公開図書の使用法(300字SS)

「傘の電書魔術なら安いんだ」

 公開図書(コモンライブラリー)マークの入った電子魔術書を示してヤツは言う。

「傘ってのは水を通さない。つまりだ」

 公開図書は無料で使える魔術章。利用すれば安く上がるが、MANA使用量に制限がある。

「ボートにだってなるんじゃね!?」


 ――無理だと俺は確かに言った。


 真上から降り注ぐ陽光は波を宝石のように輝かせる。

 顔に全てのパラメータを振ったようなヤツは女の子を前にタブレットをタップする。不安げな女の子達を大丈夫だと不可視のボートへ誘い込み。


 飛沫と共に両頬に二つの紅葉が鮮やかに。


「電書魔術は用法を守り安全に使いましょう」

 塩水滴る優男は情けない顔でタブレットと一緒に砂に突っ伏す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る