空ノ空 ——the vacant sky

アンノウン芋

断片的な物語

始まり

 断言しよう。この物語の始まりを特定する事は困難である。いや、さすがに、それは誇張しすぎだ。訂正しよう。特定は可能である。しかしそれは余りにも長すぎる。と。



 連続的な変化は、数千年——もしかしたら数万年——前に始まっている。どういうことか? 根本的な、本当の始まりを語るならば、それは、天地開闢てんちかいびゃくまで遡ることになる、ということだ。


 しかしながら、連続的な変化と言えども、数学で言う所の、極大・極小の様な物は存在するし、当然、それなら、変曲点の様な物もある。



 さて、この物語では近くのそういった点から語ることにしよう。


────────


 暗く、冷たく、ジメジメとした空間にその少女はいた。



 灯りは一つも無い。一切の光は無い。ただ、ピチャ……、ピチャ……、と水の滴る音だけが、時折その空間に響いた。



 少女は待っていた。



 一体いつから待っていたのか。何を待っていたのか。そんなことは覚えていなかった。しかし、待っているということは覚えていた。

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