第5話たとえPVが0続きでも

 PCを開き、頭を抱える。

 分かっている事だ。いつもの事だ。だからいい加減慣れるんだ。


 今日もまた、「カコヨモ」のPVはゼロだった。


 **


 私は「カコヨモ」で活動する前、「物書きになろうか」というサイトで作品を投稿していた。

 小説書きはほぼ初心者の私だ。向こうでもいわゆる「底辺作家」のいちばん下の方だった。それでも向こうのサイトでは一日三桁のPVがあることもそれなりにあった。

 だがそれは、単純なユーザー数の多さだけではなく、小説情報しか見ていない人もPVにカウントされるとか、色々な理由があった。だからPVの数の多い少ないは別にいい。


 たとえ一人でも、読んで下さる方がいらっしゃれば凄く嬉しい。

 だが、「ゼロ」はさすがに少し悲しい。

 「何時間もゼロ」は割とすぐに慣れたが、「何日もゼロ」は、未だに慣れない。


 世界に向けて声を上げたのに、世界中の誰からも振り向いて貰えないのは、さすがに少し悲しい。


「ままー」


 何がいけないんだろう。やっぱり最近の小説の傾向が分かっていないのがいけないんだろうか。世の人気ジャンルから外れているのは分かっている。だから人気が出ることはないのも分かっている。でも。


「ままー、遊ぼうよー」


 年齢的な問題もあるのだろうか。ろくに本も読まない、社会との接点もない私に、十代のリアルな初恋を描くのは無理があるんだろうか。

 二十六歳の男主人公をおっさん扱いする女主人公に対して、「いつまでも若いと思うなよ」とか内心毒づきながら書いている黒い心がいけないんだろうか。


「……ひっさつお面フラーッシュ! ……えい! ……とお! ……ねえ……ままー……」


 私は誰からも見られない。誰からも見られないまま、埋もれていくんだろうか。

 それに耐えられず、いつか筆を折ってしまうのだろうか。

 どれだけ声を上げようと、誰も私を見てくれない。

 誰も私を……。


「ままー……ねえ……こっち見てぇ……」


 小説家なんて、夢でしかないのか。

 私の作品は、これからもずっと誰からも見られることがないのだろうか。

 あれだけ心を込めても、あれだけ一生懸命書いても、「面白くない」とすら思われることなく……。


「ままー」

「何よケンタ、ちょっと待ってよ! 一体なに」



「まーま、がんばれ。まーま、がんばれ」



 ケンタは目の周りと鼻を僅かに赤くしている。

 泣くのを我慢している時の顔だ。

 両手を上に掲げ、飛び跳ねながら歌うように繰り返す。

 変な愛想笑いを浮かべて。

 何も悪いことをしていないのに、怖い顔をして自らを拒絶し続けるママに怯える様に、上目遣いになって。


 私はPCをシャットダウンする。


 ごめんね。

 本当に、ごめんね。

 今日一日、ママ、がんばらないことにしたよ。


 今、本当にがんばらなければならないことを、見失いそうになっていたんだ。

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