この「本格ミステリ」が読みやすい!

庵字

はじめに

本格ミステリ小説を読んで、そして書こう!

 昨今、「ミステリ」という言葉(ジャンル)は大きくその裾野を広げ、従来であれば「サスペンス」や「ホラー」あるいは「SF」に相当されてきたであろう作品の中にも、「ミステリ」と冠されて世に出されるものが多くなりました。これは、先に書いたように「ミステリが裾野を広げた」と言うよりも、「少しでも『謎解き』要素が含まれていれば、ミステリとみなそう」と、「本格ミステリ」の圧倒的弾不足を補うという目的があるのではないかと思います。


 どうして本格ミステリは弾不足なのか? そもそも需要がないからでしょうか? そうは思えません。上記に書いたような、「本来ミステリにする必要のないものまでミステリとして売り出す」ことからも明白です。

 ミステリに需要がある理由、それは、とりもなおさず「ミステリ」が面白いからです。「ミステリ」が魅力的だからです。「小説」という世界だけではありません。世のテレビドラマから「ミステリもの」が消えたことはありませんし、漫画界においても、「名探偵コナン」は国民的人気作品です。「金田一少年の事件簿」でミステリの面白さに目覚めた、という人も多いでしょう。


 本格ミステリは量産が効きません。他の小説ジャンルよりも圧倒的に「ネタ被り(トリック被り)」に対する縛りがきついためです。ひとりの作家が書ける量におのずと制限が掛かってしまうのです。

 慢性的に不足している本格ミステリの弾数を増やすためには、どうすればいいのでしょうか? 決まっています。書く人を増やせばいいのです。書く人を増やすには? 読む人を増やす以外にありません。

「ちょっと思いついた話を書いてみたんだけど……え、これ、本格ミステリっていうジャンルなの? へえ。シャーロック・ホームズ? 何それおいしいの?」なんていう人間が存在するわけがありません。(ミステリ作家の島田荘司は、そんな作家が出てきたら最高だ。と言ってはいます。確かに同意見ですが)

 本格ミステリを書く人間は、本格ミステリを読んだことのある人間と決まっていて、その九十九パーセントは本格ミステリのファンです。(残り一パーセントは、「今あるミステリなんてどれもこれもくだらねぇ。俺ならもっと面白いものが書けるぜ」というアンチ的ファンでしょう)


 もっと多くの人に本格ミステリを読んでもらい、その面白さ、楽しさを知ってもらいたい。そして、できれば、「自分でも書いてみたい」と筆を執ってもらいたい。

「えー、でもー、本格ミステリって、何か面倒くさいでしょ? 登場人物は多いし、アリバイ検証とか時刻表とかややこしいし。密室殺人もどうせ、ピタゴラスイッチみたいな仕掛けでした。的なオチなんでしょ?」

 本格ミステリを読んだことのない多くの方は、きっとこんな先入観を持っておられるのではないでしょうか。(いや! 断じて違う! と大きな声で否定出来ないのも辛いのですが……)


 そこで私は、そういった「ミステリアレルギー」とでも言うべき読者の方にも楽しんでいただけそうな、ミステリとして楽しめることはもちろん、タイトル通り「読みやすい」作品を中心に紹介したいと考えました。

 現在、新刊では入手しづらい作品も含まれるかと思いますが、ここでご紹介する作品は、私が自信を持っておすすめできるものしか取り扱わないつもりです。興味を持たれたなら図書館などで探して、ぜひお読みいただければ幸甚です。


 ひとりでも多くの方にミステリを好きになってもらい、そして、出来ればご自身でもミステリを書いていただきたい。ミステリジャンルを盛り上げていきたい。そんな想いを込めてお送りします。

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