『幽霊刑事』ネタバレありレビュー
『
本を手にした方は、「文庫本で500ページ越え。結構な量だな」と思われたのではないでしょうか。ですが、お読みになって、どうでしたか。ページ数が全く気にならず、すいすいと読めて頭に入っていったのではないでしょうか。この伝わりやすく読みやすい文体が
さて、本作を読み終えて、一番気になるのは何と言っても、「ラストに連続する空白ページ」だったのではないでしょうか。あれは何を意味しているのか。主人公
本作は「幽霊が出てくる異色ミステリ」であることに間違いはないのですが、同時に私は、「幽霊なんて存在しない極めて現実的なミステリ」でもあると考えています。それはすなわち、「本作の、神崎が幽霊となって以降は全て、撃たれた神崎が今際の際に見た幻」であると解釈することも可能だからです。作中で幽霊となった神崎は数日間以上も過ごしていますが、「ほんの僅かな時間の死に際に、主観で数日にも渡る長さの幻を見ること」は可能でしょう。ひと晩の、たった数時間の睡眠中に、何日も、あるいは何年にも渡るストーリーの夢を見た、という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。それと同じです。つまり最後の空白ページは、「幻を見る意識も失い、本当に神崎が死に至って消滅する」ということを表現したのかもしれないのです。
この説は、ひとつの可能性として作中にも記されています。神崎自身が、「これは臨死状態に陥った自分が見ている夢なのではないか」と自問するシーンがあったことを憶えておいででしょうか。そして、この説を裏付けるもうひとつの要素、それは、「この物語が終始一貫、完全に神崎の一人称でのみ描かれている」ということです。場面によって他の人物の視点に立ったり、三人称を用いたところはひとつもありません。『幽霊刑事』に書かれていることは、全て神崎が見聞きしたことで一貫されています。
物語のラストを思い出してみて下さい。最後、自分の死の真相と黒幕を暴いた神崎は、現世での使命をやり遂げたことで消滅する。普通だったら、このあと残された恋人の
かといっても、決して読者に冷や水を浴びせているわけではありません。だからこそ、「人は精一杯生きなければならない」という逆説的なメッセージとなっているのです。
本作の最後には「あとがき」も「解説」もない。ということに、「無に帰す」というラストの徹底さが感じ取られます。
もし、この物語が全て神崎が臨死に見た幻だったとしたならば、結局この作品世界では神崎殺し、及びその背後にある犯罪は見逃されてしまっていたのでしょうか。私はそうは思いません。本部から内偵に来ていた
本格ミステリとファンタジーが融合した傑作『幽霊刑事』みなさんは、いかが感想をお持ちになられたでしょうか。本作の玉に瑕を探すとなれば、それは、「タイトルがダサい」というくらいしかないのではないでしょうか。もっと他になかったのでしょうか。確かに内容を的確に言い表したタイトルなのですが、本作はタイトルで七割は損をしていると思うのは私だけでしょうか。
それでは、次回の本格ミステリ作品で、またお会いしましょう。
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