた刺客だったんだよ!
この領地を手に入れるために、正式な後継者である僕が邪魔になったんだ!
モーニャンの後ろを人間どもに追跡させて、僕ごと始末しようとしてたんだよ!」
「え?そ、そうだったの!?
ワァン様の推理力すごいよー!」
モーニャンの大きく広がるきつね耳がピョコピョコ動いた。
どうやら、三歳児とは思えない僕の推理力に感動したようだ。やったぜ。
『こらこらwwww僅かな情報で断定するのは良くないwwww』
『だが……有り得る話だな……』
『合理的に現状を説明できますお』
叔父が保有する兵力が、たった五人という事もないだろう。
父親が保有していた兵隊とかも居るはずだ。
人間は物量が凄い生き物。下手したら百人くらい兵を養っているかもしれない。
僕はわざとらしく、危機感を煽る感じで叫ぶ事にした。
「このまま家に帰ったら、きっと殺される!
モーニャンも酷い目にあう!」
「そんなー!?
安定した生活を送れると思ったのに散々だよぉー!」
「大丈夫だ!僕に考えがある!
とりあえず、ナイフ格闘術だけだと不安だから……投石術を取得して練習してくる!
モーニャンはたくさん石を集めてくれ!
邪神どもは索敵な!」
「え?邪神?
ワァン様は何を言っているの?」
狐娘が可愛らしく首を傾げた。狐耳も少し斜めになっていて可愛い。
僕は彼女に抱きつきたくなる衝動を抑えながら、強い意志とともに言い切った。
「今を生き残るために必要なんだ!
頑張れ!モーニャン!
僕の言うとおりに行動すれば、必ず生き残れるから!」
「う、うん!
意味がわかんないけど……素手で大木を壊せるワァン様の言う事なら間違いないよね!
私、頑張るよ!」
なんて説得が簡単なチョロイ子。
僕は、彼女の未来が不安になった。
『なんという急展開』
『これは厳しい戦になりそうだお……』
『スキルがレベルアップする前に、戦いになったら犬さんが死んじゃう……』
お前ら、敵が近づいたら必ず警告しろよ。
ようやく巡り込んできた最大のチャンスを潰したら……僕の転生先が無くなるぞ?
【狐娘を抱きしめたから、犬さんは、モフモフ術を獲得しました】
モフモフ術か。久しぶりに聞くスキル名だ。
モーニャンのハートを鷲掴みにしたいから、破棄するのはやめておこう。
全てが終わったら、あの大きな尻尾を掴んで、たっぷりモフモフしたい。いや、すぐにモフモフしよう。
『こら待て!』
『戦闘にも生産にも使えない無駄スキルですぞ!?』
『15スキルしか極める事ができないのに、何をやってるのだ!?
モフモフ神を復活させてからやれ!』
「早速、石を集めてくるよーー!
え?どうしたの?」
モーニャンがそう言って、場から去ろうとしたから、僕は彼女の尻尾を掴んだ。
とっても触り心地がある尻尾だが、別にセクハラしたくて掴んだ訳ではない。
「とりあえず、モーニャン……服を着ようか?」
今までの会話のせいで、彼女の巫女服が、見事に脱げ落ちていた。
僕は、気になっている女の子を、純白のパンティー1枚で作業させる鬼畜な男ではないのだ。
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モフモフ術。
どんな尻尾もモッフモッフにしてやんよ。
どんなワンチャンも、ネコちゃんも、モッフモッフ。
今まで取得した技能スキルまとめ + ゴミスキル
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Game_fuu_sukiru/Ginou.html
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山賊「俺の正体は!
実は傭兵だったんだ!
お前の叔父が雇った傭兵さん!」
主人公「どっちも似たような事をやっている職業な件」
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